朋也と出かけてから暫く経ったある日、携帯がメール着信を告げる。メロディからして仕事先とか同僚からではない。
「誰、こんな時間に……」
まだ朝と呼ぶには暗すぎる時間だ。普通なら誰が相手だろうと半ギレして返信しても怒られないだろうと考える時間だ。
「えっと……朋也!?」
メール差出人を確認して、あたしは大声を上げて飛び上がった。まさか朋也からメールが来るとは思って無かったからだ。
「いったい何の用なのかしら……」
興味津津ながらも少しビクビクしながら、あたしはメールを開いた。
「えっと……今日の午後、二人で何処かに行かないか。これってひょっとして……」
デートのお誘い?
今日は日曜で確かに予定は空いている。でもいきなり言われても心の準備とか色々あるのよね……でも朋也は深い意味は無く誘ってるのかもしれないし……
「って! 年頃の女性をなんの意味もなく誘う訳無いわよね……」
朋也だって男だ。下心皆無で近づいてくる訳無いわよね……これが陽平とかだったら一発で下心アリと判断出来るのに……
「えっととりあえずは……」
速攻で顔を洗い着替えを済ませたあたしは、相談する為に椋の家へと急いだ。確か昨日は早番で、今朝は家にいるはずだしね。
まだ少し暗い時間に目が覚めた僕は、椋さんが起きるより早くに朝食の準備を終わらせるためにキッチンへと向かう。ここ最近朋也君や杏さんに教わって少しは料理が出来るようになったのだ。
「まぁ、二人に比べるとまだまだ何だけどね……」
誰に聞かせるでも無い呟きをこぼして、僕は調理を開始する事にした――のだが、外に人の影が見えたのでその手は止まってしまった。
「誰だろう、こんな時間に……?」
早朝とはいえ日曜日だ。こんな時間に訪ねてくる人に心当たりは無い。朋也君はこんな時間に来ないし、杏さんだってまだ寝てるだろうし……
「勝平さん、椋、起きてる?」
「杏さん?」
一応は周りの部屋に気を配ってるようで、小声だったけども僕たちには気を使って無い感じだった。
「ちょっと待って下さいね」
僕は扉のチェーンを外して鍵を開ける。何の用事かは分からないけど、こんな時間に訪ねてくるなんて余程の事なんだろうな。
「えっと……こんな朝早くに何の用ですか?」
「ちょっと急用よ。椋、起きてる?」
「……あれ? お姉ちゃん……何でこんな時間に?」
椋さんが目を覚まして時計に目を向けた。時間を確認してから、今度は杏さんが来た理由を訊ねた。
「と、と、と……」
「と?」
普段ハッキリと物事をいう杏さんが言い淀んでいるのを、僕と椋さんは不思議に思い視線を合わせた。そして杏さんに視線を向けた。
「朋也にデートに誘われた!」
「「……はい?」」
杏さんの発言に、僕と椋さんは揃って声を上げたのだった。
お姉ちゃんの相談を聞きながら、私は呆れながら聞いていた。そもそもまだ眠いので、半分以上寝ながら聞いていた。急に叩き起こされてあまり私には関係ない事を相談されているのだ、興味も失せ舟を漕いでしまうのも仕方ないと思う。
「ちょっと椋! 聞いてるの?」
「う、うん……聞いてるよ」
テキトーに相槌を打っていたのだけども、遂にお姉ちゃんが私が聞いて無いんじゃないかって思いだした。
「こんな時間にデートの誘いなんてどう思う?」
「どうって……普通に予定が空いたからお姉ちゃんを誘ったんじゃないの?」
「そんな簡単に異性を誘えるものなの?」
「岡崎君、高校時代から普通に誘ってたと思うけど」
お姉ちゃんや他の女子と一緒に行動してたりしてたもんね。その行動力は尊敬されていたもんね……主に他の男子から。
「とりあえずお姉ちゃん、こんな時間に来てその事を相談しに来たの?」
「そうよ?」
「……ハァ。お姉ちゃん、さっさと覚悟きめて告白すればいいじゃん。岡崎君だってお姉ちゃんの気持ちに気づいてると思うよ?」
私が呆れながら言ったセリフに、お姉ちゃんは驚いたような顔をしていた。もしかして気づかれて無いって思ってたのだろうか……
ルートでは春原が役に立ったんですけどね……