陽平を弄りながら、あたしたちは椋と勝平さんの部屋に向かう。前に陽平も招かれた事がある場所で、特に気を使わなくても良い場所となると、自然と二人の部屋って事になってしまうのだ。
「悪い春原、今から買い出しに行ってくれ」
「何で僕が来る前にしておかなかったんですかね!?」
「えっ? だって春原に買い出しに行かせるために決まってるだろ」
「そうでしたね……貴方、そういう人でしたね」
朋也に買い出しメモを渡されて、陽平はションボリと肩を落としてスーパーへと向かった。
「あっ、陽平、陽平」
「何ですか?」
「これ、追加の買い出しメモね」
「行く前に追加ですか!?」
「別に帰ってきてすぐに渡してあげても良いのよ?」
「杏さんの優しさに感謝します……」
棒泣きしながらあたしからメモを受け取った陽平は、今度こそスーパー目指して歩き始めた。
「お姉ちゃん、春原君に何を頼んだの?」
「ん? 特に必要無いものよ」
「じゃあなんで頼んだの?」
「だって陽平のお金だし、運ぶのも陽平だし」
「うわぁ……」
「お前、相変わらず春原には容赦ないな」
「あったり前でしょー! そういうあんただって陽平をパシってるじゃないの」
「俺は必要なものを頼んだからな」
確かに朋也のメモには、この後必要となる食材や飲み物が書かれていた。
「でも、ある程度はウチにあるよ? 何でわざわざ春原君に買いに行かせたの?」
「だって春原の分は用意してないから。みんなが食べたり飲んだりしてるのに、春原だけ何も無しじゃ可哀想だろうが」
「うわぁ……朋也君も杏さんと大して変わらないよ……」
あたしと朋也が大して変わらない? それは聞き捨てならないわね……
「勝平さん」
「は、はい!」
「あたしは陽平が野宿するのは可哀想だからテントとランプとかを買いに行かせたの。朋也みたいに最初から陽平の分を用意しなかった訳じゃないのよ!」
「結局は野宿だろうが!」
「なによ? テントがあるだけマシでしょ? それともそこら辺に寝かせるっていうの、あんたは?」
「可哀想だと思うなら、お前の部屋に泊めてやればいいだろ」
「冗談じゃないわよ! なんて陽平なんて部屋に招待しなきゃいけないのよ!」
朋也と言い争いながら、二人の部屋に到着した。なお二人はあたしたちの言い合いを聞いて、凄く呆れたような表情をしていたのだった。
「さて、それじゃあ早速料理を作るとするか」
「朋也が作るの? それって人間が食べても大丈夫なものよね?」
「お前だって何度か喰った事あるだろうが! 文句があるなら杏はボタンでも食えばいいだろ」
「何であたしがペットを食べなきゃいけないのよ!」
「だって俺の料理喰いたく無いんだろ?」
あたしと朋也が言い争ってる中、陽平が買い物を終えて部屋にやってきた。
「買ってきたぞー! って!? 何で岡崎と杏が喧嘩してるんだよ!?」
「別に喧嘩じゃないぞ。杏が俺の料理を喰いたくないって言ったからボタンでも食ってろって言っただけだ」
「あたしは自分のペットを食べるなんてあり得ないって言っただけよ!」
あたしと朋也の言い分を聞いて、陽平が頷いた。
「相変わらずお互いに思って無い事を言い合ってるんだねー」
「「あぁん?」」
「ヒィ!? だって杏は岡崎の料理を食べたいんだろ? それなのに反対の事を言っちゃうなんてーツンデレってレベルじゃ無いんじゃ……グフゥ!?」
陽平が余計な事を言い出したので、私は陽平の荷物の中から手頃なものを取り出して投げつけた。相変わらず陽平に物をぶつけるのは快感ね。
「痛いよ! 何で僕は杏に攻撃されなきゃいけないんですかね!?」
「あんたが余計な事を言ったからよ。手加減してあげただけ感謝しなさい」
あたしが陽平に攻撃したおかげで、朋也との言い争いは終わった。その代わり朋也と椋と勝平さんが、私に生温かい視線を向けていた。
実はツンデレってそんなに好きじゃない……