珍しくお姉ちゃんが何の連絡も無く訪ねてきた。最近はここに来る前にメールで知らせてくれてたんだけども、今日は何の連絡もなしだったので、少し驚いた。
「お姉ちゃん、何かあったの?」
「ちょっと相談したい事があったんだけど……やっぱいいわ」
「何それ、凄く気になるんだけど」
「あんたたちに相談しても解決する未来が見えないのよね」
私と勝平さんを見て、お姉ちゃんは深いため息を吐きました。確かに私たちは相談事を解決できる、と言い切れるだけの自信はありませんけども、相談する事ですっきりする事だってあると思うんですけど。
「椋さん、朋也君も来るって。今メールがあった」
「岡崎君も? 珍しいですね」
お姉ちゃん以上にこの部屋を訪れる回数が減っている岡崎君も今日ここに来る、なんてかなりの偶然が重ならなければ起きなかったでしょうね。
「と、朋也が来るの!? あたし帰る!」
「お姉ちゃん? もしかして今更岡崎君に会うのが恥ずかしくなった、とかじゃないよね?」
「そ、そんなわけ無いでしょ! なんであたしが朋也に会うのが恥ずかしいとか思わなきゃいけないのよ! 大体朋也なんて高校時代からほぼ毎日顔を合わせてたんだから、今更恥ずかしいとか思う訳無いでしょ!」
「だよね? じゃあ別に慌てて帰る必要も無いよね?」
「それは……」
普段から私の方が言いくるめられるので、ここぞとばかりにお姉ちゃんを言葉で攻め立てる。攻める、と言っても私が言っている事はお姉ちゃんが反論出来ないと分かってて言ってるのでより性質が悪いんだろうな。
「何だか朋也君も相談したいらしいから、杏さんも一緒にどうですか?」
「で、でも……朋也が相談するならあたしは邪魔かなーって」
「そんな事ないよ、お姉ちゃん。岡崎君だってお姉ちゃんを邪魔だなんて言わないと思うよ」
「そうだね。朋也君はそんな事を言う人じゃないもんね」
知ってか知らずか、勝平さんも私の援護射撃をしてくれる。ここでお姉ちゃんを帰したら、それこそ岡崎君と顔を合わせる機会が減ってしまうのだから。
「椋、アンタ面白がってない?」
「そんな事は無いけど? それとも、お姉ちゃんは私がお姉ちゃんを苛めてるとか思ってるの?」
「そ、そんなわけ無いわよ……」
私の心の裡が分からないお姉ちゃんは、妹を疑う事に抵抗があるようなので、こうやって攻めればすぐに諦めてくれる。
「それじゃあ、岡崎君が来るまでお姉ちゃんの相談したい事を聞くよ?」
「だ、大丈夫よ……自分で何とかするから」
頑なに相談したくなさそうだったので、これ以上聞き出そうとするのは止めておこう。だってこれ以上しつこくしたら、お姉ちゃんが逃げちゃいそうだったので。
扉の向こうが騒がしい。まぁこの部屋は何時もの事か。
「おーい、勝平。来たぞ」
「いらっしゃい、岡崎君」
「椋か。これ、差し入れ」
「何時もすみません」
恐縮しながら俺が買ってきたものを受け取る椋。別に大したものを持って来ている訳ではないので、そこまで恐縮されると、こっちの方が申し訳なく思う。
「やっぱり今日もいたか」
「なによ? あたしがいたらいけないの?」
「いや、お前の分も買ってきたから、いなかったら余るな、と思ってただけだ」
「そ、そう……ならいいのよ」
「?」
杏に何時ものキレが感じられなかった。まぁ最近様子がおかしいとは知ってたし、原因が俺かもしれないというのも、何となく知ってるので、これ以上つつく事はしないでおこう。
「いらっしゃい、朋也君。それで、相談したい事って?」
「いきなりだな……まぁいっか。お前から聞いた杏の様子なんだが、ホントにおかしいな」
「でしょ? だから朋也君なら何とか出来るんじゃないかって思ってさ」
「何とかねぇ……」
少し考えるフリをして、俺は杏に視線を向けた。もともとこの話をする為にこの場所に来たので、杏がいなかったら来た意味が無いのだ。
「なぁ杏」
「なによ?」
「今度の休み、気分転換に何処かに行かないか?」
「あんたと二人で?」
「嫌なら勝平たちも一緒でも良いぞ」
「……悪くないわね」
コイツと二人で遊びに行くなんて、昔でも無かったな……春原や他の連中も一緒ならあったかもしれないけど。
「ごめんなさい、その日は私仕事です」
「そうなの? じゃあ勝平さんだけでも」
「僕が一緒じゃそれほど遠出出来ないでしょ? だから気にせず二人で行ってきてください」
「……じゃあ朋也、詳しい事はまた後で決めましょう」
「おぅ」
意外と乗り気な杏に面食らいながらも、俺は後ろで嬉しそうにしている勝平と椋に軽い睨みを利かせておいた。こうなる事を狙ってた癖に、白々しかったからだ。
デート風景が想像出来ない……