ルーサーとアブソリュート、宿屋に宿泊した翌日の朝・・・
「・・・ん、朝か・・・アブソリュートは・・・もう起きていていたか」
朝の日によってルーサーは目覚めた。隣のベッドで寝ていたアブソリュートがいないことから、彼女はどうやらルーサーより先に起きていたようだ。
「アブソリュートはおそらく食堂だろう。俺も朝食を食べるとするか」
ルーサーは着替えを素早くした後、朝食を食べる為、食堂に向かった。
食堂に入ると既にたくさんの人が朝食を食べていたようだ。食堂は朝にも関わらず、既に賑わっている。
「ルーサー!こっちよ!こっちに面白い人がいるわ!」
降りたルーサーに気付いたアブソリュートは、手を降りながら自分の場所を示す。ルーサーは少し苦情しながら、アブソリュートの元へ向かう。よくみればアブソリュートの隣にひとりの老人がいた。
「アブソリュート、少し声が大きくないか?」
「うっ・・・し、仕方ないじゃない。この人が面白いのだから!」
そこまでなのか?と思ったルーサーはその老人を見つめる。
白色の髪、灰色の瞳。顔は確かに老人のそれであった。しかし・・・
それを全て打ち消すほどその灰色の瞳は光っていた。身体全ては老人だが、その瞳だけは若者のように輝いていた。
「ほっほっほ。儂が面白い?それは嬉しいことじゃ!」
老人ははっきりした声で楽しそうに言っていた。
「ね、ねね!ルーサー!聞いてみなさいよ!絶対に面白いから!」
アブソリュートはルーサーに同じ気持ちにさせたいらしい。みればその瞳は老人と同じように輝いていた。
「そ、そこまで言うならば・・・聞いてみるか」
「おおっ!おまえさんも儂の話を聞いてくれるのか!では話そうではないか!まずは儂が15かそこらのくらいの話じゃ
」
アブソリュートの熱意に押され、ルーサーも老人の話を聞くことにした。それを聞いた老人は嬉しそうにしながら喋りだすのであった。
「・・・という訳じゃ。どうじゃったかのう?儂の話は」
「・・・面白いな。というよりじいさん、無茶しすぎだろう」
「ほっほっほ、若気の至りという奴じゃ」
ルーサーとアブソリュートはいつのまにか老人の話を夢中になって聞いていた。老人の話は全て老人の体験談である冒険や失敗談などのものだったが、老人の話し方や言い方によってそれらが全て纏められていたのだ。
「儂の話をこんなに夢中に聞いてくれた者はひさしぶりじゃのう。儂は嬉しいぞ!さて、儂はもう仕事にいかなくてはな」
そう言うと老人は席を立ち、荷物を持つ。
「っと、お別れだな」
「こんな年になっても仕事が出来るって凄いわね・・・」
ルーサーとアブソリュートは仕事に向かうと聞き、この年でも仕事をしていることに大きく驚いていた。
「何、その仕事は儂の生き甲斐じゃからな!身体が動かなくなるまで仕事をやるぞ!」
老人は豪快に笑いながら、荷物をぽんと叩く。
「さらばじゃ!また会おうぞ!」
老人はそう言いながら、宿屋の外へと向かっていった。
「ね?面白い人だったでしょ?」
「そうだな、確かに面白い人だったな」
ルーサーとアブソリュートは先ほどまで話していた老人の感想を言い合う。
「しかしあの老人、何の仕事をしているのだろうな・・・」
「そうね・・・鍛冶屋とか?」
「あ、それはあり得そうだな!そうだったら、きっと良い腕の鍛冶屋だろうな」
「えぇ、間違いないないわ」
老人の感想から老人の仕事について予想する二人・・・その時であった。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
宿屋の外から悲鳴が聞こえたのだ、そしてその悲鳴の声には二人は聞き覚えがあった。
「!、ルーサー・・・今の声!」
「あぁ!さっき話していた老人の声だ!まさか何かあったのか!?」
「ルーサー!外に出ましょう!」
「あぁ!」
二人は席を立ち、急いで宿屋の外へと向かう。
「こ、これは・・・」
「・・・ひどいわね」
宿屋の外に出た際、二人の目に飛び込んできたのは赤い・・・赤い血であった。
その血を辿ると・・・
「ぐ、ぐぅぅぅぅぅぅぅ・・・!」
先ほど話していた老人が腹を押さえながらうずくまっていた。
「・・・ルーサー!」
「分かってる!」
それを見た二人の行動は素早かった。二人は急いで老人の元へ近付き
「・・・じいさん、少し我慢してくれよ・・・?ヒール!」
ルーサーは魔法による治療を開始し。
「痛いけどこれが確実なの。ごめんなさいね・・・マジック・ブースト!」
アブソリュートはルーサーの魔法をさらに強化した。
ルーサーは転生の際、特典で『魔力最大』を希望していた。その為、魔力及びに魔法の才能が極限まであるため。ヒール等などの魔術はお手の物であった。
さらに精霊は魔法自体を当たり前のように使えるため、アブソリュートも魔法による支援が可能だった。
「う、うぅ・・・あ、あんた達は・・」
ルーサーとアブソリュートの治療により、腹からの傷はなくなり。老人はルーサー達を見れるようになっていた。
「いったい何があったんだ?」
老人がこちらに意識を向けるようになったのを確認した後、ルーサーは老人に何があったのかを聞くことにした。
「分からん・・・外に出た後にいきなり刺されたのじゃから・・・」
老人によると外に出た際にいきなり刺されたらしい。老人自身も突然のことであるため、思考が未だに混乱しているようだ
「・・・そういえばおじいちゃん、荷物はどこにあるのかしら?どこにも見当たらないのだけど」
治療を終えた後、周囲を見ていたアブソリュートは老人が宿屋に出るまでは持っていた荷物がないことに気付く。
「な、なんじゃと!?」
その言葉に驚いた老人は立ち上がり、慌て周囲を見だす
「ない・・・ない・・・!儂の・・・儂の仕事用の荷物が・・・!」
老人は焦燥した表情で周囲を見ていた。それは宿屋にいた際に見た、あの笑顔とは程遠い姿であった。
「・・・じいさんを刺した犯人はじいさんの荷物が目当てだったのか」
犯人は老人の荷物が目的だったことを知ったルーサー、そこから出される声は怒りで震えていた。
「・・・でも、その犯人はおじいさんの荷物を盗んで何か意味があるのかしら・・・」
一方でアブソリュートは冷静に犯人が老人の荷物を盗む意味を考える。
すると老人が沈んだ顔をしながら
「・・・あの荷物の中には、魔法のアイテムが入っておった。おそらくそれが目当てじゃろう・・・」
「・・・売り捌いて一儲けって腹ね。・・・虫酸が走るわ」
老人の言葉により、犯人の目的も分かったアブソリュートはそのやり方に嫌悪感を隠すことはなかった。
「なんということやってくれたんじゃ・・・あれは・・・あれは儂の生き甲斐じゃったのに・・・」
荷物を奪われたことを完全に認識した老人は、顔を下に向き、涙を流していた。
「・・・ルーサー」
「・・・あぁ、そうだな」
その姿を見ていた二人はある決心をする。
「じいさん」
「・・・なんじゃ?」
ルーサーの呼び掛けにより、老人は顔を上げる。その顔は涙でぐしゃぐしゃになっており。宿屋の時であった老人とはとても思えなかった。
「・・・じいさんの荷物、俺達が取り返す」
「まだ、犯人は遠くにいってないはずよ。まだ取り返せるわ」
その言葉により、老人の目が一気に開く。
「・・・いいのかのう?」
「会ってまもない俺達だが、じいさんはそんな顔をするべきではないと俺は思っている」
「私も同感よ」
不安そうな声を出す老人だったが、ルーサーは笑顔で、アブソリュートはにっこり笑いながらいったことにより。老人の不安は消し去っていった。
「・・・頼むのじゃ、二人とも」
老人は笑顔を・・・少し元気はないが、笑顔を出しながら、二人に言った。
「任せておけ!じいさん!」
「私達二人にかかれば犯人なんてあっという間に捕まえられるわ!」
老人の言葉を聞いた後、二人は一気に走り出していった。
「・・・まるでオリ主みたいね。ルーサー」
「・・・かもしれないな」
走り出す中、二人は互いに笑いながら町をかけめぐっていった。
「・・・おー!かっこいいですよ!ルーサー!アブソリュート!」
町をかけめぐっているルーサーとアブソリュート・・・その光景を映像として女神は見ていた。
「・・・確かにオリ主みたいですね。ですがこれは知られざる物語・・・時が過ぎれば誰もが忘れる物語となるでしょう」
アブソリュートの発言を聞いた女神は悲しそうな声をしながら言う。
「私としてはあのオリ主よりも貴方達の方が共感が持てますからね。出来れば頑張ってもらいたいものです」
「・・・それって、女神様が全額大穴のルーサー×アブソリュートに賭けたからでは「シャラップ!天使20号!」って事実じゃって、うわっ!?上に引っ張られるぅぅぅぅぅ・・・」
「・・・ふぅ。フェードアウト完了です!」
とても良い笑顔をしながら呟く女神。実はこの女神、天使達が賭けをしたことを聞いた後、ノリノリで賭けに参加。ルーサー達に全額を賭けるというアホなことをしでかしたのであった。
「・・・そういえば、荷物を奪った犯人は誰なのでしょうか」
女神はそう言いながら、映像をがルーサー達が悲鳴を聞く場面へ戻しいく。
「ここで視点変更・・・っと」
そう言うと、映像が老人が刺されるシーンへと変わっていく。
「・・・へぇ、この方ですかって・・・!これは・・・!」
刺した犯人を確認した女神は驚きの声を上げる。
「ルーサー・・・アブソリュート・・・どうやら貴方達が思う以上に簡単には終わりそうにないですよ?」
感想、待っています!