第六天波旬vs永遠の刹那   作:byとろ

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やってしまった。

この回から、夜刀がありえなくなります。

独自解釈もオリジナル要素もとんでもなく入っております。

もうifストーリーではなく、ただの創作と思ったほうがいいでしょう。

注意してください。

注意してください(大事なことなので二回言いました)。



愛しき刹那

停止。

 

回帰。

 

破壊。

 

断頭。

 

天体。

 

聖槍。

 

渇望が、武器が乱舞する。

 

黄昏の守護者たちがつぶし合う。

 

攻撃すれば相殺し、理を叩き付ければそれを覆い尽くす。

 

ある種、究極的な神々の闘争が繰り広げられていた。

 

夜刀が鱗を落とせば水銀が流星を呼び、破壊光を放てば黄金が聖槍を振る。

 

飛び散った星の欠片や血肉は夜刀の法で止まり、水銀の理で回帰していく。

 

そしてまた、黄金が破壊する。

 

まるで永劫の円環にとらわれているように。

 

進むことのできぬ何かに阻まれているように。

 

戦況は動かない。

 

分で言えば、夜刀の方に軍配が上がるはずだ。

 

黄昏の為に長きを生きてきた夜刀は、その能力が極まっている。

 

しかし、戦況は動かない。

 

三という神格の数が、ぎりぎりの均衡状態を生み出しているのだ。

 

突破するのなら――まずどちらかを殺さねばならないのだが、ここで均衡が崩れなくなる。

 

一人を狙えば、片方が襲ってくる。

 

そしてその間に、さらに片方が攻撃する。

 

それをいなし、かわし、迎撃をすると、もう事態は最初まで戻ってしまう。

 

膠着状態がひどく煩わしい。

 

 

『我は輝きに焼かれる者。届かぬ星を追い求める者

 

届かぬ故に其は尊く、尊いが故に離れたくない

 

追おう、追い続けよう何処までも。我は御身の胸で焼かれたい――逃げ場無き焔の世界

 

この荘厳なる者を燃やし尽くす――』

 

 

 

焦熱世界・激痛の剣

Muspellzheimr Laevateinn

 

 

 

黄金の獣が詠唱を終えた。

 

絶対必中の極大放火。

 

それは彼の率いた軍勢(レギオン)において、最高の火力を持ち――

 

標的を逃げ場など最初から存在しない砲身状の結界に閉じ込める、文字通りの必中だ。

 

その極大放火が、水銀をも巻き込んで夜刀を襲う。

 

水銀は超新星爆発で押し切り、夜刀は停止の法を叩き込むことでそれを止める。

 

しかし黄金は止まらない。

 

 

『接触を恐れる。接触を忌む。我が愛とは背後に広がる轢殺の轍

 

ただ忘れさせてほしいと切に願う。総てを置き去り、呪わしき記憶(ユメ)は狂乱の檻へ

 

我はただ最速の殺意でありたい――貪りし凶獣

 

皆、滅びるがいい――』

 

 

 

死世界・凶獣変生

Niflheimr Fenriswolf

 

 

 

その能力は絶対先制。

 

たとえ相手がどれほどの速度を生み出しても、さらにその上を行く。

 

超速度で黄金が夜刀に詰め寄り、拳を握る。

 

 

「……ッ!」

 

 

黄金が拳を握る。

 

その動作を見て何をしようとしているか分からぬ夜刀ではない。

 

いや、夜刀でなくとも、知っているものがそれを見ればあれだとわかる。

 

あれしかないのだ。

 

ご都合主義の神様(デウス・エクス・マキナ)。

 

幕引きの一撃。

 

 

『我は終焉を望む者。死の極点を目指すもの

 

唯一無二の終わりこそを求めるゆえに、鋼の求道に曇りなし――幕引きの鉄拳

 

砕け散るがいい――』

 

 

 

人世界・終焉変生

Midgardr Volsunga Saga

 

 

 

迫る拳を夜刀は迎え撃つ。

 

かつて修羅道にとらわれ、唯一無二の死を望んだ男の渇望。

 

毒壺の中で戦場を超え、魂を分け合った兄弟。

 

その拳は、万象総てに幕を引く。

 

夜刀であっても、無事な保証はない。

 

全力で――その一撃を迎え撃つ。

 

 

「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

 

断頭の刃が黄金を、迫る拳をとらえた。

 

黄金が速いか、夜刀が速いか。

 

速度なら当然夜刀だ。

 

だが、今の黄金は最速の凶獣を背負っている。

 

速さの問題。速度の優劣。

 

しかし――

 

夜刀の停止も。

 

絶対の速さも今は関係がない。

 

この場において重要視されるのは渇望の大きさ。深さなのだ。

 

そして夜刀は、その渇望だけで波旬を除く歴代神格のすべてを凌駕している。

 

停止の法が、凶獣を上回った。

 

断頭の刃が黄金をとらえ、幕引きと刃が交差したその一瞬。

 

 

『このようにして星に行く

Sic itur ad astra

 

厳しい法であるが、それでも法である

Dura lex sed lex 』

 

 

重力が崩壊し、夜刀と黄金が引きはがされた。

 

それを起こしたのは水銀。

 

変わらず口元を綻ばし、さらに追い打ちをかけてくる。

 

 

『神を知る者は、神を敬う

Deum colit qui novit

 

黄金の中庸

Aurea mediocritas 』

 

 

グランドクロス。

 

しかしその一撃は、重力異常によって標的を失った幕引きの一撃と断頭の刃によって呆気なく吹き飛ばされた。

 

それぞれが距離をとり、相手の出方を見つつ構える。

 

あの益荒男にも言ったが、覇道神同士の戦いというのはその覇道のせめぎ合いだ。

 

どちらがより強い理なのか。

 

どれだけ相手に自身の世界を強制できるのか。それをぶつけ合うのだ。

 

夜刀はそれを好かない。

 

それは他の二柱も同じだろうし、どっちみちこのレベルではお互いの武器を交差させるしか解決はない。

 

理の喰い合いをないがしろにするというわけではないが。

 

攻撃を行わなければ倒せない。

 

しかし攻撃しても拮抗に持ち込まれる。

 

例えば。

 

例えば、今ここにもう一つ太極があれば話が違うのだが。

 

狙い目は、やはり黄金。

 

彼だけが、別の法をここにしくことができるから。

 

それが突破口になるはずなのだが、しかしうまくいかない。

 

 

――卿よ。

 

――卿は一人ではないはずだが?

 

 

黄金が動いた。

 

それに合わせて水銀も動き、一瞬遅れて夜刀も駆ける。

 

先程まで行っていたような、進展のない闘争が繰り広げられる。

 

 

――その体は彼らの魂を宿しているのだろう?

 

――卿を信じた者を信じろ。

 

「どういう……」

 

 

漏れた言葉は、言い切らないうちに衝撃によって吹き飛ばされる。

 

空間を光が貫き、天体が落ちる。

 

 

――ああ、嘆かわしい。

 

――ここまで我が友が助言をしているというのに、それに気づかぬとは本当に鈍い。

 

――いや、気づいていないというより、できぬと思っているのかな?

 

――やれやれ、まったく。

 

 

水銀が呆れたように首を振った。

 

その様にひどく反感を覚えるが、しかしそれよりも考えなければならない。

 

気づいてはいるのだ。

 

言いたいことはわかるし、それをやれというのもわかる。

 

太極を使えと言っているのだ。夜刀のではない、天魔たちの太極を。

 

だが、可能なのか?

 

彼ら天魔の太極を扱えるのか?

 

いくら彼らの魂によって新生したといってもできるものなのか。

 

 

――何を臆している息子よ。

 

――元来、本質はそれであろうが。

 

 

夜刀は、藤井連は水銀によって作られた、聖遺物を扱う聖遺物だ。

 

黄金の持つ運命の聖槍以外の聖遺物を扱うことができ、能力の元となる渇望すら使い分けることが可能。

 

そしてここに、彼らの魂がある。

 

 

「……ッ」

 

 

ならば、できる。

 

できないなどと思ってはいけない。

 

やればいい。ただ信じろ。

 

夜刀を形作っている魂。その一部を意識する。

 

そして――

 

 

「かれその神避りたまひし伊耶那美は

 

出雲の国と伯伎の国 その堺なる比婆の山に葬めまつりき

 

ここに伊耶那岐

 

御佩せる十拳剣を抜きて

 

その子迦具土の頚を斬りたまひき――」

 

 

 

太・極――

 

随神相――神咒神威・無間焦熱

 

 

 

火炎が舞い、莫大な威力を秘めた火柱が黄金を穿つ。

 

しかしそれは、黄金の焦熱世界・激痛の剣に飲み込まれた。

 

火柱一つで国すら滅ぼすことが可能なのだが、いかんせん黄金の焦熱世界・激痛の剣を超えることができない。

 

真の使用者の力量関係が現れているとも言えるが。

 

 

「つかえ、た……?いや、これは……」

 

 

夜刀の随神相に変化が出ていた。

 

鱗がほんのりと赤みを帯び、手には火炎の剣が一本。

 

天魔・母禮の随神相の特徴が夜刀の随神相に反映されている。

 

確かに使えた。

 

使えたのだが、完全ではない。

 

天魔・母禮の太極。本来炎と雷を持っているはずだが、しかし顕現したのは炎だけ。

 

雷の剣を持っていない。不完全だ。

 

 

「――――がぁッ!?」

 

 

半ば呆然としていた夜刀を、流星が襲った。

 

すぐに裁断するが、さらに無数の流星が降ってくる。

 

蛇神がその手に持つ炎剣を掲げる。

 

強く、もっと強く。

 

もっと、もっと。

 

刹那への祈りを。

 

愛しき刹那を思い出せ。

 

 

 

「滅尽滅相ぉぉぉぉぉッ!」

 

 

 

太・極――

 

随神相――神咒神威・無間焦熱

 

 

 

振り下ろされた炎剣と共に、さらに雷が伴う。

 

火炎が流星を飲み込み、雷が砕いた。

 

夜刀の随神相には炎と雷の剣がそれぞれ一振りずつ握られていて、体表を雷が走っていた。

 

それを、黄金に向かって振り下ろす。

 

そして黄金も、かの一撃をぶつけてくる。

 

 

 

焦熱世界・激痛の剣

Muspellzheimr Laevateinn

 

 

 

雷炎と極大放火が衝突した。

 

閃光が、熱波が駆け、空間を制圧する。

 

 

「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!」

 

 

雷となって疾走し、炎となって焼き尽くす。

 

荒れ狂う二つの神威の奔流が、ついに耐え切れずに爆発した。

 

いまだ残る熱気を振り払い疾走。

 

黄金の眼前へと躍り出る。

 

 

「一 二 三 四 五 六 七 八 九十

 

布留部 由良由良止 布留部

 

血の道と血の道と其の血の道返し畏み給おう

 

禍災に悩むこの病毒を この加持に今吹き払う呪いの神風

 

橘の 小戸の禊を始めにて 今も清むる吾が身なりけり

 

千早振る神の御末の吾なれば 祈りしことの叶わぬは無し――」

 

 

 

太・極――

 

随神相――神咒神威・無間叫喚

 

 

 

夜刀の随神相から炎と雷が消え、代わりに武者を思わせる鎧を装備し、その手には長大な剣を握りしめていた。

 

それを一閃。

 

聖槍でそれを受け止めた黄金だが、腐敗毒により魂魄の汚染された黄金は軽々と吹き飛ばされた。

 

さらに水銀へ破壊光――否、腐敗光とでもいうべき毒性を帯びた一撃を放つ。

 

 

『恐れは望みの後ろからついてくる

Spem metus sequitur

 

喜んで学べ

Disce libens 』

 

 

水銀が既知世界すべての星を利用して暗黒天体を創造するが、天を汚染し、天体を腐蝕するその一撃の前には無駄。あえなく吹き飛ばされた。

 

黄金と水銀が、一ヵ所に集まる。

 

 

「ものみな眠るさ夜中に 水底を離るることぞうれしけれ

 

水のおもてを頭もて 波立て遊ぶぞたのしけれ

 

澄める大気をふるわせて 互に高く呼びかわし 緑なす濡れ髪うちふるい

 

乾かし遊ぶぞたのしけれ――」

 

 

 

太・極――

 

随神相――神咒神威・無間黒縄

 

 

 

夜刀の随神相が、黒一色に染まる。

 

天魔・奴奈比売の太極によって空間停止という概念の塊となったそれが、黄金と水銀を飲み込む。

 

いかに黄金と水銀といっても、空間停止と時間停止、この二つを受ければ容易に身動きできるはずもなく、その動きは鈍いとしか言えぬものとなっていた。

 

夜刀が――駆ける。

 

 

「日は古より変わらず星と競い

 

定められた道を雷鳴の如く疾走する

 

そして速く 何より速く

 

永劫の円環を駆け抜けよう

 

光となって破壊しろ

 

その一撃で燃やしつくせ

 

そは誰も知らず 届かぬ 至高の創造

 

我が渇望こそが原初の荘厳」

 

 

 

創造

Briah――

 

涅槃寂静・終曲

Eine Faust Finale

 

 

 

黄金と水銀にさらに遅滞が強制される。

 

断頭の刃が首をとらえ、時を切り刻みながら二柱の神に迫る。

 

 

【――行きなさい】

 

【――さあ、行くんだ】

 

【――行くのよ】

 

 

第六天の法下でともに過ごした仲間たちが、背中を押してくれる。

 

天魔・母禮。

 

天魔・悪路。

 

天魔・奴奈比売。

 

永遠の刹那が、夜刀を高みへと導いてくれる。

 

そしてついに、黄金と水銀の首が――飛んだ。

 

 

――見失うなよ。卿は、卿の愛した刹那を信じていれば良い。

 

――我らが黄昏を汚すものはいらぬ。わかっているな?

 

「すまない……使わせてもらうぞ!」

 

 

その二柱の残滓が消える瞬間、夜刀はさらに太極を発動する。

 

 

「天が雨を降らすのも 霊と身体が動くのも

 

神は自らあなたの許へ赴き 幾度となく使者でもって呼びかける

 

起きよ そして参れ 私の愛の晩餐へ――」

 

 

 

太・極――

 

随神相――神咒神威・無間等活

 

 

 

黄金と水銀を、ほんの一瞬だけ操る。

 

向かうは波旬。

 

黄昏の守護者の本気の全力。

 

それを、波旬ただ一人に向けて放つ。

 

 

『ああ?――――』

 

 

波旬がつぶやいたその刹那には、黄金も水銀も、そして夜刀も――すべて吹き飛んでいた。

 

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