ある日の鎮守府【短編集】   作:イモリ

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那珂ちゃんたくさん出しちゃってストレスな人に向けられない話


そろそろ那珂ちゃんが五百人になる

 日本が諸外国と外交し、小さな紛争はあるものの大国と呼ばれる国は概ね平和と呼ばれる時代。

 そんな折に何処からともなく現れた異形の存在、深海棲艦。

 武力を持つあらゆる国々は尽く敗北を喫し、いよいよ駄目か。そう思われた時に現れた、深海棲艦と対等に戦うことのできる、二次大戦時の武装を扱う謎の生命体、艦娘。

 鋼材や燃料をもって作られる正しく謎の生命体だが、その見た目麗しさと戦力によって、一時期は凄惨と言えるほどの事件が起こったものの、今現在は重宝されている。

 

 さてそんな艦娘達を管理する人間がいる。

 巨大な艦船の力そのままに振るえる艦娘といえど、個人では潰えてしまう。

 彼ら、ないし彼女らは提督と呼ばれ、艦娘を指揮する存在だ。

 

 私もその一人である。

 

 提督には様々な性格や思考を持つ者がおり、その殆どは性癖的に倒錯者などと揶揄されがちだが、実はそうでもない。

 大半は心優しい人物だ。

 例に漏れず、私もその一人だと思いたい。

 あらゆる作戦には中破撤退を命じ、どんな艦種が現れようと解体などせず、これまで一人たりとも艦娘を失っていない。

 その分制覇した海域は少なく周囲に比べて進行は遅いが、大本営からも艦娘からも受けは良い。

 その信頼と期待にこれからも答えていきたい。

 

 確かに私はどの艦娘も差別はしないが、それでもやはり強い娘は欲しい。

 そして数は力だと私は考えている。

 強大な力を持つ、少ない戦艦を囲うより特出した一つの能力を持つ者が多く集まる方がいい。

 なので私は今日もレア駆逐を回すーーだが……

 

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー! よっろしくぅ!」

 

 

 ま た か。

 

 

 今日までにレア駆逐を回した回数は五百回。周囲に比べれば随分と少ない回数だろう。

 しかし、それには理由がある。

 

 私は艦隊設立当初、二十回ほどレア駆逐を回した。

 結果、全てこの軽巡洋艦那珂だった。

 それ以来、レア駆逐艦は欲しいが那珂はいらない、という一種のトラウマかノイローゼのようなものになり、今では月に一度回す程度。

 しかし、その全てにおいて、那珂だった。

 

 私は「轟沈も解体もさせない」という信念を持っている。

 その信念に従い、これまでどちらも無かった。

 そしてその結果、那珂はとうとう五百人となってしまった。

 

 いらねえ。

 

 何度もいう、いらねえ。

 

 私の友人は不知火を三十人持っていると言っていたが、まだそっちの方がいい。

 不知火かわいいし。

 しかし私は那珂五百人。その友人は「那珂ちゃんのファンやめる」と言っていたが、それも致し方なかろう。

 那珂は確かに、愛らしいといる容姿を持つ。しかしそれが五百人となれば、もう、なんてーの、胃もたれだか胸焼けだか起こす。

 この間十円ハゲもできていた。完全にストレスだ。

 

 しかし私も信念を曲げたくない。

 仕方ない、と新たに現れた那珂を部屋へと先導する。

 

「ここがキミの部屋だ。好きに使うといい」

「はぁーい、プロデューサー!」

 

 ガチャッ、と勢い良く扉を開いた。

 その中にはーー

 

 

「「「おはようございまーす!!」」」

「「「那珂ちゃんスマイルー!!」」」

「「「お仕事ですね!!」」」

「「「パワーアーップ!!」」」

 

 

 総勢四百九十九人の那珂がいた。

 

「…………」

 

 新しい那珂は扉を開けた体勢のまま固まっている。

 問題ない、那珂よ。最初は皆そうだった。キミもすぐに慣れる。

 私は那珂を置いて、執務室に戻る。

 

 ……そろそろ信念曲げようかなぁ……




こんなにいたら食糧難になりそうですね(楽観視
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