朋也君が作ってくれた料理を食べながら、僕たちは乾杯した。ちなみに、僕と朋也君はジュースで、あとの三人はお酒を飲んでいる。
「いやー、まさか岡崎がこんなに料理上手になってるなんてな」
「ほんとよねー。あの朋也がこんなに美味しい料理を作るなんてねー」
「お姉ちゃん、春原君。それは岡崎君の失礼だよ」
アルコールが入ったからか、春原君も杏さんも異様に明るくなっている。さっきまで険悪なムードだった気がするけど、これがお酒の力なのだろうか?
「てか杏、いいかげん岡崎に告白したらどうなんだ? 高校時代から周りにはバレバレだよ?」
「うっさいわねー! あたしだってしたいとは思ってるけど、それで振られたら友達としてもいられなくなっちゃうかもしれないでしょ? だから出来ないのよ」
「お姉ちゃんは意外と小心者だからね」
「椋、あとで覚えてなさいよね。お風呂でその胸、揉みしだいてあげるんだから」
「うひょー! 僕もみたいですね、その光景」
まだそれほど飲んでないはずなのに、三人は盛大に酔っ払っている。杏さんに至っては、朋也君が側にいる事を完全に失念している様子だった。
「勝平、俺は帰るな」
「えっ? 朋也君、何で帰っちゃうの?」
「正気に戻った時、俺がいたら拙いだろ」
「でも……僕一人じゃこの三人を相手に出来ないんだけど」
何とも情けない理由だが、酔っ払った杏さんや椋さんを介抱するのは、僕よりも朋也君の方が上手だ。それに、春原君には何となく近づきたくないし……
「そこら辺に転がしとけばいいだろ。春原が買って来たテントにでもくるんどけば問題無いだろ」
「組み立て無くて良いの?」
「そこまでしてやる義理なんざネェよ。風邪さえ引かなければ別に文句も言わねぇだろ」
朋也君はそう言って立ち上がり、本当に部屋から出て行ってしまった……
「だいたいねー、陽平が邪魔しなきゃあたしと朋也は二人っきりになれたのよ?」
「気を利かせようとしても、貴女が逃がさなかったんじゃなかったですかね?」
「お姉ちゃん、二人っきりになった途端に逃げ出しそうだし」
「それはあったかもねー」
「「「あははははは」」」
この酔っ払い三人衆を、僕一人でどうしろというのさ……朋也君、お願いだから帰ってきて……
目が覚めると、側には椋と陽平が転がっていた。
「何であたしの側に陽平がいるのよ!」
「ゲバァ!? 何事ですか……」
あたしに蹴られて陽平が目を覚ました。良く見れば少し離れた場所に勝平さんが寝ている……そうか、昨日はお酒を飲んで何か言って盛り上がってたんだっけ……
「ねぇ陽平」
「何でしょう?」
「昨日、あたしたちって何話してたっけ?」
そう訊ねると、陽平も首を傾げて会話の内容を思い出そうとしている。
「確か、岡崎の料理が上手いって話をして……その後は覚えてないや」
「あー確かに朋也の料理が……って、その朋也は?」
部屋を見渡しても朋也の姿は無い。それどころかテーブルの上には、昨日の惨状を物語るように空き缶や空き瓶が転がっている。
「帰ったんじゃないの? 岡崎はこの部屋に泊まらないんだろ?」
「てか、何であんたがこの部屋にいるのかしら? 何のためにテントを買ったのよ、あんたは」
「一緒に飲んで盛り上がった相手に失礼じゃないですかね!?」
「うーん……二人とも五月蠅い」
目を擦りながら勝平さんが起き上がった。どうやらあたしたちの声が五月蠅かったらしく、勝平さんには珍しく、あたしに対してもタメ口だった。
「勝平さん、朋也は? それと、あたしたちって昨日何の話をしてた?」
「一気に質問しないでくださいよ……えっと、朋也君なら昨日の内に帰りましたよ。それと、なにを話してたかは聞かない方が良いと思います」
「気になる言い方しないでよ。聞きたくなるでしょ」
「じゃあ言いますけど、杏さんが朋也君を好き、って話をしてましたよ」
「………」
それってつまり、朋也にも聞かれたって事よね……
「陽平」
「なに?」
「とりあえず殴らせなさい
「意味が分からないよ!」
陽平を殴って気持ちを整理しようとしたけど、まったく意味は無かった。どうしよう……今日も朋也はここに来るのよね……どんな顔して会えばいいって言うのよ、まったく!
春原じゃないけど、いい加減くっついても良いと思う……