子供たち全員を無事見送って、あたしはついため息を吐いてしまった。原因は分かっている、朋也だ。
最近また椋たちの部屋に行くようになって、あの場所では朋也と頻繁に顔を合わせる事が出来るのだ。そもそも、あそこ以外では滅多に会わないんだけど……
「何であたしが朋也の事で頭を悩ませなきゃいけないのよ……」
八つ当たりも甚だしいのだけども、あたしはこのモヤモヤの責任を朋也に押し付ける。そうすれば少しは気持ちが楽になるから……
「(高校の時からだけども、如何してあたしは朋也相手に素直になれないのかしら……)」
思っても無い事を言ってみたり、必要以上にキツイ事を言ってみたり、完全にツンデレだと自分でも分かっているのだ。むしろ、最近ではツンデレ、って言葉では抑えられないくらいの酷さだったりもしているのだ……
「(朋也だから許してくれてるけど、他の男だったら怒ってるでしょうね……)」
それなりに付き合いが長いからか、朋也はあたしの暴言も軽く流してくれる。もしかしてMなのかとも思ったけども、陽平に対する朋也の態度から分かるように、アイツは完全なるドSなのだ。
「(でも、ドSな朋也が好きって事は、あたしって実はMなのかな?)」
あたしも陽平に対してはかなりのドSだとは思うけども、朋也ほど酷くは無いと思っている。第三者から見たら五十歩百歩なのかもしれないけど……
「(誰か相談出来る相手っていたかしら……)」
携帯のアドレス帳を開き、色恋の相談が出来そうな相手を探す。だけど残念ながら、あたしのアドレス帳の中には、色恋に強そうな名前は登録されていなかった。
「(あの子は流れで結婚しただけだし、あっちは出来ちゃった婚だし……)」
よくよく考えると、あたしの周りってまともな恋愛をして結婚した友達っていないのね……
「(いっそ椋に……って、あのポンコツ夫婦に相談したら、次の日には朋也に知られちゃうわよね)」
実の妹と、その旦那を捕まえて酷いとはあたしも思うけども、実際のところあの二人はポンコツなのだ。特に相談事に対しての酷さは目を見張るものがある。
「(あーあ、こんなに悩むなら、高校時代に朋也に告白しておくんだった……)」
結果がどうであれ、今こんなにも悩む事は無かっただろうし……
「(振られたら未練とか残るのかな……それとも、すっぱりと切り替えられるのかしら?)」
あたしの性格上、後者の可能性が高いだろうけども、そこまで行く勇気があたしには足りない。普段思っても無い事をずばずば言えるのに、どうして肝心な事は言えないんだろう……
最近、杏のあたりが強くなってる気がする。理由は何となく……というかほぼ間違いなくアレなんだろうけども、それでも酷いだろう……
「(気持ちを知ってて黙ってる俺も悪いんだろうけどな)」
実を言うと、杏の気持ちは高校時代から何となく知っていた。だが確証が無かったので放っておいたのだが、まさかここまで引き摺ってるとは思わなかった……
「(椋や勝平には何とかしてと頼まれるし、杏は杏で面倒くさいし……)」
俺の中で、杏は友達だ。そこは間違いない。だが、一人の女性として考えるとどうだ?
「(家事全般は問題ないらしいが、性格に難あり……あれを好意の裏返しとして受け止めるだけの器量が、俺には無い)」
素直な杏ってのも気持ち悪いが、あそこまでツンデレってる杏も傍迷惑なのだ。だから俺に椋と勝平が相談してくるのだろう。
「(面倒だが杏の話を聞くしかないのか……)」
アイツが何で最近当たり散らしているのかは明白だ。だが決めつけるのは些かカッコ悪いだろ? だって自惚れという可能性だって捨てきれないのだから……
「(これが春原なら、百パーセント自惚れだと言いきれるんだがな……)」
仕事を終えてからの方が疲れる、というのは何だかおかしい気もするが、半分は自分の優柔不断さが招いた事なので諦めるとしよう。
俺は杏がいるであろう勝平たちの部屋に向かう為に、スーパーによって軽く摘まめる物を購入した。だって手ぶらで行って椋の料理を食わなければならなくなるのは御免だからだ。
ゆっくり、けど確実に……