高校時代からずっと思ってる事がある。それは杏が岡崎の事を好きなんじゃないかって事だ。
「なぁ岡崎」
「何だよ?」
「どうして僕のだけ明らかに見た目が違うんですかね?」
「えっ? だって春原だろ? 春原に人間の食べ物を与えたら駄目だって習っただろ?」
「そんな事習うか! 大体僕だって人間です!!」
岡崎にそれとなく探りを入れようとしても、こうやってはぐらかされてしまうし、杏に聞こうものなら辞書なりなんなりが飛んでくるに違いないのだ。
「しょうがないな。春原のもちゃんと作ってやるか」
「初めからそうしろよな!」
「あ? 作ってもらっておいてその態度は無いんじゃねぇか? なんなら本当に残飯でも構わねぇんだけど?」
「ありがとうございます。僕の為にわざわざ料理を作ってくれて」
対等な友人のはずなのに、岡崎のあの目には逆らう事が出来ない。だって右肩が上がらないけど、岡崎はそれなりに喧嘩が強い。腕が使えない分足技が豊富なのだ。
「春原君、こっちきてゆっくりしなよ」
「ありがとう、柊ちゃん……」
「うわぁ、まだそんな呼び方してるのかよ。いい加減勝平って呼べばいいのに」
「まだ傷が癒えないんだよぅ……」
「キモ」
杏が僕と岡崎のやり取りを横から聞いていて、バッサリと僕の事を切り捨てた。
「五月蠅いよ! 好きな相手に素直になr……」
「何か言ったかしら?」
「いえ、何でも無いです……」
ステキな笑顔を浮かべた杏に睨まれて、僕は反撃を諦めて部屋の隅っこに移動して膝を抱えた。
「だいたい彼女もいないあんたに言われたくないわよ」
「お前だって彼氏いないだろうが! ツンデレって言葉で何でもかんでも片付くと思うなよ!」
「どうやらお星さまを見たい様ね、陽平は」
「あ、あの……その手に持ってるのは何でしょうか?」
「何って、見ての通りフライパンよ」
「そ、それで何をするのでしょうか?」
「分からない? あんたを殴るに決まってるでしょ!」
「ヒィ!?」
杏がフライパンを振りかぶったのをみて、僕は頭を護る為に手を頭上に翳した。
「まぁ待て、杏」
「なによ?」
いざ殴ろうとしていた杏を、岡崎が止めてくれた。さすが岡崎! マイベストフレンドだね!
「春原なんて殴ったら、フライパンが駄目になるかもしれないだろ?」
「そうね。もったいないわね、フライパンが」
「あんたら酷いよ! 僕の心配はしてくれないんですかね?」
「「えっ? 当たり前だろ(じゃない)」」
「うわーん! 柊ちゃん、二人が僕の事をいじめるよー!」
慰めてもらおうと柊ちゃんに飛びつこうしたら、何やら固いものが頭にぶつかった。
「イテェ!? 何ですか、いったい?」
確認すると、缶箱の蓋を持った椋ちゃんが僕と柊ちゃんの間に割って入っていた。
「何するの、椋ちゃん?」
「春原君が男色なのは知ってますが……勝平さんは駄目です」
「だから違ぇっての!」
高校時代に岡崎が椋ちゃんにウソを吹き込んでから、椋ちゃんは僕が本当に男色だと勘違いしているのだ。
「へー春原って男色だったのか」
「変態だとは思ってたけど、違うベクトルの変態だったのね」
「あんたらが広めた嘘だろうが! 何てことしてくれたんですかね!?」
主犯と共犯者がしらばっくれた態度を取っているのを見て、僕の堪忍袋の緒が切れた。
「今日という今日はもう許さねぇ。岡崎! 杏! 僕と勝負だ!!」
「「あぁん?」」
「……トランプで」
岡崎と杏に揃って睨まれてしまい、僕はまたヘタレた……あの目には逆らえない、そんな刷り込みが僕の中にあるのかもしれないと思った瞬間だった……
偶には役に立つのに、普段はこんなですし……