朋也君に散々言われたからではないが、僕は遂に椋さんに例の事を相談する事にした……のは良いのだけども、いざ切り出そうとするとなかなかタイミングがつかめないものだな……
「勝平さん、如何かしたのですか?」
「えっ!? ……うん、あのちょっと聞きたい事があるんだけど」
「なんでしょう?」
椋さんの瞳を見ると決心が揺らぐ……別にやましい事をしているわけでもないのに、何でなんだろう……
「勝平さん?」
「えっと……椋さんってドレスとか似合いそうだよね」
「はぁ……?」
何でこんなヘタレた展開になっちゃうんだよ……これじゃあ春原君と大差ないじゃないか……
「あの、勝平さん。もしかして結婚式とか考えてくれてるんですか?」
「えっと……はい……」
結局自分から切り出す事が出来なかった挙句に椋さんに言い当てられてしまった……これじゃあ朋也君に手伝ってもらった方が良かったよ……
「前に朋也君に言われたんだ。『もしかしたら椋さんは結婚式をしたいんじゃないか』って」
「そうですか、岡崎君が……」
椋さんは少し考えてから、僕に視線を改めて向けてきた。
「実は私もお姉ちゃんに言われてたんです、『アンタたち結婚式はしないの』って」
「そうだったんだ……でも、何で朋也君も杏さんも?」
「分かりません。ですが、私は別に結婚式なんてしなくても、勝平さんと一緒にいられるだけで幸せです」
「うわぁ……なんだか恥ずかしいや」
僕だって椋さんがいてくれるだけで幸せを感じるけど、改まって言われるとにやけちゃうしなんだかむずむずする。
「じゃあせめて写真だけでも。そういう貸衣装とかがある場所があるんだ」
「でも、お金掛りますよね? それに勝平さんはまだリハビリ中ですし」
「うん……」
椋さんの稼ぎだけで生活しているので、現状の僕はいわゆる「ヒモ」。何とも情けない状況なのだ……
「それに、お姉ちゃんや岡崎君にとやかく言われる筋合いは無いですし」
「え?」
「だって二人とも独り身ですし、決まった相手もいませんしね」
「確かに……」
朋也君も杏さんも、恋人もいなければ親しい異性もいないって言ってたな、そういえば……仕事が忙しいらしいけども、もう二人とも仕事には慣れてきてるはずなんだけどな……
「おっじゃましまーす!」
「……何で俺まで捕まらなければならないんだよ」
「いいじゃな。どうせ一緒に遊びに行く友達なんていないんでしょ?」
「お前に言われたくない! 妹夫婦の家に入り浸ってるようなヤツにはな!」
噂をすれば影……では無いだろうけども、タイミングよく杏さんと朋也君がやってきた。朋也君は来たそうな感じでは無かったけども。
「お姉ちゃん、またなの?」
「良いじゃない別に。子作りしてる訳じゃないんだし」
「……お前って実は春原と大差ないんじゃないか?」
「へ? 何でよ」
朋也君は素面で撃退したけども、僕と椋さんはそうはいかなかった。顔は真っ赤になってるし、お互いの顔を見る事も出来なくなってしまっているのだ。
「あれ? 二人とも、如何かしたの」
「お前のせいだ、お前の」
「あたし、何か変な事言った?」
「自覚なしかよ……」
朋也君がいてくれたから何とかなりそうだけども、もし朋也君がいなかったら僕たちは気まずい雰囲気の中で過ごさなければならなかったのだろうな。
「ありがとう、朋也君」
「はっ? なんだよいきなり……」
「岡崎君がいてくれるおかげで、何とかなりそうです」
「……そういう事か。お前の姉ちゃんって大概だな」
「昔からです……」
「何よ! あたしが何をしたって言うのよ!」
「ハァ……自覚なしか」
とてつもない爆弾を投下したにも関わらず、本人はその事に気づいていない。これ以上性質の悪い事は無いだろうな……
「あーなんかイラつく! とりあえず呑むわよ!」
「お前、呑み過ぎ。お茶にしとけ」
朋也君も慣れたものなのか、この家のお茶の場所を心得ているようだった。すばやく杏さんからお酒を取り上げると、淹れたばかりのお茶を杏さんに手渡す。
「お茶なんかじゃやってられないわよ!」
「面倒なヤツ……」
そう言いながら朋也君は僕と椋さんの分のお茶も淹れてくれた。
「大体、何で俺までお前に付き合わにゃいかんのだ」
「良いじゃない別に! 腐れ縁よ!」
「それから、事あるごとにこの部屋を訪れようとするな。勝平たちにも迷惑だろ」
「だから別に良いでしょ! 姉が妹の部屋を訪ねて何が悪いのよ!」
「限度ってものを考えろって言ってるんだ。二人だってゆっくりしたい時があるだろ」
「じゃあ何処に行けって言うのよ?」
「知らん。そんなの自分で考えろ」
杏さん相手にここ迄言える朋也君に、僕と椋さんは羨望の眼差しを向ける。だって何時も言いくるめられて終わっちゃうんだもん……
さて、この後からどうやって盛り上げるか……