勝平アフター   作:猫林13世

13 / 56
あの空間にツッコミを! 誰でも良いから


ボケボケ夫婦

 退院祝い以降、私は朋也に会っていない。椋や勝平さんとは良く会ってるらしいんだけども、こうもタイミングが合わないものなのかしら? ひょっとして朋也があたしを避けてるとか?

 

「お姉ちゃん、何怖い顔してるの?」

 

「別に怖い顔なんてしてないわよ! ……って椋? 何でここにいるの?」

 

「何でって……ここは私の家なんだけど」

 

 

 そうだった。あたしは今、椋の家に遊びに来てたんだったっけ……

 

「えっと……それで? 勝平さんの様子がおかしいのは何時からなの?」

 

「うん、ちょうど退院祝い辺りからかな……」

 

 

 退院祝い……じゃあ心当たりがあるわね。

 

「きっと春原菌に感染したんじゃない?」

 

 

 それは昔朋也が作り出した恐ろしい菌の名前。感染するとヘタレになり、最終的には陽平のような残念な人間になってしまうというウイルスだ。

 

「そんなわけは無いと思うけど……春原菌って何?」

 

「そっか。椋は知らないんだっけ」

 

「うん……春原君が関係してるってのだけは分かるけど」

 

「それよ。アイツみたいになっちゃう菌だって朋也が言ってた」

 

「お姉ちゃん、それって岡崎君の冗談だよね?」

 

「そうよ?」

 

 

 まさか本気で椋が信じるなんて思ってないし、場を和ませる冗談としては結構なものだと思ったのだけども、椋の表情は冴えなかった。

 

「冗談はさておき……」

 

「さておくんだ……」

 

「勝平さんが挙動不審なのは何かサプライズでも企画してるんじゃないの? いや、あたしは知らないけどさ」

 

 

 実際あたしは勝平さんが何を考えているのか、何を調べているのかなんて分からない。友人の朋也なら知ってるのかもしれないけど、義姉であるあたしには相談しにくい事もあるんでしょうね、きっと。

 

「そうなのかな? 今日だって一人で出かけちゃうし。もしかして浮気とか!?」

 

「それは無いでしょ。勝平さん、椋にメロメロなんだし。それに収入もないリハビリ生活中の中性的な男性と関係を持つような物好きもそうそう居ないと思うけど」

 

 

 まぁあの見た目でお金持ちなら引く手あまたでしょうけども、勝平さんは現在無職、しかもリハビリ中なのだ。浮気なんてしている暇なんて無いでしょうしね。

 

「やっぱり岡崎君に聞くしかないのかな……」

 

「椋、アンタ朋也の連絡先なんて知ってるの?」

 

 

 あたしは名刺をもらったから電話出来るけども、椋があの名刺をもらってるとは考えにくいし……

 

「普通に携帯の番号とアドレスは教えてもらったけど? 勝平さんに何かあったら連絡してほしいって」

 

「ふ、ふ~ん……そうなんだ」

 

 

 朋也のやつ、アタシとはアドレス交換してないのに椋とはしたんだ……人の妹にちょっかい出すようならタダじゃおかない……って、何を考えてるんだあたしは。

 

「お姉ちゃんは岡崎君とアドレス交換してないの?」

 

「えっ? えぇ、特に連絡する必要もないしね」

 

「ふ~ん」

 

 

 椋があたしの事を疑ってる目をあたしに向けてくる。双子だから分かるのか、それともかつては同じ男を好きだったからなのかは分からないけど、椋はあたしがまだ朋也の事を少なからず想っている事に気が付いている。

 

「今度勝平さんと三人で岡崎君と出かけようと思ってるんだけど、お姉ちゃんも来る?」

 

「えっ!? 何であたしまで……てか、何で朋也が一緒なのよ」

 

「だって岡崎君、私とも勝平さんともお友達ですし、貴重なツッコミですもの」

 

「あ……アンタたちは自分がボケだって自覚はあったのね」

 

 

 確かに椋と勝平さんの両方と友人関係で、この二人相手にツッコミを入れられるのは朋也だけだろう。何せあたしは椋の姉で勝平さんの義姉、そして陽平は友人ですらないものね。

 

『酷くないですかね、それ!?』

 

「……? 椋、あんた今何か言った?」

 

「ううん。何も言ってないよ?」

 

「そう……空耳かしら」

 

 

 何か聞こえたような気がしたんだけども、如何やら空耳だったらしい。あたしも疲れてるのかしら……

 

「ただいまー。あれ? 杏さん、いらしてたんですね」

 

「おじゃまてるわよ。ところで勝平さん、何処に行ってたのかしら?」

 

「リハビリを兼ねて散歩に。あとはブラブラと」

 

「椋は連れずに?」

 

「何時も連れ添わせたら椋さんも大変だろうし。それに、何かあったらちゃんと電話するから大丈夫ですよ」

 

 

 そういって勝平さんは買ったばかりの携帯を取り出して見せてくれた。まぁこの人が浮気をする甲斐性なんてない事は分かってるんだけど、やっぱり気になるのよねぇ……

 

「そういえばさっき、この近くで朋也君の軽トラを見たよ」

 

「岡崎君、まだ仕事中なんですね」

 

「朋也君も忙しいらしいから……この時期は家電製品が壊れやすいのかな?」

 

「如何でしょう?」

 

 

 このボケボケ夫婦の会話に付き合うのは結構疲れる。それでもあたしがこの部屋に入り浸ってるのはやっぱ、一人で部屋にいてもつまらないからなのかしら? あたしも誰かと付き合って結婚でもすれば、こうやって妹夫婦の家に入り浸る事も無くなるのかしら……その答えは当分得られそうになさそうね。




クラナドの世界って、ツッコミ少ないんですよね……てか、ボケの威力が高いのか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。