勝平アフター   作:猫林13世

20 / 56
口の悪さも相変わらずです


再びの杏

 朋也君に相談を持ちかけてから四日、つまり杏さんがこの部屋に寄り付かなくなって一週間が過ぎた。杏さんが部屋に来なくなった原因に、椋さんも心当たりが無いらしく、この数日間、僕と椋さんは常にそわそわしながら過ごしてきた。

 

「……それで、やっぱり俺が聞くのか?」

 

 

 約束の一週間を我慢し、これ以上我慢したらノイローゼにでもなりそうだったので、僕は早朝から朋也君を呼び出したのだ。

 

「だって僕や椋さんじゃ聞き出す事は出来ないだろうし、朋也君だって聞いてくれるって約束したのね?」

 

「まぁ……だけど、杏が来なくなったのって、そんなに重要な事か? もともと別々に生活してたのが、たまたま交り合っただけで、また普段の生活に戻っただけだろ? それに、杏だって仕事が忙しくなっただけかもしれないし、他に遊ぶ友達がいるかもしれないだろ」

 

「ですが、お姉ちゃんが一緒に遊ぶ友達なんて、同僚の中にはいなかったと思いますが……それに、忙しいのは前からですし……」

 

「そうは言ってもなぁ……俺だって勝平に呼ばれる以外で、最近この部屋には寄り付いてないんだぞ? 杏だって呼ばれれば来るが、わざわざ毎日顔を見せる必要もないだろう、って考えてるのかもしれないぞ?」

 

 

 朋也君の言っている事は確かにそうだ。でも、あの杏さんがそんな遠慮をいきなりするとは、僕にも椋さんにも思えないのだ。

 

「とりあえず、仕事があるから俺は行くぞ。帰りにまたここに寄る」

 

「じゃあ、それまでに杏さんが来なかったら朋也君が電話してね」

 

「仕方ないな……」

 

 

 仕事前にわざわざ呼びつけて、申し訳ないとは思ってたけど、それ以上に杏さんの事が心配だったのだ。朋也君は軽く手を振って部屋から出て行き、仕事場へと歩いて行った。

 

「お姉ちゃん、何もなければ良いんですけど……」

 

「そうだね……杏さんの事だから何かの病気って訳じゃないだろうけども……」

 

「元気が撮り得ですからね……」

 

 

 何気に酷い事を思いながら、僕と椋さんは朋也君が再びこの部屋を訪ねてくる迄の間を悶々と過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そろそろ朋也君の仕事が終わる時間になった時、不意に誰かが扉の前に立った気配がした。普段なら気配なんて分からないのに、何でこのタイミングだけ分かったのだろうか。

 

「何方ですか?」

 

 

 扉を開けながら確認する。するとそこには……

 

「お久しぶり」

 

「杏さん!?」

 

「えっ、お姉ちゃん!?」

 

 

 ここ一週間姿を見せなかった杏さんが立っていた。

 

「如何したんですか? 最近来なかったのに」

 

「いや~、自分の生活を見詰め直したら、私って椋と勝平さんのイチャツク時間を奪ってるかもって思ってさ~、自重してたんだよね~」

 

「そうならそうって、言ってよお姉ちゃん! いきなり来なくなったから心配してたんだから」

 

「そうらしいわね。さっき朋也からメールで教えてもらったわ」

 

 

 如何やら杏さんが顔を見せたのは、朋也君がメールで僕たちの状況を知らせてくれたかららしい。

 

「まさかあたしが来なくなった事を気にしてる、なんて思っても無かったわよ」

 

「だって、あれだけ毎日来てたのに、いきなり顔を見せなくなるんだもん……」

 

「そんな状況で、心配しない訳無いじゃないですか」

 

「そっか……ごめんね」

 

 

 杏さんは、少し気まずそうに舌を出して謝った。

 

「よぅ」

 

「朋也! アンタ、いきなりメールしてくるなんて!」

 

「勝平と椋が心配のし過ぎで胃に穴が開くんじゃなかって思ってな。電話よりメールの方が楽だったし」

 

「朋也君! 杏さんが、杏さんが来てくれた!」

 

「だから言っただろ。呼べば来るんじゃねぇかって。そんじゃ、俺は帰る……」

 

「ちょっと待ちなさい! あたしを呼びつけたんだから、今日はとことん付き合ってもらうわよ」

 

「俺は明日も仕事なんだよ! お前にとことん付き合ってたら朝になるだろうが!」

 

 

 久しぶりに杏さんが部屋に来てくれた。そして朋也君と相変わらずのやり取りをしているのを見て、僕も椋さんも思わず笑ってしまった。

 

「なに? いきなり笑って、如何かしたの?」

 

「ううん、お姉ちゃんが来たんだな~って思って」

 

「やっぱり杏さんと朋也君は面白いなーって」

 

「コイツと同等に思われるのは甚だ不本意なんだが……」

 

「なによ!? あたしだってアンタと同じって思わるなんて最悪よ! まだ芋虫と同じって言われた方がマシよ」

 

 

 杏さんって、本当に朋也君の事が好きなんだろうか……今の発言はとてもじゃないが、好きな人相手に言うような言葉じゃ無かった気がするんだが……

 

「あぁそうか! じゃあそこら辺で芋虫でも捕まえて一緒に呑めばいいだろ! 俺は帰る」

 

「待ちなさいよ! あたしとじゃ呑めないって言うの!?」

 

「お前が言ったんだろ! 芋虫の方がマシだって。だから俺は帰るんだよ」

 

 

 そう言って朋也君は杏さんの手を振りほどいて、本当に帰ってしまいました。

 

「……お姉ちゃん、ツンデレってレベルじゃないよ、今の……」

 

「僕もさすがに言い過ぎだと思います……」

 

「分かってるわよ……さすがに反省してるんだから……」

 

 

 杏さんが再びこの部屋に訪れてくれたのは嬉しいけど、この気まずい雰囲気は如何にかしてほしかったな……




原作ではミジンコだったんですよね……本当に好きなんだろうか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。