杏と二人で出かける予定だったのだが、何時の間にか勝平と椋を巻き込んだダブルデートに変更されていた。どうせ杏が誘ったのだろうし、当日になって帰れとも言えなかったので、俺はそのまま勝平たちと出かける事にした……のだが――
「杏のやつ、また遅刻か?」
――肝心の杏がまだ待ち合わせ場所に姿を現さないのだ。
「まあままおかざ……朋也お義兄さん、お姉ちゃんにも色々と準備があるんですよ」
「椋、呼びにくいんなら今まで通りで構わないぞ」
「でも、お姉ちゃんに怒られそうですし……」
「呼び方なんて、そうすぐに変えられる訳じゃないんだし、杏も許してくれるだろうさ」
俺だって散々頼まれて漸く「椋」と呼べるようになったのだし。
「ごめーん、ちょっと遅れちゃったわね」
「別に構わないが、遅れるなら連絡くらいしてほしかったぞ」
「だから謝ったでしょ。男が細かい事気にしちゃダメ!」
「お前が大雑把過ぎるんだろうが……」
俺が言っているのは大人として当然の事だと思うんだが、どうやらこういう事を男が言うのはダメらしい。ホント良く分からんが……
「それじゃあ行きましょ! ほら朋也、おいていくわよ」
「お前が言うセリフじゃねぇだろ!」
遅刻した杏においていかれるなんてなんか納得出来ないし、そもそも俺とお前が一緒に出かけるからデートなのであって、俺をおいていったらタダのお邪魔虫にしかならないだろ……
椋と勝平さんを巻き込んだおかげで、今日のデートは緊張する事無く過ごせた。もちろん、別行動をした時もあったけども、椋と勝平さんがいると思えばそれ程緊張する事無く朋也と二人っきりで過ごせたのだ。
「それにしても、良かったの? 僕たちまで朋也君に奢ってもらっちゃって」
「気にしないの。朋也だって稼いでるんだし、未来の義妹夫婦に奢るのは当然でしょ」
「別に良いけどよ……何でお前が偉そうに威張るんだよ」
あたしが買った服とか色々と持っている朋也が、あたしのことを半目で睨んできているけど、今はそんな事は気にならないくらい気分が良い。だから朋也の反論は黙殺したのだった。
「それじゃ、椋たちの部屋に帰りましょ。ほら朋也、きびきび歩く」
「お前は……」
「朋也君、僕も持つよ」
「いや、別に重いわけじゃねぇから……勝平だって椋の荷物持ってるんだし、気にするな」
何やら男二人で話しているけど、あたしには関係なさそうだったので椋とおしゃべりに興じる事にしたのだ。
「楽しかったわね」
「うん。あまり遠出する機会も無かったから、今日は誘ってもらえて良かったよ」
「あれだけ歩けるなら、勝平さんもそろそろ大丈夫かしらね?」
「どうだろう。一応は歩けるけど、長時間動き続けるのはまだ苦しそうだよ」
「そうなの? まぁ看護師の椋が言うんだからそれが正しいんでしょうけどね」
勝平さんが完全に復活して、仕事でも始めれば二人の関係も更に発展するかもしれないものね。
「そう言えば二人とも、子供はどうするの?」
何気なく聞いた質問に、椋と勝平さんの顔が一瞬で真っ赤になる。
「えっ、なに? 何で赤くなるのよ」
「お前……往来の場所で何を聞いてるんだ」
「へっ? 別に子供をどうするかなんて、聞かれても問題は……」
そこまで言って、自分がとんでもない地雷を踏んだ事に気がついた。この二人の純情ぶり、そしてこうなった後どんな行動を取るのかが分かっていたのに、その事を完全に失念してしまっていたのだ。
「私、先に行くね!」
「僕も! 朋也君、ゴメン! これもお願い!」
「お、おい! ……杏、お前も持てよな」
「分かってるわよ……」
勝平さんに押し付けられた荷物の半分を、朋也があたしに突き出した。さすがにあたしでも今のはあたしが悪いって分かるので、素直に椋の荷物を持って歩く事にしたのだった。
成長しても相変わらず、なんですね……