僕のリハビリも順調に進み、いよいよ働いても大丈夫なくらいまで回復したある日、朋也君から一通のメールが届いた。
「重大な話があるから、今日お前たちの部屋に行く」
そう書かれたメールを何度も読み返したけど、そこから話の内容を推理するのは僕には出来なかった。それに、久しぶりに朋也君が僕たちの部屋を訪れてくれるのだ。理由は何であってもこれは嬉しい事だ。
「あのダブルデート以降、朋也君とは会ってないからね」
仕事が忙しいのと、杏さんの相手で朋也君の時間は更に忙しさを極め、僕たちに会いに来る余裕が無くなってしまっていたのだ。
「僕の方も伝えたい事が出来たし、丁度いいタイミングだったな」
漸く働いてもいいという許可が出たのだ。朋也君に報告しようと思ってたタイミングでメールが着たので、僕は手間が省けたのと、朋也君からも報告があるという事に驚きを覚えたのだった。
「とりあえず、椋さんにも報告しておかなきゃね。今日は非番で部屋にいるだろうし」
僕のリハビリの結果と、朋也君が来るという二つの報告を持って、僕は自分の家までの道のりを少し浮かれながら歩く。こんな気持ちで歩けるのは何時以来なんだろうな? 少なくとも、僕の病気が発覚してからはこんな気分にはなれなかったと思うけど……
「いや、朋也君や椋さんと出会ってからは、少し病気の事を忘れられてたんだっけ」
あの頃は、僕にとって未来など無いとうつ向いていた時期だったんだ。そんな時、杏さんのバイクに撥ねられて椋さんと出会い、そして朋也君と出会ったのだ。
普通バイクに撥ねられたなどという出来事は、人生の中でも最悪な出来事に部類されるだろうけども、僕の場合は、そのおかげで人生のパートナーと出会い、親友と呼べる相手と出会う事が出来たのだ。人生、何が良い影響をもたらすか分からない、まさにそんな感じだった。
夕方になり、朋也君が部屋にやってきた。その横には杏さんもいる。どうやら重大な話というのは、二人に関係している事らしい。
「まずは、久しぶりだな」
「そうだね。もう結構会って無かったもんね」
「俺も杏も、そして椋も仕事で忙しかったし、勝平もリハビリがあったからな」
「そうだね。でも、僕のリハビリは一先ず忙しさは無くなるよ」
「どういう事?」
僕の切り返しに、朋也君ではなく杏さんが首を傾げた。朋也君の方は、何となく僕の答えに想像がついているようだった。
「今日、担当の先生に働いても良いって言われたんだ。もちろんリハビリはまだ続けて行くけども、とりあえずは一区切り、って事」
「そうだったんだ、おめでとう、勝平さん。椋も良かったわね」
「勝平さんが頑張った結果だよ、お姉ちゃん」
杏さんの言葉に、椋さんが目を押さえながら答えた。まさか泣いてくれるとは思ってなかったから、僕もつられて泣きそうになってしまった。
「なんだ、椋にも言ってなかったのか?」
「ううん、一応先に伝えたんだけど、また感動してくれたみたい」
「……それで、何でお前まで泣きそうになってるだよ」
朋也君に呆れたのを隠そうともしない声色でツッコまれて、僕は少し慌てた。
「と、ところでさ! 朋也君の重大な話ってのはなに?」
「何か誤魔化してるような気もするが……まぁいいか」
追及するのもバカらしくなったのか、朋也君は咳払いを一つしてから正面を向きなおした。その表情につられるように、僕と椋さんも居住まいを正した。
「今日、籍を入れた」
「……えっ?」
「だから、杏と結婚したって言ったんだよ」
「………ええっ!?」
「反応遅いな……」
実を言うと、僕以外反応出来なかったのだ。杏さんは照れて顔を真っ赤にしてるし、椋さんはフリーズしたまま再起動出来てなかったから。
「とにかくそういう事だ。これからもよろしくな」
「本当に朋也君がお義兄ちゃんになったんだね」
「言っとくが、年齢はお前の方が上なんだからな」
「分かってるよ、朋也お義兄ちゃん!」
「何かムカつく……」
こうして、僕と朋也君の間には、新たな絆が誕生したのだった。これから先、色々とあるだろうけども、この絆が無くならないように願いたいな。
それほど付き合っては無いですが、この二人ならこのくらいでも行けるかなーって事で