岡崎君の作ってくれたご飯を食べながら、お姉ちゃんが持ってきたお酒を飲む。今日の食卓には私が作ったり用意したものは一切存在しなかった。
「朋也、アンタ少しはまともに料理が出来たのね」
「一人暮らしだ。嫌でも出来るようになる。ってか、お前はまた飲んでるのか……」
「飲まなきゃやってられないのよ。子供相手ってのも色々とストレスが溜まるのよ」
「自分が好きでなったんだろうが」
お姉ちゃんの相手は、今のところ岡崎君がしてくれている。ちなみに勝平さんはそんな岡崎君の隣で、岡崎君が作ったご飯を美味しそうに食べている。
「ねぇ朋也君」
「なんだ?」
「僕もこれくらい出来るようになるかな?」
「しらん。それは勝平の努力次第だろ」
「そっか」
「勝平さんも聞きなさい! よその子を預かるってのは大変なんだからね!」
岡崎君に話しかけた所為で、勝平さんもお姉ちゃんの愚痴に巻き込まれてしまった。
「(それにしても、岡崎君の料理……間違いなく私より美味しいです……)」
自分の料理が壊滅的なのには気が付いている。でも作らなければ上手にならないのも分かっているので、私は機会を見つけて料理を作っているのだけども、お姉ちゃんも勝平さんもそんな日に限って食欲不振を起こすのだ。
「(いや、本当は食べたくないんだろうな……私だって分かってるもの……)」
自分が作ったものを自分で食べて気分が悪くなった事だってある。如何してお姉ちゃんは料理上手なのに私は上手く作れないんだろう……
「朋也! もう一本!」
「お前、飲み過ぎだろ……明日も朝早いんじゃないのか?」
「うっさいわねー! アンタには関係ないでしょ!」
「やれやれ……」
完全に酔っ払っているお姉ちゃんに呆れながらも、岡崎君はビールの缶をお姉ちゃんに手渡す。勝平さんではないけども、やっぱりこの二人の相性はいいんだろうな、と思ってしまう。
「椋? あんまり食べてないが、口に合わなかったのか?」
「い、いえ! 美味しいですよ! ただ……私のより美味しいのがちょっと……」
「そうか」
岡崎君はそれ以上何も言わずに、自分で淹れたお茶を啜りました。
「朋也! アンタは何で飲まないのよ!」
「お前なぁ……車運転する人間に飲酒を勧めるなよな、罪に問われるぞ」
「バレなきゃ罪にはならないのよ!」
「いや、なるだろ……」
普段ツッコミのお姉ちゃんだけども、岡崎君の前では結構ボケたりもしている。というか、お姉ちゃんにツッコミを入れられるのが岡崎君だけなのだ。
「そろそろ本格的に酔っ払ってきてるな、コイツは……」
「ごめんなさいね、岡崎君。お姉ちゃんの相手を押し付けちゃって」
「いやまぁ……邪魔してるのは俺と杏だし、家主である椋が気にする事じゃないんだが……」
「でも、杏さんの相手は本当なら僕か椋さんがしなきゃいけない事だし……」
勝平さんも同じように気に病んでいるようで、岡崎君に申し訳なさそうな顔を見せている。
「あたしは酔ってないわよ!」
「酔ってるやつは全員そうやって言うんだよ」
「大体ね~、アンタがもう少し甲斐性があれば、あたしだってこんなに悩まなくて済むのよ!」
「? 何の話しをしてるんだ、お前は」
「お、お姉ちゃん!?」
遂に告白するのかと一瞬焦ったけども、お姉ちゃんはそこまで言って酔い潰れてしまい、寝てしまった。
「……結局何が言いたかったんだ、コイツは?」
「さ、さぁ……何でしょうね?」
「何だろうね……」
お姉ちゃんの気持ちを知らない岡崎君とは、結構本気で首を傾げているが、気持ちを知っている私からすれば、何で気づかないのだろうと不思議でしょうがないのだ。
「もしかして、杏さんは朋也君の事が好きなんじゃない?」
「コイツが俺を? ………」
勝平さんが冗談めかして言った真実に、私は心臓が止まりそうになるくらいビックリした。一方の岡崎君は少し考え込んでいる。
「まぁ、真実は兎も角として、酔っ払いの戯言を真に受けるのもバカらしいからな。悪いが片づけとこの酔っ払いの相手は任すぞ」
「帰るの?」
「あぁ。明日も早いからな」
岡崎君は何か結論を出した風でしたが、その事は私たちには言わずに帰ってしまいました。
「勝平さん」
「ん? 何、椋さん?」
「お姉ちゃんは本当に岡崎君の事が好きなんですよ」
「………そうだったね」
少し間が空きましたが、勝平さんは本気で驚きました。まさか本当に忘れてたとは……
「何となく相性は好さそうだとは思うけど、本当に杏さんが朋也君の事を……」
「前にも話しませんでしたっけ? お姉ちゃんは岡崎君の事を高校時代から好きだったんですよ」
「そういえば聞いた気がする……でも、あまり関係ないから覚えてなかった……」
勝平さんは意外なところで抜けていますからね……そんな事を思いながら、私は酔い潰れたお姉ちゃんを眺めているのでした。
やて、どうやって告白させようか……