あれから暫く経ち、世間はお盆休み間近になっていた。あの日から、あたしと朋也は滅多に顔を合わせなくなってしまった……互いに仕事が忙しくなったのと、あたしが朋也と顔を合わせるのを嫌ったからだ。
「ほんと、どうしちゃったんだろう、あたし……」
仕事の帰り道、一人誰に聞かせるでも無いセリフをこぼす。あたしってばもっとサッパリとした性格のつもりだったんだけどな……
「ん、メール? 誰かしら」
最近では滅多になる事の無い携帯が、メールの着信を告げた。あたしは少し面倒だと思いながらも、鞄から携帯を取り出してメールの相手を確認した。
「勝平さん? いったい何の用かしら」
ここ数カ月あの部屋にも寄って無い。だから偶には顔を見せてほしいとかそんな感じの内容だと勝手に解釈して内容を読まずに携帯を鞄の中に戻す。
「家に帰ってから確認すれば良いわよね」
またしても一人呟いて家路を歩く。このメールが後の私の人生を大きく左右する事になるものだと、今のあたしには知る由も無かったのだった……
勝平からメールが着て、その内容を確認して俺は呆れた。
「春原のヤツ、何で俺や杏じゃなく勝平にメールしたんだ?」
その内容とは、お盆の時期に春原がこっちに遊びに来ると言う事だったのだが、先に言ったように、何故勝平にその事をメールしたのかは不明だ。
「だが、もうそんな時期か……」
暫く勝平や椋、杏とも顔を合わせる事も無く仕事していたからな……気づいたら会社内で俺が一番成績が良くなっていたのだ……まぁ元から一位か二位の成績だったのだが、ここ何カ月かはぶっちぎりの一位だ。
「だからって給料が上がる訳じゃないんだけどな……」
今年の給料は既に額が決まっているので、成績が反映されるのは来年の給料から……だから成績上位だからといって今すぐ贅沢が出来るわけでもないのだ。
「そういえば春原のヤツ、仕事出来てるのか?」
高校時代を思い出すだけだが、アイツが何かをちゃんとした事などあっただろうか……勉強、部活、恋、生活態度、何一つまともに出来てたためしが無いように思えるんだが……
「まっ、春原の事だから職場でもパシられてるんだろうけな」
俺はそう結論付けてさっさと家に帰る事にした。ここ最近は勝平や椋のボケを相手にする事も、杏の理不尽な怒りに曝される事も無いのでゆっくりと休む事が出来ているのだ。
「あれはあれで楽しかったけどな」
会おうとすれば何時でも会える。その考えがあの家へ足を向かわせる事を億劫にさせているのだろう。だが、それでも構わない。生きてれば何時でも会えるし、機会があればこうやって集合出来るんだからな。
朋也君と杏さんにメールを送り、僕はホッと一息吐いた。最近は二人とも遊びに来てくれないので、椋さんが仕事の時僕は一人でこの部屋でのんびり、もしくはリハビリの為の散歩をしなけれはならないのだ。
「二人とも働いてるから仕方ないけど、もう少し会いに来てくれてもいいんじゃないかな……」
ちょっと前までは、杏さんは毎日のようにこの部屋に遊びに来てくれてたし、朋也君も週に二、三回は顔を見せてくれていたのに、あの日を境に二人ともこの部屋に顔を見せる事を躊躇ってしまっているのだろう。
「杏さんは兎も角として、朋也君まで来なくなるなんて……ちょっと意外だな」
朋也君は杏さんの気持ちに気づいていながらも気にせず付き合ってたはずなのに、今更恥ずかしくなったとかそんな事は無いと思うんだけどな……
「まぁ、春原君でも役に立つ事はあるんだね」
他の誰かが聞けば、間違いなく酷い事を言ってると思われるだろうけど、朋也君と杏さんの中では春原君はそんな位置づけなのだ。だから僕も似たような評価を春原君にしているのだ。
「折角会えるんだから、朋也君と杏さんの関係が少しでも進展してくれると良いな……もしかしたら、朋也君が僕のお義兄さんになるかもだしね……」
他の人だとあまりピンとこないけど、朋也君となら僕は仲良くやっていける。だって朋也君は僕の数少ない友達なのだから。
次回、再び急展開?