勝平アフター   作:猫林13世

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今回は藤林姉妹の家飲みです


姉妹の家飲み

 昨日当直だったから、今日はゆっくりと休もうと思っていたのだけど、夕方に来客があった。

 

「はい、何方ですか?」

 

『あたしー! 椋、開けて~』

 

「お姉ちゃん?」

 

 

 鍵を開けて部屋に招き入れる。最近はお姉ちゃんも忙しいとかであんまり会ってなかったのに、何かあったのだろうか?

 

「いや~病院に行ってみたら椋が休みだって聞いたからさ~。じゃあこっちにならいるかなって思って来ちゃった」

 

「うんまぁ……休みなら大抵家にいると思うけど」

 

 

 実家を出て一人暮らしをしてからお姉ちゃんと会う機会は激減した。それでもたまにメールとか電話とかで近況を報告したりはしてたから、本当に久しぶりだとは思わないんだけど。

 

「それで、何かあったの?」

 

「え?」

 

「だって、お姉ちゃんがわざわざ会いに来るなんて」

 

 

 それこそお父さんかお母さんに何かあったとかじゃなきゃ、お姉ちゃんがこの部屋を訪ねてくるなんて考えられないくらい、お姉ちゃんとは会って無かったのだ。

 

「たまには姉妹仲良く呑みましょ。お酒持ってきたから」

 

「……私、そんなに強くないよ?」

 

「平気平気! 椋が酔っ払ってもあたしがしっかり介抱してあげるから」

 

 

 何時も通りお姉ちゃんの勢いに負けて、私はお姉ちゃんと二人で家飲みをする事になったのだ。

 

「それじゃあ、かんぱーい!」

 

「乾杯」

 

 

 やけにテンションの高そうなお姉ちゃんに、私は何となくだけど嫌な感じがしてた。昔からお姉ちゃんがテンション高い時に限ってろくな事を言い出さなかったのだ。

 

「勝平さんもそろそろ退院なのよね?」

 

「そうだけど……お姉ちゃん、義弟相手にまださん付けなの?」

 

「う……しょうがないじゃないの。勝平さんの方が年上で、結婚したっていってもずっと入院生活で会う機会も無かったんだから」

 

「お見舞いとか来てたでしょ?」

 

「それでもよ」

 

 

 居心地が悪くなったのか、お姉ちゃんは凄い勢いでお酒を呑んでいく。あんなペースでもつのだろうか……

 

「そういえばお姉ちゃん」

 

「ん~?」

 

「最近勝平さんに会いに岡崎君が来てるんだけどね」

 

「ッ!?」

 

 

 お姉ちゃんが分かりやすく動揺した。昔は私の事をからかってたお姉ちゃんだけど、こうしてみるとやはり双子なんだって思える。

 

「へ、へー……朋也が来てるんだ」

 

「岡崎君は勝平さんのお友達ですから」

 

 

 その縁で最近私とも少しお話する機会がありました。昔好きだった男の子が今の旦那の友人というのは、些か複雑ではあると思いますが、私は岡崎君に思いを伝えていませんし、岡崎君も岡崎君で鈍いところがあったので私の気持ちには気づいてない様子でしたしね。

 

「それで、朋也って勝平さんと何を話してるの?」

 

「さぁ? 岡崎君が勝平さんを訪ねてくる時間は、私も忙しいから。それに、勝平さんに聞いても教えてくれませんし」

 

 

 男同士の語らいだからって何時も言ってますけども、岡崎君曰く大した話はしてないみたいなんですよね。

 

「朋也って何してるの? 高校出てから音沙汰なかったけど」

 

「この町のリサイクルショップで働いてるみたいだよ」

 

 

 正確には違うみたいだけど、岡崎君も説明が面倒だからってこれで通してるらしい。なんでも営業部長だとか言ってたけど、すぐに「俺しか営業してないからな」って笑ってたな。

 

「意外としっかり働いてるのね。てっきりニートかと思ってたけど」

 

「岡崎君は三年生の時ちゃんと就職活動してたじゃない。それはお姉ちゃんだって知ってるでしょ?」

 

 

 進学校だった為に、私たちの代で就職活動をしていたのは岡崎君と春原君の二人だけ。春原君は地元で就職するからって最後の方は殆ど学校に来てなかったけど、どうやら無事に就職は出来たようだった。

 

「でも朋也が営業ねぇ……脅しの間違いじゃない?」

 

「岡崎君はいい人だよ。それはお姉ちゃんだって分かってるでしょ?」

 

 

 不良と言われていた岡崎君だけども、それは周りが真面目過ぎるから故に言われていた事。遅刻や授業中の居眠りなど、よその学校ならば普通にあり得る事なのだ。

 

「まぁ色々とあったからねぇ……」

 

「岡崎君がいてくれなかったら、私と勝平さんは、今こうして夫婦という関係に成れてなかったでしょうしね」

 

「あーはいはい。分かったから。そういえば……アンタたちって結婚式挙げたの?」

 

「挙げてないよ。婚姻届を提出して籍を入れただけ。大体勝平さんはまだ退院してないし」

 

 

 何時かはとは思うけども、当面は勝平さんのリハビリに専念しなきゃいけないのだ。それに籍を入れて既に数年経っているのだ。今更という気持ちも何処かにあるのかもしれない。

 

「せめてお父さんとお母さんくらいにはドレス姿見せてあげれば?」

 

「ならお姉ちゃんでもいいじゃん。私よりお姉ちゃんの方が見せてあげれば?」

 

「でもさー椋。幼稚園の先生なんて出会いが無いわよ」

 

 

 そういって更にお酒を飲むお姉ちゃん……

 

「アンタたちがうらやましいわよ……」

 

「お姉ちゃん?」

 

「……スー……」

 

「寝ちゃってる……」

 

 

 コップを持ったまま座り寝をしてしまったお姉ちゃんに布団を掛け、私は結婚式という言葉を自分の中で反芻してみたのだった。




この作品は勝平×椋・朋也×杏で行きます。春原はお笑い要員で……あとはモブが数人くらいの少なさで行くつもりです。
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