仕事から帰ってきたら、部屋で勝平さんとお姉ちゃんがグダグダしていた。どうやら岡崎君はいないらしい。
「ただいま」
「あっ、椋……お帰り」
「お姉ちゃん、今日は岡崎君とお出かけじゃなかったの?」
「それが気分悪くなっちゃって……ここら辺をブラブラしただけで、途中から勝平さんも一緒に歩いてただけよ」
「勝平さんも?」
今日はノンビリ過ごすって聞いてたけど、勝平さんお出かけしたんだ。
「二人の様子が気になってね。こっそりと後をつける予定だったんだけど、すぐ朋也君に見つかっちゃってさ」
「岡崎君は視野が広いですからね。簡単に見つかっちゃいますよね」
実際高校時代に遊び半分で後をつけたらすぐに見つかっちゃいましたし。
「それはアンタや勝平さんがどんくさいからでしょ。朋也はそんなに感が鋭い方じゃ無いと思うけど」
「普段は鋭かったじゃん。恋愛関係には確かに鈍かったけど」
高校時代、岡崎君の事を好いていた女子は結構多かったのだが、不良というレッテルと、岡崎君自身の鈍感さでついに誰とも付き合わずに岡崎君は卒業してしまったのだ。
「大体、朋也が誰かと付き合ってくれてれば、あたしだって何時までも引きずる事も無かったのに」
「岡崎君に普通に話しかけられる女子は少なかったから。それに、岡崎君はあんまり興味なさそうだったし」
「そうだね。何時も春原君をいじめて遊んでたりしてたもんね」
岡崎君と知り合ったばかりの勝平さんですら、当時すでに岡崎君と春原君が対等な友人関係では無い事に気づいていたのだ。まぁ、本当に仲が良いからあんな事も出来てたんでしょうけどもね。
「違うわよ、勝平さん。アイツは苛めてたんじゃなくってパシってただけよ」
「どう違うんですか?」
「友達だから、冗談で済むような事しかアイツはやって無いわよ。本当に苛めるようなヤツなら、さすがに陽平だって朋也とつるんだりしなかったでしょうし」
「そう言えば、岡崎君って怒ると怖いけど理不尽に怒ったりはしなかったもんね」
高二の時、私がお姉ちゃんと間違えられて出場した球技大会の試合で、私がヘマして転んで周りが笑った時も、岡崎君はその笑った人たちを一睨みし、私を心配してくれた。もし本当に不良だったのなら、あんな事はしてくれなかったのかもしれないしね。
「朋也君って怒るんだ」
「怒るわよ。確かに怒ると怖いけど、あたしたちには怒った事は無いわね、そう言えば……注意とかはされたけども」
「お姉ちゃん、委員長だったのにサボったりしてたからね」
「お互い様だったのよ? それなのに朋也はあたしを注意するんだもん」
「お姉ちゃんまで不良だと思われるのを避けようとしてたんじゃないの? 岡崎君だって遅刻やサボりなどで不良だって思われてたんだし」
「……そういえばそうよね。普通の高校ならそんなの全然不良じゃないし」
今頃になって気が付いたようで、お姉ちゃんは納得したように手を打ちました。
「よく考えれば、あたしも不良だって思われても仕方ないような生活をしてたのね……」
「それにお姉ちゃんは岡崎君や春原君と普通に話してたし」
「だって別に遠慮するような相手じゃないし」
「そうかもしれないけど、他の人は話しかけられなかったし」
男子は少しくらいは話しかける人がいたけど、女子であの二人に話しかけられる人は多く無かった。むしろ殆どいなかった。
「だいたいねーアイツらを怖がる理由が分からないのよね」
「春原君は見た目から敬遠されてたし、岡崎君は普段から寝不足で細目がちだったからね」
「今は少しましになってるからね」
社会人になり、規則正しい生活をしているから今の岡崎君は高校時代より怖さを感じない。もともと私たち姉妹は岡崎君の事を「怖い」と思った事は無いんですけどね。
意外とビビりな杏をくっつけるのは大変です……