東方平々凡々録   作:さんま(北海道産)

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日常回はここで終了



東方平々凡々録 24 「俺に悪役になれと」

久しぶりの畳の臭いが鼻を擽らせる

寝転びながら和室を見渡す

こうして元気に八雲家に帰って来れたのか

瓦の乗った家がどれだけ真新しく見えるか

実際数日空けただけなのだが・・・。

 

「やっぱり帰っていたのか」

 

開けっ放しの戸の方へ目をやると藍がこちらを見ていた

久しぶりだ、あのモフモフできそうな大きな尻尾を見るのも

藍は俺の和室に入り込み敷いていた座布団の上に座る

和室か・・・しかし畳も、障子も、襖もいいなぁ

やっぱり和が自分にはしっくりしている

そういえば今までの事や能力についてそういやまだ話していなかった

今日帰ってきたのだから今日に伝えよう

八雲さんとこの人にはしっかりとすべて話そう

そう決意し寝転がっていた体を起こし藍の方に体を向けた

起き上がったこちらを毅然と見る藍

相変わらず硬い表情の人だな、もっと笑えばいいのに

美人な顔立ちがもったいない

 

「まぁ、ただいまってところだな」

 

「そうだな、おかえり」

 

こうして改めて言うと帰ってきたという実感がわいてくる

紆余曲折あっても、幻想卿での家はここだと・・・。

本題に入ろう・・・、ひとまず何から話せばいのか?

経緯か?能力か?異変についてか?

どれから話そうか?なんて考えていると

 

「今まで吸血鬼の館にいたのか?」

 

そう言ってきた

なるほど、そこから聞くのか

意外な切り口に少し驚いたが

これは確認だろうか

今更それを確認して一体どうするのだろうか?

 

「あちらで療養していたと聞いたが・・・傷は大丈夫なのか?」

 

「心配をかけてすいません、でももう大丈夫」

 

そうかっと呟き胸を撫で下ろす藍

この人にも心配をかけていたのか、申し訳ない

実際腕の痛みは日に日に良くなっている

今、痛みは日常生活を送るのには支障のない程度だ

人間の自然治癒能力にはつくづく感心させられるものだ

しかしここの妖怪やら神はもっと早いのだろう・・・。

切れられ腕とか生えてくるのだろうか?

とある緑の惑星人のように・・・でもリアルで見たくない

 

「そういえば・・・紫様が呼んでいた様な気がするのだが」

 

「気がする・・・て」

 

絶対その理由でここに来たでしょ

藍は思い出そうと頭を捻っている

 

・・・じゃあ行きますか、紫さんのところへ

 

「じゃあ紫さんの所に案内してくれるか」

 

「確かだぞ?まぁいいが」

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

「あら、来たのね」

 

八雲家の紫さんの部屋

その襖を開け奥の座布団に座る紫さん

久しぶりの再開だ、本当にそう感じる

そのまま無言で敷かれていた座布団に静かに座る

紫さんは微笑んだままこちらを見てくる

相変わらずこの人は何を考えているのかわからない

今日の昼ごはんの事を考えているのか、国宝級の仏像を盗み出そうとしているのか

それは本人しかわからないだろう

 

 

「傷は大丈夫なの?」

 

「まぁはい大丈夫です」

 

お陰様で・・・と付け加えたが何もしてないなこの人

紫さんは自分の脇にある何かを二つ両手で一つずつ持って

それを机の上に置いた

一つは小さな皿に一口サイズの饅頭

もう一つは盆で湯飲みと急須が置かれていた

お茶と和菓子でゆっくりどうぞというやつか

それを証拠に自分で机に上げた饅頭に早速手をつけていた

おいしそうだなそれ、しかし勝手には礼儀に反している

というわけで湯飲みに急須のお茶を注ぎそれを飲んだ

入れたてのおいしい緑茶だ

 

「あの吸血鬼の館は楽しかったの?」

 

「そうですね、またこいって言われましたし」

 

フランの散歩のあと一晩明かしそのまま立ち去った

館の住民総出のお見送りだった

そんな大層なことでもないのにと思いつつ

紅魔館の人たちの暖かさに触れられた気がする

その主にまたきなさいっと言われた

素っ気無く言ってきた

彼女らしいか・・・なんて考えこちらからお世話になった感謝の意を表した

また遊ぼうね!とその妹

こっちもこっちで彼女らしいか・・・彼女に約束した

咲夜さんには二日酔いの件の礼

パチュリーさんには外で運動をもう一度薦め

美鈴さんには門番の仕事をサボらず頑張れと伝えた

どこかアニメの最終回の様なしんみりとした感じになった

いや別に家に帰るだけなんだがな

今思うと少し顔がニヤける

 

「ひとまず大体の事情はわかっているわ」

 

「あ、そうですか・・・。では大体とは?」

 

「そうね・・・異変の事とか能力とか」

 

「それはおかしいですよ」

 

能力はまだ幻想卿に広まっていないはずだ

新聞も見たが俺のことはよく載っていたが自分の能力の事は載っていなかった

異変が終わって他言したのも天狗と妖精くらいだ

だから知っているのは奇妙だと感じた

紫さんは始終表情を変えることなくこちらを見る

 

「聞いたの、知っている人から」

 

「誰にですか?」

 

「ごめんなさい、匿名なの」

 

匿名?一体誰なのだろう

何故名前を隠すのだろう?

こっちに知られたくない何かがあるのか?

名前を知られれば分かってしまう何かが・・・?

いや深く考えすぎだ

天狗さんかもしれないし口の軽そうな妖精が言いふらしているのだろう

・・・そうであって欲しい

 

「兎も角何故隠していたのか教えて欲しいわ」

 

「理由は簡単です、俺が欲しいのは普通です」

 

普通

これは日常生活を営んでいると気づかないもの

何かをきっかけに日常が崩壊したり、終わってしまったとき

初めて普通がどれだけ大切で尊いものだったのかが分かる

そうして俺は気づいた

能力は普通じゃないと・・・・。

そうして気づいた

俺は普通じゃないと

そうして、そうして

普通の生活ががどれだけ価値のあるものだったかが気づいた

 

「そう・・・。でも安心して、幻想卿は全てを受け止める

 あなたの能力も、そしてあなたの過去も」

 

「そうですよね、俺が馬鹿でした」

 

昔人間の学校に憧れ人間に化けて学校に登校する狸の話があったのを思い出す

狸は人間の子供たちと遊び、学んだ

しかしある日ひょんなことから変化の術が解けてしまい人間たちに狸とばれてしまう

狸は泣きながら教室を出て行こうとするが実は学校の人間全員が狸だったというオチ

まさしくこの状況だったな

周りに合わせようと頑張った結果空回り

こんな生き方しかできなかったから・・・変わろうと思う

真っ直ぐやりたい事をやる普通の人間として

 

「で、ここからが本題なんだけど・・・」

 

「え?本題じゃなかったんですか?」

 

異変などの報告がてっきり本題だと思っていたが

それよりも話したいことがあるのか・・・。

なんだろうな?

俺には皆目検討もつかない

 

「あなたは異変についての知識を今回の異変を見て多少は身につけたと思うの」

 

「まぁはいそうですね」

 

幻想卿の一大イベントであり幻想卿の住人がそれなりの理由で起こす事件 異変

これくらいの知識だけど・・・。

かなり偏っていると思わざるを得ないな

 

「それで少し相談といか提案があるの」

 

「えっと・・・なんでしょう?」

 

なんだろう・・、すごく嫌な感じがする

この会話の流れに俺の第六感が警報を鳴らす

相談もとい提案

俺はごくりと生唾を飲み込みその提案を待った

 

「異変を起こさない?」

 

「・・・え?」

 

思考が停止した

俺が異変を?

一体何のために?何を目的にして?

何故この提案をしてきたのか分からなかった

 

「正確には異変の手伝いをしてみない?ということ」

 

「手伝い?」

 

それでもやっぱり異変に関わるじゃないですかー!

俺に悪役をやれって言うんですか?

ウハハハハハハハって笑えって言うのですか?

そんな文句がたくさん頭を飛び交った

しかしちょっとした好奇心

異変ってどう起こすのだろうか?

そんな興味が湧き出た

いやいや・・・落着け

兎も角詳細を聞こう

 

「詳しく教えてください」

 

「意外と食い気味ね・・・、私の友人が近々異変を起こすの

 その手伝い・・・・というか加勢ね」

 

加勢

もっと意味が変わってきた

手伝いなら準備なりで終わるのだが加勢ともなれば最後まで当事者になる

・・・・俺は悪役に堕ちるのか

 

「因みに冥界で起こすの、その友人には日頃のお世話も兼ねて少しばかり協力しよう

 と思ってあなたに提案したのだけど・・・仕方ないわね、橙に行かせましょう」

 

「いやいやちょっと待ってください!」

 

よりによってあの子をチョイスするのか!

危険すぎる!せめて藍にして頂きたい

そう切実に訴えた

しかし答えはノーだった彼女の理由曰く

 

「藍はいなくなると困る」

 

そうだ

・・・行かないといけないやつかな

意を決めよう、覚悟しよう

なんだろうこの感じ

ダチョ○倶楽部みたいだ

 

「・・・行きます」

 

なんだろうもう提案じゃない

ただの派遣だ

俺はいつの間にか派遣会社に勤めていたのだ

どうしてこうなった・・・。

 

「あら、ありがとう感謝するわ」

 

そう言ってラスト饅頭を口に放り込む

あぁ、結局一個も食べていない

そんななにもない皿を見て嘆く

 

白い陶器の皿

その異変の日も白く寒く・・・

 

こうして俺は異変の加勢としてとある異変に関わった

 

後にこう呼ばれる異変

 

<春雪異変>と・・・。

 




次回から異変準備へ・・・
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