先に椋たちの部屋に向かっていた朋也が用意してくれた料理で、あたしたちは夕食を済ます事にした。明日は全員休みだし、今日くらいは呑んでもいいわよね。
「だからー最近忙しいのは結婚したからなのよー」
「そうなの? 私は別に忙しくならなかったけど」
「椋の場合は相手が勝平さんだからよー。旦那が入院患者としているんだから、見に行こうとすれば幾らでも見に行けるでしょ」
「うん、確かに暫く色々な看護師さんが僕の病室に来てた」
「でしょ? でもあたしの場合は朋也がすぐそばにいるわけでもないし、どんなヤツなのか質問責めに遭って全然仕事がはかどらないのよ」
主に先生たちからの質問責めなのよね。偶に子供たちからも聞かれるけど、先生たちの質問に比べたら優しいものなのよ。
「それって俺の所為なのか? ただの好奇心だと思うんだが」
「バカねー、アンタは一回ウチの幼稚園に来た事があるのよー? 園長先生が口を滑らせちゃって大変だったんだからー」
園長先生がアタシの苗字を聞いて――
「岡崎さんって前に冷蔵庫の修理に来た?」
――と呟いた時の先生たちの目は、アタシでも怖いと思うくらい光っていた。
「よく覚えてるな、あの人。たった一回しか顔を合わせてないのに」
「どうでもいい事は覚えてるのよ。大事な事はしょっちゅう忘れてるくせに」
「本人の前では言うなよ」
「わかってるわよ!」
言いたくても言えないんだから、本人がいないこの場所で言うくらい良いじゃないの! 朋也も固いところがあるんだから、まったく。
「そうだ、お姉ちゃん」
「んー? 何よ、椋」
「お母さんからメールなんだけど」
「お母さんから?」
「うん。私たちの事もなんだけど、お姉ちゃんたちの事も聞いて来たから」
それなら直接アタシにメールしてくれれば良いのに……お母さんも面倒くさがりなところがあるから、椋たちの近況を聞くついでにアタシたちの事も聞いて来たんだろうな。
「それで? お母さんはなんて言ってきたのよ」
「うん……『結婚式はしないのか?』って」
「結婚式かー……暇が無いのよねー」
「私たちはお金が無かったからしなかったけど、お姉ちゃんたちはそれなりに蓄えもあるでしょ? どこかでしないの?」
「籍は入れたし、アタシも朋也も呼ぶような友人も少ないしねー」
「会社に報告して終わりだったな、俺も」
「アタシも報告しておしまい。根掘り葉掘り聞かれたけどね」
今までろくに付き合ってる男の匂いもしなかったアタシが、いきなり結婚の報告をすれば仕方ないのかもしれないけど、あの勢いは驚いたわよ……
「でも、お母さんもお父さんもお姉ちゃんの花嫁姿は見たいと思ってるんじゃない?」
「それは椋も一緒でしょー? アンタたちの方が先に結婚してるんだから、アンタこそ花嫁姿を見せてあげるべきなんじゃないのー?」
お金がどうこう言ってるけど、それくらいならもう問題なさそうに思える。勝平さんも働きだしたし、椋に関しては既に結構な貯金があるはずだし。
「親族だけですれば、それほど金は掛らないと思うぞ。勝平は施設出身だし、俺は親族と呼べる相手なんてオヤジくらいだ。まぁ、疎遠になって今どうしてるかは知らないがな」
「じゃあ貸衣装で写真を撮りましょうよ。前からアンタたちが計画していたのに、アタシたちも同行するからさ。料金は朋也が立て替えてくれるから」
「おいっ! ……まぁそれくらいならいいか」
初めは声を荒げた朋也だったけど、何を思ったのかすぐに了承してくれた。
「結婚祝い、してなかったしな」
「それはお互い様じゃ……」
「義弟が気にするな。それくらいの蓄えなら、俺にだってあるんだ」
「……何時か返すからね」
「期待しないで待ってるさ」
こうして、アタシたち夫婦と椋たち夫婦で貸衣装を着て写真を撮る事が決定した。まぁ、日程とかは未定なんだけどね……
この四人はほのぼのします