お姉ちゃんと朋也お義兄さんが籍を入れたという事で、私と勝平さんはささやかながらお祝いをする事にした。折角の機会だから、私も料理を作ろうとしたのだけど、三人に全力で止められてしまった……そりゃ、私の料理の腕は酷いですけど、そこまで全力で止めること無いじゃないですか……
「本当に朋也君が僕の義兄になるなんて思わなかったよ」
「そうだな。初めて会った時は、ここまで親密な関係になるとは思ってなかったな」
「運命の出会い、って本当にあるんだね」
「何だか気持ち悪い勘違いをしそうな言い方だが、確かにあれは運命的だったな」
そういって朋也お義兄さんはお姉ちゃんの方に視線をずらした。それにつられるように、お姉ちゃんも視線を逸らしている。
「これでこの部屋にいてもおかしく無くなったね」
「別におかしいなんて思ってないが、前よりはいやすくはなったな」
「アンタが遠慮しすぎだっただけでしょ? アタシは前からいやすかったけどね」
「あのな……夫婦の――しかも漸く新婚生活を送れるようになった妹夫婦の部屋に姉が居座ってたらどう思う? 邪魔だろ? 少しは遠慮しろって思ってたんだが」
「別にいいでしょ! 椋はアタシの実妹なんだから!」
こういったやり取りは相変わらずのようだけど、前より楽しそうに見えるのはきっと気のせいじゃ無いはず。だってお姉ちゃんもお義兄さんも笑ってるんだもん。
「ところで、二人は結婚式はどうするの?」
「そうだよ。僕たちみたいな事情があるわけじゃないんだし、二人はしっかりと式を挙げなよ」
「そうは言ってもな……」
「時間も無いし、それにアンタたち夫婦より先に式を挙げるのは……ね」
二人とも遠慮してるのか、私たち夫婦の事を優先的に考えてくれている。その事は嬉しいけど、私たち夫婦がお姉ちゃんたちの邪魔をしていると思うといたたまれない気持ちになってきてしまう。
「そういえば勝平、お前仕事見つかったのか?」
「えっ? まだだけど」
「知り合いの会社で事務員を探してるんだが、お前パソコンとか使えるよな?」
「一応は……でも、僕みたいな人材で良いのかな?」
「問題ない。計算出来れば猫でも猿でも良いって言ってたし」
「……随分と人材不足なんだね、その会社」
お義兄さんが勝平さんに仕事を紹介してくれている横で、私とお姉ちゃんは姉妹の会話をしていた。
「これでアタシも『藤林』じゃなくなったわね」
「これからは『岡崎先生』って言われるのかな?」
「ずっと『杏先生』って呼ばれてたから、子供たちは問題ないわね。ただ先生たちは『藤林先生』って呼んでるからね……そっちは少し混乱しそうね」
「結婚したんだから仕方ないけど、暫くは旧姓でも良いんじゃない? 私はすぐ『柊』姓に変えたけど」
一緒にいられる時間が少なかったので、せめてもの繋がりを持とうとすぐに『藤林』姓から『柊』姓に変えたのだ。そのおかげなのか、同僚にはかなりからかわれたんだけど……
「まっ、それは園長先生と相談して決めるわ。それよりも、奥さんの先輩として、色々と教えてほしいんだけど」
「……何か教えるような事があるの?」
別段特別な事はしてないんだけどな……
「ほら、夜はどっちから求めるの、とか」
「………?」
お姉ちゃんが言ってる事の意味が分からず、私は数秒考え込む。そして、その答えに行きついた時、私は自分の顔から火が出るんじゃないかと思うくらいの熱を感じたのだ。
「そんなの知らないよ!」
「っ、どうしたんだ、椋?」
「あっ……えっと、何でも無いです、お義兄さん」
「そ、そうか」
離れたところにいたお義兄さんに驚かれてしまったけど、こんな事話せないので誤魔化す事にした。
「とにかく、そんな事は私には分からないよ」
「そっか……二人とも奥手そうだもんね」
お姉ちゃんが何か納得したように頷いたけども、私はそれに反論するだけの気力も度胸も無かった、だって、反論しても墓穴を掘るだけな気がしてならなかったのだもの……
「だいたい、お姉ちゃんも求めるような事はしないでしょ?」
「……かもね」
せめてもの反論をして、私はお姉ちゃんとの会話を終わらせた。向こうも終わったようだし、漸くお祝いを始められるのだった。
姉妹でもその質問は無いな~……