東方平々凡々録   作:さんま(北海道産)

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東方平々凡々録 30 抗い

「降伏をお勧めするわ」

 

霊夢は手で煤汚れた巫女服を叩きながらゆっくりと魔理沙たちへの方へ歩み寄る。妖夢の方へ目を向ける、石の壁にもたれていた、顔はよく見えない。

 

「これは、まずいね」

 

天使が耳元で囁く、緊張感のないいつも通りの声。この状況でもこいつは全く危機感がない、結局この状況すらひっくり返すほどの自信があるのだ。そうだ、俺はこいつと一緒に戦えば負けない、負けないのだが。

 

「なぁ天使。確かにピンチだが、俺1人でやるよ」

 

「正気かい?君とはいえ3人相手だよ?」

 

わかっている、霊夢の動じない自信も魔理沙の火力も咲夜さんの冷静沈着なところも、俺は勝てない。そんな3人が束になっているんだ、勝てるはずがないことなんてわかりきっている。

 

「お前がこれ以上表に干渉するのは、よくないと思ってな。それとやっぱりさ...燃えるじゃん、この展開。」

 

ジリジリと迫る3人、迫り来る敵から逃げようとする足を押さえつけ、毅然とした態度で立ち向かう。俺は男だ、男なんだ。妖夢があんなに頑張ったんだ、俺が頑張らなくてどうする。

 

「君が傷つくところ、見たくないんだが」

 

「なーに、俺だってやればできるところ見せてやるぜ」

 

根拠のない自信だ、一体どこから湧いてくるのやら

一定の距離になると3人は足を止めて俺と向き合う。

 

「どうするの?降伏する?」

 

霊夢の二度目の降伏勧告。腹の中で既に答えは決まっている。答えはもちろん

 

「派遣社員は...最後の最後まで頑張らないとね。降伏なんてクソくらえだぁ!」

 

そうだ吐き捨てて剣を振るう。剣の衝撃波型の弾幕が3人の方向へ飛ぶ。不意打ちに近かったので3人はやや反応が遅れたがすんでのところで躱した。

 

「それが答えなの?賢いとは思えないわね」

 

咲夜さんは動じることなく淡々と言いながらナイフを取り出す。魔理沙も六角形の道具を構えて戦闘態勢に入る。霊夢は....霊夢はどこだ?

辺りを見渡してもいない、先ほどは確か避けたはず、待て、そういえば剣を振るったあたりから存在が消えていたような...嫌な予感、上を向くと

 

「面倒だから、これで終わり」

 

空を飛ぶ霊夢がいた、その態勢は見覚えのある霊夢の切り札が直ぐにでも打てる状態だった。声が出ない、遠くから見ていたそれを俺は今身をもって知ることになるのか。

 

「夢想封印」

 

霊夢の身体が輝き始め、大量の弾幕が視界いっぱいに広がりながら落ちてきた。色とりどりの弾幕...生きているかのように動きを変える。弾幕ごっこの根幹は美しさの競い合いか、近くで見てみるとそれがよく実感できた。受け入れるように目を閉じた、閉じた瞼からでも明るさが伝わってきた。現実の花火の美しさにも勝る光のオーケストラが俺を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

はずだった

 

 

 

 

 

 

 

「....え?」

 

痛みや何かに当たった感触すらこない。恐る恐る目を開けた。

少し離れた所に霊夢がいた。俺ではない何かを睨みつけているようだ。

 

「言っておくけど、僕は何もしてないよ」

 

天使の囁き声、知っているさ。お前の能力なら誰かが被弾しているはずだ。霊夢の後ろには魔理沙と咲夜さん。そして妖夢も変わらない場所にいる。なのに俺は被弾しなかった。

それ以外で俺を助けたということは

 

「ありがとうございます...西行寺さん」

 

霊夢の睨む先、俺の後ろにいる存在に礼を言った。

 

「いいの、気にしないで〜」

 

ゆっくりと歩いて俺の横まで来た。初めて会っと時と変わらない緩やかな笑顔。頬の筋肉がユルユルではないかと思わせるほどキリッとした顔立ちが予想できない。今でもそれは相変わらず、緊張感がないのか、強者の余裕なのか。

 

「西行寺...?なんとなくだけど、あれが親玉かしら?」

 

咲夜さんが訝しんで2人に聞く。霊夢は既に分かっているらしい、あれを倒せばこの件は終わると。魔理沙は相変わらず俺から目を離さない。六角形の道具をずっと握りいつでも俺に飛びかかってきそうだ。

 

「これで3体2か」

 

西行寺さんが一体どれほど戦えるのか不明だがあの紫さんの旧友なのだ、並々ならぬ力ではないはず。

 

「妖夢は屋敷で寝かせておいたわ、それとまだ戦える?」

 

西行寺さんが肩に手を置いて俺に尋ねる。見ると妖夢が先ほどまでもたれていた場所には誰もいなかった、いつの間に運んだのかと疑問が浮かんだがひとまず安堵した。さて、体の方は万全とは言えないが、戦えないわけではない...。

 

「大丈夫です」

 

「そう、じゃあ1人お願いね。私が2人を相手にするから」

 

深く頷いて応える。情けないがあの3人の中から2人を同時に相手をできるほど強くない。先ほどはなんとか戦えたがあれで勝てるとは思ってない。今はあの中の1人を相手にするだけで精一杯だ。

 

「ローブの男、私と勝負だ!」

 

そんな時一騎打ちを申し出たのは、魔理沙だった。

 

「そう、じゃあ私はあの2人ね。それじゃあ場所を移しましょう。案内するわ、決戦の地に」

 

そう言って体を宙に浮かして飛んでいく、慌ててその背中を追った。

3人は頷くことなくその背中を追う

西行寺さんを先頭について行く、決戦の地、白玉楼へ。

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