勝平アフター   作:猫林13世

6 / 56
彼の扱いは相変わらず……そしてコンビネーションも


退院祝い

 僕の退院祝いをするために、春原君を含めたメンバーは椋さんの部屋に集合した。

 

「そういえば陽平、あんた仕事だったのに良くこの時間に来れたわね」

 

「半休取ったんだよ! だいたい杏と岡崎がそうしろって言ったんだろ!?」

 

「「えっ、そんなこと言ったっけ?」」

 

「あんたら似すぎ! 高校の頃から変わってねぇよ! この似たもの夫婦!」

 

「「あぁん?」」

 

「ヒィ!?」

 

 

 春原君が朋也君と杏さんに睨まれて竦み上がった。あの眼光は確かに怖いよね。

 

「お姉ちゃんも岡崎君も春原君も変わってないね。高校の時のままだよ」

 

「椋ちゃんも変わってないよね……」

 

 

 春原君は椋さんの事を名前で呼んだ。朋也君は遠慮して苗字で呼んでいたけど、春原君は無遠慮なんだな。

 

「それじゃ、さっそく呑むわよ! 陽平、お酒買ってきて」

 

「僕が!? 普通先に用意してるもんじゃないの!?」

 

「春原」

 

 

 興奮した春原君の肩を朋也君が叩く。落ち着けとでも言うのだろうか?

 

「止めるな岡崎! 僕はこの暴君を倒し平和を手に入れるんだ!」

 

「俺ビールな」

 

「って! お前も僕をパシるんですか!?」

 

「「当然」」

 

「うわぁーん! 上下関係なんて、大っ嫌いだー!!」

 

「……あいつ、財布置いていったぞ」

 

「じゃ、今のうちに陽平のお金でお酒でも買いに行きましょうか」

 

「お姉ちゃん……」

 

 

 杏さんの冗談とも取れない感じに、椋さんが冷めた目を向けた。

 

「いやーね、冗談にきまってるでしょ。だいたいお酒なら、すでに冷蔵庫の中で冷やしてるんだから」

 

「……お前、ほんと変わってないよな」

 

「なによ! アンタだって陽平からかって遊んだでしょ」

 

「まぁな」

 

 

 杏さんと朋也君が笑いあって、それにつられて僕と椋さんも笑った。こうして笑えるくらいに僕は回復したんだって、改めて実感出来た。

 

「岡崎! 財布落とした! ……って! もう酒飲んでるし!?」

 

「お帰り。お前の財布ならここに落ちてたから、俺と杏で一割もらっといたぞ」

 

「ちょっー!? 何勝手に取ってるんだよ!」

 

「冗談に決まってるだろ? だいたい千円しか入ってない財布なんていらねぇよ」

 

 

 春原君……なんでそれしか入ってないのさ。

 

「そんなことないだろ!? ちゃんと五千円入って……ない!」

 

「まぁ呑めって。呑んで忘れちゃえ」

 

 

 朋也君が春原君にお酒を注いで呑ませる。ちなみに五千円は最初から入っていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春原君が酔いつぶれて、僕たちは生温かい目で春原君を見つめていた。

 

「こいつ、なんでこんなに弱いんだ?」

 

「知らないわよ。そもそも陽平が弱いのは昔からでしょ」

 

「そうだったな」

 

「……お酒の話じゃなかったんだ」

 

 

 椋さんが呆れたように二人を見つめていると、朋也君がふと思い出したように僕に言ってきた。

 

「そういえば勝平、お前ちゃんと椋に聞いたのか?」

 

「……まだ」

 

「何々? 何の話?」

 

 

 酔っぱらった杏さんが朋也君の肩に自分の腕を回してくっつく。朋也君は鬱陶しそうにその腕を払い、椋さんに杏さんの相手を任せた。

 

「はやいとこ言っちまわないとどんどんタイミングを失うぞ」

 

「そうは言ってもさぁ……」

 

 

 ついこの間まで入院していた僕に、結婚式を挙げられるようなお金はない。さすがにそこまで椋さんに出してもらうのは間違ってるだろうし……

 

「せめてドレスくらいは着せてやれよ。写真屋にあるだろ、貸衣装とか」

 

「でも……」

 

「とりあえずちゃんと相談はしろよ? 一人で抱え込むような問題でも無いだろ」

 

 

 朋也君はそれだけ言うと、コップに残っていたビールを一気に飲み干した。

 

「杏はともかくとして、このスノピーは如何するんだ?」

 

「如何するって?」

 

「ここに寝かせておいていいのかって話だよ。杏はまぁ……姉妹だから問題は無いだろうが、こいつは完全なる赤の他人だろ? 泊めるのか?」

 

「もうそんな時間? 結構呑んだんだね」

 

「お前笊か?」

 

「どうだろう? お酒呑んだの初めてだし」

 

 

 そもそも入院してたからなぁ……成人しても外に出る機会なんて無かったし。

 

「椋は……駄目だなありゃ。完全に酔っぱらってる」

 

「うわぁ……」

 

 

 椋さんは、杏さんと一緒に布団に倒れこんで眠ってしまっている。

 

「しゃあないか。この馬鹿は俺の部屋に連れてく。おら、起きろスノピー」

 

「痛い……」

 

 

 春原君を蹴り起こして朋也君は自分の部屋に帰ってしまった。そういえば、僕朋也君が何処に住んでるのか知らないや……

 

「……そういえば、この部屋僕が片付けなきゃいけないのかな?」

 

 

 朋也君は帰っちゃったし、椋さんと杏さんは寝ちゃってるし……

 

「僕の退院祝いなのに、なんで僕が後片付けをしなきゃいけないんだろう……」

 

 

 誰に愚痴るわけでもなくそう呟き、僕は空き缶や空き瓶を片付けるのだった。でもまぁ、楽しかったから良かった。




上下関係なんて、大っ嫌いだー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。