勝平アフター   作:猫林13世

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あのパン屋は伝説だろうな……色々な意味で


伝説のパン屋

 朝から陽平弄りをして遊び、程よい時間になったので四人でお昼を食べに行こうって話になった。

 

「勝平は大丈夫か? なんならコイツに何か買ってこさせるが」

 

「陽平、あたしメロンパンとクロワッサンで良いわよ」

 

「何で僕が買いに行くのが前提なんですかね?」

 

 

 春原君が朋也君と杏さんに文句を言おうとしたけども、二人はそれには付き合わずに話を進めていく。

 

「杏、お前パンで良いのか?」

 

「あんまり食べると吐きそうだしね。それで、朋也は何食べるつもりなの?」

 

「そうだな……テキトーにおにぎりでも買ってこさせるか。春原、俺はそれで。金は立て替えといてくれ」

 

「あっ、あたしも」

 

「お前ら……僕をなんだと思ってるんだよ!」

 

「「えっ? 下僕」」

 

 

 息の合った二人に、春原君は泣きながら部屋から出て行った。

 

「ちくしょー! 似たもの夫婦なんて、大っ嫌いだ―!!」

 

「おい、まだ勝平のリクエスト……って、仕方ないバカだな。それじゃ、食いにでもいくか」

 

「そうね」

 

 

 春原君が出ていってすぐ、朋也君と杏さんが立ち上がった。

 

「えっ、いいの?」

 

「「なにが?」」

 

「だって、春原君が買いに行ってるでしょ?」

 

 

 目の前で春原君が走り去っていったのを、二人も間違いなく見てるはずなんだけどな……

 

「冗談だ。ピザでも頼むか」

 

「そうね。勝平さんもまだ自由に歩ける訳じゃないしね」

 

「やっぱり春原君は無視なんだ……」

 

 

 まぁそれが彼なんだろうけども、二人はホントに息がピッタリだなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朋也君と杏さんが半分ずつお金を払い、僕たちはピザを食べる事にした。そのタイミングで春原君が部屋に戻ってきた。

 

「買ってきたぞ……って! 何でピザなんて頼んでるんだよ! 僕に買いに行かせたのは何だったんだよ!」

 

「「えっ? 暇つぶし」」

 

「アンタらやっぱり似過ぎ! 似たもの夫婦!!」

 

「「あぁん?」」

 

「ヒィ!」

 

「あはあ、朋也君たちのやり取りって昔のままだね」

 

 

 ほんの数週間……一か月くらいかな、僕たちは濃密な時間を過ごしていた。あの時はまだ僕も病気の事を隠してたし、こんな時間が訪れるなんて思ってなかったな。

 

「まぁ春原は買ってきたパンでも食べてろよ」

 

「こんなに食えるか!」

 

「……ねえ、この七色に光るパンって何?」

 

「え? ……あぁ、パン屋のおっさんがお勧めだって言うから買ったんだけど」

 

 

 杏さんの手には、本当に七色に光っているパンが握られている。あれって如何やって光ってるんだろう? それ以前に食べても大丈夫なんだろうか?

 

「よし! じゃあじゃんけんで負けた春原が、このパンを食べるってゲームしようぜ」

 

「いいわね~。じゃあ早速……」

 

「『負けた春原』って、負けた岡崎と杏は!?」

 

「じゃんけん……」

 

「えっ?」

 

「ぽん」

 

 

 春原君がグー、朋也君と杏さんがチョキ。

 

「よっしゃ!」

 

「くそ、じゃんけんぽん!」

 

「よし、連勝!」

 

「早く負けなさいよ。じゃんけんぽん」

 

「如何だ三連勝! って! 僕が負けるまで続けるんですかね?」

 

「「当然」」

 

 

 まぁ負けた春原君がこのパンを食べるんだから、朋也君と杏さんが負けても意味は無いんだけどね。

 

「それってイジメだよね!?」

 

「買った責任って言葉、知ってるか?」

 

「アンタのお金で買ってきたんだものねぇ。もちろんアンタが食べるわよね?」

 

「はい、食べさせていただきます……」

 

 

 二人に睨まれて、春原君は七色に光るパンを口に含んだ。勇気あるなぁ……

 

「うっ……」

 

「春原?」

 

「ちょっと陽平? 大丈夫なの」

 

「……お前にレインボー!」

 

「「はっ?」」

 

「グフ……」

 

 

 奇声を上げたかと思ったら、その後すぐに春原君は白目を剥いて倒れた。

 

「……さて、俺たちはピザでも食うか」

 

「そうね……」

 

 

 二人とも見なかった事にした!?

 

「勝平も食うだろ?」

 

「う、うん……」

 

 

 春原君には申し訳ないけども、僕も今の一連の騒動は無かった事にして食事をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方になってから漸く春原君が意識を取り戻し、明日仕事だからって先に帰る事になった。

 

「じゃあな春原」

 

「たまには遊びに来なさいよ」

 

「絶対来ない! 僕をイジメて遊ぶんだろ、どうせ」

 

「「……えっ?」」

 

「チクショ―! やっぱりアンタら息ピッタリっすね!」

 

 

 最後の最後まで春原君を弄って楽しんでる二人だけど、少し寂しそうに見えるのは僕の間違いじゃないんだろうな。

 

「ほら、これ持って帰れよ」

 

「忘れ物は駄目よ」

 

「ありがとう……って! このパンはもういらないから!」

 

 

 春原君に手渡されたのは七色に光るパン。さっき一つ食べてたのにまだあるんだ……

 

「せっかく買ったんだ。家族にも食べさせてやれよ」

 

「人間じゃ無ければ美味しいんじゃない?」

 

「僕も家族も全員人間だよ! どんな家族想像してるんだよ!」

 

「「えっ? お前(アンタ)みたいの」」

 

 

 最後の最後まで、本当に春原君を弄り倒した二人は、満足したように僕たちの部屋に戻っていく。夜も騒ぐつもりなんだろうか……




アッキーに脅されたら春原は買うしかないよな……
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