勝平アフター   作:猫林13世

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はい、猫林13世です。今回はCLANNAD、しかもアニメ化されなかった「柊勝平」をメインとした作品です。
原作ファンの方を基準とした作品ですので、アニメのみの方は原作ゲームをプレイしてからの方が楽しめると思います。


病室での語らい

――やぁ、久しぶり。それが僕が彼と五年ぶりに交わした言葉だった。

 骨肉腫の手術を終え、転移が無いかを調べる為に入院していた病院からこっちに戻ってきたのがこの前。そして無事転移が無いと確認されて、僕はこの町で出会った友人と再会した。

 岡崎朋也君、それが僕がこの町で出会い、そして僕に手術を受けるように説得してくれた一人だ。

 

「勝平さん、気分は如何ですか?」

 

「やぁ、椋さん。今日もいい気分だよ」

 

 

 病室にやってきた看護師さん「柊椋」。僕の奥さんだ。でもネームプレートには「藤林」の文字が書かれている。彼女は職場では旧姓の「藤林」を名乗っているのだ。

 

「僕もそろそろ退院だし、今後の事を考えなきゃね」

 

「当面はリハビリと落ちてしまった体力を戻す事に専念してくださいね」

 

「分かってるって。それは散々椋さんに言われてるし、昨日朋也君にも言われたからね」

 

 

 再会してから朋也君は定期的にお見舞いに来てくれている。仕事が忙しいのか、決まって五時以降に病室にやってきて、三十分くらいお話をして帰っていく。たったこれだけなんだけど、病室からろくに出られない僕にとって、朋也君とのおしゃべりの時間はかけがえのないものになりつつあるのだ。

 

「岡崎君も勝平さんの事を心配してるんですよ」

 

「分かってるよ。僕はこの町でかけがえのない友人と、愛する妻に出会って幸せなんだ」

 

 

 朋也君が、「お前はたまに詩人になる」というんだけど、多分こういった事を素面で言ったりするからなんだろうな。

 

「今日は退院後の説明を先生から受けてもらいます」

 

「漸く僕も病院の外に出られるんだね」

 

 

 手術を決意して五年。ろくに病院の敷地内から出る事が出来なかった生活とも、そろそろお別れの時なんだな。

 

「分かってるとは思いますけども、退院してもしばらくは通院してもらわなきゃダメですからね?」

 

「分かってるよ。椋さんは心配性だな~」

 

 

 僕の事を必要としてくれる、あの時はこんな人が現れるとは思っても無かった。根なし草だった僕が運命の人と出会えたのは、椋さんのお姉さんのおかげだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はただバイクに撥ねられただけだろうが」

 

 

 何時もの時間に病室にやってきた朋也君にその話をしたら、呆れ顔でそう言われてしまった。

 

「まぁ、杏のおかげで俺とお前も知りあったんだけどな」

 

「そうだよ。だから結局はお姉さんのおかげなんだって」

 

「……言い切るのは間違ってると思うんだがな」

 

 

 朋也君と知り合うきっかけもお姉さん――杏さんが僕をバイクで撥ねたのが原因なのだ。

 

「でもさ、バイクに撥ねられるなんてたまにあると思うんだよね」

 

「そんな事が日常的にあったら危ないだろうが」

 

「何が好い影響をもたらすか分からないんだから、バイクに撥ねられるのも悪くないと思うけどな」

 

「お前の思考はおかしい」

 

 

 こうして他愛ない話だけども、僕は朋也君とおしゃべりするのが本当に楽しい。五年前、知り合ったばかりの僕に寝場所を提供してくれて、その後も色々と僕に付き合ってくれた珍しい年下の男の子。見た目は僕の方が幼く見えるかもしれないけども、これでも僕の方が二つ年上なのだ。

 

「そういえばお前ら、結婚式は如何したんだ?」

 

「え?」

 

 

 朋也君が急に話題を変えたので、僕は一瞬ついていけなかった。

 

「お前がまだ入院生活が必要な時に結婚したんだろ? まだ挙げてないんじゃないか?」

 

「うん……でも僕はずっと入院してたし、式を挙げるお金なんて無いし」

 

「まぁ、その辺は藤林と話して決める事だからな。外部の俺がどうこう言う問題じゃないかもしれないが」

 

「朋也君、椋さんはもう『藤林』じゃ無いんだよ?」

 

 

 朋也君は相変わらず椋さんの事を「藤林」と呼ぶ。高校の同級生で、五年ぶりに再会したら名字が変わってたなんて展開だったんだから仕方ないとは思ってるけども、それでももう結構時間が経っているのだ。

 

「だからってなぁ、勝平……俺が名前で呼び捨てたらおかしいだろ? 旦那のお前がさん付けなのに」

 

「旦那……朋也君、まだ照れるから」

 

「………」

 

 

 朋也君の冷たい視線が、僕に突き刺さっている。年下だけど容赦のないツッコミや、こうして僕に対して遠慮の無い態度で接してくれたのも、僕が放浪してた中で朋也君が初めてだったのだ。

 

「それじゃ、俺は帰るな」

 

「もうそんな時間?」

 

「また来るわ」

 

 

 朋也君が片手を挙げて病室から出ていく。この光景ももう結構な回数見てるんだと思うと、どれだけ僕が朋也君に心配されてるのかが良く分かった。

 

「結婚式か……」

 

 

 朋也君に言われて考える。確かに僕がまだ検査が必要な時に椋さんと籍を入れただけで、式などは一切してない。それどころか椋さんにウエディングドレスを着てもらっても無いのだ。

 

「今度ゆっくり椋さんと話してみよ」

 

 

 昨日当直で、今はおそらく自宅にいるだろう椋さんを思い浮かべ、僕はベッドに横たわる。でも、身内以外で来てくれそうな友人なんて、僕にはいないんだよな……




かなり妄想入ってるので、続けるかどうか……しばらくはぽつぽつと更新していく予定です。
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