朋也君と杏さんが付き合いだして暫くは、僕や椋さんをも巻き込んだダブルデートが多かったのだけども、今では自然に二人きりで出かけられるようになったらしい。そのせいか、最近では朋也君と杏さんの二人と顔を合わせる機会が減ってしまっている。
「勝平さん、今日こそは上手く出来たはずです」
「どれどれ……う、うん……美味しいよ?」
二人が遊びに来ていた時には、杏さんの差し入れや朋也君が作ってくれた料理でご飯を済ます事が多かったけど、最近では時間をみつけては椋さんが料理を作ってくれているのだ。
作ってくれる事自体は凄くうれしいし、愛する奥さんが僕の為だけに料理を作ってくれるのだから、旦那冥利に尽きるというものなのだろう。
だけど椋さんの調理の腕は、未だに改善される事無く、むしろ悪化しているのではないだろうかと思いたいくらい、口に入れた瞬間に泣きたくなるくらいなのだ。
「やっぱり今日もダメですか……」
「いや、大丈夫だから! ちゃんと全部食べるよ」
ここ数日で、確実に僕の胃は強くなっている事だろう。そうじゃ無ければ、僕は既に意識を失っても仕方ないくらいの衝撃を受けているのだから、こうやって起きてるのがおかしいもんね。
「時間があれば、お姉ちゃんか朋也お義兄さんに教えてもらうんですけどね……」
「最近、二人とも忙しいのか遊びに来ないもんね」
杏さんは幼稚園の夏休みが終わり、再び園児たちの相手などで忙しくなってしまい、朋也君は業績が認められてめでたく昇進、管理職へと就いたのだ。その為に残業なども増えてしまい、また後輩たちの指導などもあって毎日ヘロヘロで自宅に帰っていると前にメールを貰った。
「僕も早く仕事を見つけなきゃね」
「まだ一人で遠出するのは難しいので、そこまで急がなくても良いですよ」
「でも、椋さん、杏さん、朋也君が忙しそうにしてるのに、僕だけリハビリをノンビリとやってるのはさ……」
とりあえずは歩けるようになり、補助も必要なくなったけども、それでも手術前と比べると筋力は落ちてしまっているのだ。とりあえずは一人で遠出出来るくらいまでには戻したいんだけど、これがまた大変なのだ。
「朋也お義兄さんのメールでは無いですけど、自分のペースでしっかりと治していかなければダメですよ」
「分かってるよ。ところで椋さん」
「はい、何でしょう勝平さん」
「『お義兄さん』って呼ぶの、随分とスムーズに出来るようになったね」
ついこの前までは、呼ぶ度に閊えてたはずなのに、最近では閊える事無くすんなり呼ぶ事が出来ているような気がする。
「本人を前にしたら、多分まだ閊えるでしょうけども、いない場所で何時までも閊えてたらダメですからね。私もゆっくりと慣れたんでしょう」
「なるほどね。ところで、あの二人は結婚するんだよね?」
「だと思いますよ。お姉ちゃんはずっと朋也お義兄さんの事が好きだったんですし、したい気持ちは絶対にあると断言出来ます」
「朋也君の方も、いい加減結婚しても良いとは思ってるだろうしね」
高校を卒業してからまともな出会いが無い、と前に聞いた事があるし、二人の相性はバッチリだからしてもおかしくないと僕も思うけどね。
「でも当分は忙しそうですけどね、お姉ちゃんもお義兄さんも」
「仕事が忙しいのは良い事だと思うよ。僕みたいに家で暇を持て余してるより、全然」
「もう少しで許可は出るでしょうし、あと少しの辛抱ですよ」
椋さんにそう励まされて、僕は椋さんを伴って病院へと向かう事にした。一人でも問題なく行けるのだけども、椋さんが休みの日はこうして付き添ってもらうのだ。だって何時までも二人で出かけられる時間があるわけでもないのだから、こういうったチャンスを存分に生かすと決めたのだから。
メインがどっちか分からなくなってきた……