お姉ちゃんがついに決心をしてくれたので、私と勝平さんは早くその瞬間が訪れないかと楽しみにしていた。その瞬間が近づくにつれて、お姉ちゃんの挙動がおかしくなっていっているのだけど……
「さっきから杏のヤツおかしくない?」
「誰がおかしいって!」
「ゲバァ!? だってうろうろしたり立ったり座ったりを繰り返してるし……」
「挙動がおかしいって言いなさいよね! ホント、アンタって表現の仕方がおかしいわよね。良く卒業出来たわね。もしかして親に頼んでお金でも積んだの?」
「そんな事してねぇよ! そもそも岡崎だって似たような感じだろ?」
「朋也はまともに授業に出て無かったけど、赤点は無かったわよ」
「そう言われれば……」
自分と岡崎君の差に気がついた春原君は、その場でゴロゴロと転がり始めました。ずっと岡崎君と行動を共にしてたのに、岡崎君の成績の事は知らなかったんだ。
「あーもう! 鬱陶しいからどっか行きなさいよね! てか、そのまま帰ってこなくても良いわよ」
「なんでだよ! さっきまでお前の行動の方が鬱陶しかったんだぞ!」
「へー。陽平、アンタやっぱり海まで漂流したいようね」
漸く解放されたばかりなのに、春原君は再び素巻きにされてしまった。
「お前ら五月蠅い」
「あたしは悪くないわよ! 悪いのは全て陽平よ」
「半分以上はお前だよね!? 僕だけが悪いわけじゃねぇよ!」
「……春原、お前五月蠅い。少し黙ってろ」
そういって岡崎君は、どこからか持ってきたガムテープで春原君の口を塞ぎました。
「もがー! もがもが!」
「え、なに? 鼻も塞いでほしいって?」
「それなら洗濯バサミがあるわよ」
「むがーー!」
岡崎君とお姉ちゃんのコンビネーションの良さに、私と勝平さんは互いに向かい合い頷きました。この二人ならきっと上手くいくんだろうな、って感想を私と勝平さんは同時に抱いたのです。春原君の生死はとりあえず横に置いて……
杏と春原を弄り倒して、それに飽きたので春原は放置した。その後すぐに料理が完成したので、とりあえず四人で昼食にする事にしたのだ。
「ねぇ朋也君……さすがに春原君が可哀想だよ」
「大丈夫だ、勝平。あいつは存在自体が可哀想だから」
「そうだけどさ……ほら、さっきから棒泣きしてるから解放してあげようよ」
「お前も何気に酷いよな……」
「え?」
勝平の腹黒さは昔から知ってはいたが、やっぱり普段からハッキリと物を言うやつが春原の存在を可哀想だと判断したんだから、春原が泣いても仕方ないよな。
「ほら、春原。可哀想だから飯を恵んでやる」
「お前ら、僕の事何だと思ってるんだよ!」
「バカだなー。言わなきゃ分からないか?」
「そうだよね! 友達だよね!」
「ふざけるな! 誰が友達だ!」
「えっ!? 違うんですか?」
「お前なんて友達だなんて思った事ないわ」
「酷い……」
何時か似たようなやり取りをした記憶があるが、あの時と同じような反応を春原は見せた。ホント、こいつは変わらないな……
「嘘だよ。お前は親友(笑)だよ」
「カッコの中身! それはいらないよね!?」
「良いじゃない。親友(下僕)じゃないだけ」
「それも悪いけど(笑)も酷いよね!?」
「じゃあ、親友(自称)にしとくか?」
「どっちも嫌だよ!」
高望みをする春原に、俺と杏の冷たい眼差しが突き刺さる。それだけで春原は泣き出してしまった。
「さてと……朋也、ご飯が終わったら話があるの。少し付き合ってよね」
「今じゃダメなのか?」
「ダメ! 心の準備ってものがあるのよ!」
「はぁ……まぁ分かった」
何の用件なのかは、何となく分かってるが、ここはあえて気づいて無いフリをするのが得策だろう。だって知られてるって分かったら杏のヤツ、何をしでかすか分からないからな……
春原が輝いている……さすが弄られキャラ