酔い潰れた二人――潰したのは朋也君だけども――を寝かせて、僕は朋也君と向き合った。
「朋也君は、杏さんの気持ちを知ってるの?」
さっきもだけど、杏さんは何度か告白を試みているのだ。まぁ、酔った勢いって言うのも多分にあるんだろうけども……ついでに言えば、呂律が回って無くなにを言ってるのか分からない状況なのもあるのかもしれない。
「さすがに気づくだろ。俺だってそこまで鈍くない」
「じゃあ、僕のお義兄さんになってくるの?」
「おいおい、随分と話しが飛んでるぞ」
「そんな事は無いよ! 杏さんは高校時代から朋也君の事が好きんだから!」
僕が言っていいのか、と一瞬迷いはしたけども、何時まで経っても気持ちを伝えない杏さんと、知ってても自分からは切り出さない朋也君に苛立ちを覚えたのか、僕は訊いた。きっと僕も酔っ払ってるんだろう。
「だから何だ? 好きな時間は長くとも、俺と杏は友達だ。今はその関係で間違いない」
「じゃあ、朋也君は杏さんがちゃんと告白したら如何するのさ?」
「さてな。そんなの、その時にならなきゃ分からないだろ。コイツの場合は冗談で済まそうとする可能性だってあるしな」
そう言いながら朋也君は湯飲みに残っていたお茶を一気に飲んだ。僕もそれに合わせてコップに入っている液体を飲み干す……あれ? これって僕のコップだったっけ?
「勝平? 何だか顔が赤いんだが」
「ひょんなことにゃいよ~」
「……それは酒だぞ」
朋也君に言われて、僕はコップに残っている匂いを嗅いだ、うん、間違いなくお酒だ。
「ひゃれ? にゃんでともにゃきゅんが三人もいるにょ?」
「……寝ろ」
朋也君に一撃を喰らわされて、僕は意識を手放した。あぁ、杏さんや椋さんもこんな感じだったのかな……
意識を取り戻した時、朋也君はこの部屋にはいなかった。でも帰ったわけではないと思う。だって酔っ払った三人を置いたまま、鍵を開けっぱなしのこの空間に無防備な人間を放置出来るほど、朋也君の正確は歪んでいない。
「じゃあ何処に行ったんだろう……」
周りを見渡してから、僕は外が明るくなってきているのに気がついた。いや、完全に日が昇っていた。
「あれから随分経ったんだな……」
三人共、今日が休みだったから良かったけど、誰か一人でも仕事だったら大変だったんだろうな……
「椋さん、杏さん、そろそろ起きて下さいよ」
僕より先に朋也君に寝かされた二人がまだ起きてないのは、ちょっと変な感じがするけども、普段から疲れがたまってるんだろうなって事で何とか納得した。
「……頭痛い」
「……私もです」
「うん、実は僕も痛いんだよね……」
二日酔い、ではないだろう。だって痛いのは頭の内側ではなく外側、つまり朋也君に叩かれた場所なのだから。
「朋也は?」
「分かりません。何処かに出かけてるのかもしれないです」
「帰ったんじゃないですか? 岡崎君がこの部屋に泊まった事は無いですし」
「でも、普段は僕が起きてるから朋也君は帰ってるんだと思うけど」
「えっ、なに? 昨日は勝平さんも酔い潰れたの?」
「はい……コップを間違えまして……」
普段飲まないから仕方ないのと、一気に呷ったのが原因で酔っ払ってしまったのだ。
「おっ、さすがに起きてたか」
「朋也君! 何処に行ってたの?」
「ちょっと買い物に。ほら、朝飯」
朋也君が買ってきてくれたもので朝食を済ませ、僕たち三人は昨日の事を反省、迷惑をかけた朋也君に謝罪をする事にした。
「昨日はごめんなさい」
「私も、途中から記憶が曖昧でして……途中までお姉ちゃんと何かを話してたのは覚えてるんですが……いったい何を話していたんでしょうか……」
「あたしも、椋と話してた、って事は覚えてるのよね……でもその内容までは……ねぇ朋也。アンタ聞いてたんでしょ? どんな話しをしてたのか教えなさいよ」
「お前らの会話は呂律が回って無くて、何言ってるのかさっぱりだった」
朋也君は謝る、って言ったのに上から目線で問い掛けてきた杏さんにも普通に対応している。これが噂通り元不良だったのなら喧嘩になっててもおかしくないんだろうな……やっぱり朋也君は不良じゃなかったんだろうな。
「大体な、お前ら酒に弱いんだからほどほどにしろよな! 毎回介抱する俺の身にもなれってんだ!」
「「「ごめんなさい……」」」
これにはさすがの杏さんも反論出来なかったようで、素直に頭を下げていた。それにしても、なんだかんだで面倒見が良いんだよね、朋也君って。初めて会った時から思ってたけど、これはもう確信していいんじゃないだろうかな。
酔える人……いえ、飲める人が羨ましい……