様々な感想ありがとうございました。
これからも感想とか、こういう風にしたらいいんじゃない?というようなアドバイスを送ってください。検討したのち、再編集させてもらいます。
吹き飛んだ。
波旬がまるで虫を払うかのごとく手を動かしただけで、黄昏の守護者が吹き飛んだ。
『ああ、ああ、なんだ。俺に近づくな。穢れるだろう』
『だから糞を投げてやったのに、それを俺に投げ返すとは何をしているのだ』
『やはり塵は塵か。まったく使えない』
『指の一本で消し飛ぶような塵だものなぁ』
『そのまま消えてなくなれ』
ふざけるなふざけるなふざけるな。
彼らを侮辱するな。
貴様のような下衆の走狗に堕ちても、愛することを知っている彼らを。
冒涜するな。
ああ、そう思っても。
吹き飛んだこの体は動かない。
今すぐ奴の横っ面を殴ってやりたいのに。
ただの一撃受けただけのこの体は動かない。
動けない。指すらが自身の体ではなくなってしまったようだ。
ふざけるな。
波旬、お前を許さない。許してなるものか。
「――――ぁ」
自らを奮い立たせるための鼓舞すらも満足に咆えれぬのか。
そんな。
そんなことが。
『私は総てを愛している――?何だそれは気持ちが悪い』
『己以外の塵芥に何の意味がある。俺俺俺俺俺俺、それが総てだろう』
『只々そのまま何もかも壊せばよかったのだ。最後に自滅してな。そうすれば少しは使えただろうに』
『まあ、塵は塵だけどなァ――』
違う違う違う。
お前が黄金を語るな。
お前が総てを愛すなどと口にするだけでも冒涜だ。
あの黄金を、壊すだけの狂獣と罵るなど許さない。
――それ、は……聞き捨て、ならん……な……。
もはや消える直前であろう黄金が、聖槍を握る。
もともと消え行く残滓を強引に操ったのだから、その大元となる夜刀が負傷した今、彼らはこのまま消えるだけだ。
それでも、このままただ消えるわけにはいかないというその一心で、黄金が波旬へ向かう。
――愛するが、故に……破壊、する……のだ。
――愛、なき破壊に……意味などない!
『はあ?』
知らんと切り捨てて、波旬が右手を持ち上げた。
『塵掃除に持ち合わせる感情などないだろうが』
飛来した一撃が、ただつぶされた。
黄金がいくつもの攻撃を放つが、波旬はただ右手を動かすだけでそのすべてを破壊する。
そのなかで――
――これから……永劫回帰を、使う。
「メル、クリウス……?」
水銀がこちらを見ていた。
夜刀や黄金とは違い遠距離から攻撃していたため波旬による被害が少ないようだが、それでも、もともと戦闘向きの神格ではないのだ。黄金と同じく消滅間近。
その水銀が、夜刀に永劫回帰を使うといった。
だが、いくら永劫回帰でも波旬より受けた傷は治らない。
ならば何に永劫回帰を使うというのか。
――魂……。
長きを生きて疲弊した夜刀の魂。
今は無間衆合地獄により天魔たちの魂が夜刀の魂と混じりあうことによって、全盛期であったかつての状態に新生したのだが、言ってしまえば天魔たちの魂を代用として使用しているにすぎない。
そこで夜刀の魂を回帰させる。
単純に考えて、全盛期とはいかないまでもそれに近い刹那の魂、そこからさらに天魔の魂を加えた形になる。
しかし、成功するか。
波旬に永劫回帰を仕掛けるよりはあるのかも知れないが。
――獣殿が……時間を、作っている。
水銀がまくしたてるように言った。
波旬を相手取り、時間稼ぎなど一瞬にもならないはずだ。はっきり言ってしまえば無駄。
そんな、一か八かの賭けに対して。
――御託など、知らぬ。
――黙して従え!
流出
Atziluth――
生と死の刹那に未知の結末を見る
Vive memor mortis――Acta est fabula
回帰する。
水銀の法が流れ出し、夜刀を包む。
「ッ!――オォォ……ッ」
体の奥底から力強い奔流があふれ出す。
だが、それは絶頂へと至る前に沈んでいきそうになる。
【――私も力を貸すわ】
【――心の臓として、あなたを支えるから】
沈み、消えそうになっていた力の流れが、先程までより強く、夜刀の体を駆け巡る。
その様はまさに荘厳にして華麗。
天魔たちの魂と夜刀の魂が共鳴し合い、さらに大きな奔流となって湧き上がる。
【――蘇る そう あなたはよみがえる
私の塵は短い安らぎの中を漂い
あなたの望みし永遠の命がやってくる
種蒔かれしあなたの命が 再びここに花を咲かせる
刈り入れる者が歩きまわり
我ら死者の 欠片たちを拾い集める
おお 信ぜよわが心 おお 信ぜよ 失うものは何もない
私のもの それは私が望んだもの 私のもの それは私が愛し戦って来たものなのだ
おお 信ぜよ あなたは徒に生まれて来たのではないのだと
ただ徒に生を貪り 苦しんだのではないのだと
生まれて来たものは 滅びねばならない
滅び去ったものは よみがえらねばならない
震えおののくのをやめよ
生きるため 汝自身を用意せよ
おお 苦しみよ 汝は全てに滲み通る
おお 死よ 全ての征服者であった汝から 今こそ私は逃れ出る】
太・極――
随神相――神咒神威・無間衆合
天魔・常世。ずっと夜刀を支え、そして思ってくれていた彼女の太極。
強く、強く、鼓動を感じる。
――後のこと……頼ん、だ……。
水銀のおぼろげな声が聞こえた。
力を使い果たし、もはや消えるのみとなった水銀がいた。
「メルクリウス……」
――フフ……。似合わない、面をするな……。
――これで、いい……。
どこか満足そうに、水銀が目を閉じる。
那由多の回帰を繰り返し、自身の恋した結末を求め続けた男。
黄昏の胸に抱かれて死にたいと願った男。
――ああ……あなたに跪かせていただきたい、花よ……。
その言葉が最後だった。
水銀が完全に消滅した。
そしてそれと同時に、波旬が黄金をとらえた。
右手が黄金へと迫る。
破壊の嵐をまとう運命の聖槍とぶつかって――しかし何の関係もなく、そのまま黄金を吹き飛ばした。
「ラインハルト……!」
黄金の残滓が消える。
最後にこちらを見て――
呆気なく、消滅した。
「ッオオォ……オオオオオオォォ!」
微笑んだ。最後の最後に、黄金が微笑んだのだ。
まるで、夜刀の勝利を確信したように。
安心したといったように、微笑んだ。
『塵に愛情を持つなど、狂気の沙汰だ』
『黄金の獣ォ?糞尿を漁って汚れただけの鼠だろ――』
波旬の嘲笑が響く。
狂気はお前だろう波旬。
『抱きしめられて死にたい?――取り囲まれて死にたいとは変わった塵だ』
『塵山にうずもれて幸せそうに果てていろ』
水銀の目指した結末すら貶めるのか。
ふざけるな。
お前こそ掃き溜めにふさわしい。
「許すものか。認めるものか」
消えてなくなれ。
『臭い臭い臭い臭い臭い臭い』
『あまりに臭う』
強く強く強く強く強く強く。
愛しいものを守るためには強くなくてはいけない。
『もう限界だ』
『お前は消えろ』
愛しき刹那の為に。
『触りたくもないが、この臭さには我慢ならん』
『気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い』
刹那を汚すものは要らないから。
『消えろ――』
波旬が動き、体が揺れた刹那。
創造
Briah――
超越契約・強奏
Eine Faust Stark
夜刀がその手を掴み、そして投げ飛ばしていた。
『なッ――!』
波旬の顔が驚愕に染まる。
それはそうだろう。波旬にとって投げ飛ばされるなどありえない出来事のはずだ。
しかしここにそのありえない出来事が成った。
超越契約・強奏。
愛しいものを守りたい。そのためには強くなければならない。
天魔や黄金、水銀といった刹那と夜刀の願いが具現したそれは、言ってしまえば自身の超強化。
正確には『引き延ばした時間の中で、強度を上げることによって刹那を絶対とする』能力だ。
この刹那が壊されないように、自分を強くするということだ。
波旬は自己愛で。
夜刀は刹那のために。
強さを求めた真逆の渇望がぶつかり合う。
『触れるな触れるな触れるな触れるな。俺に触るんじゃねぇぇぇぇぇッ!』
波旬が咆え、究極の自己愛が爆発する。
『罨――
阿謨伽尾盧左曩 摩訶母捺囉摩抳 鉢納摩 人嚩攞 鉢囉韈哆野吽
地・水・火・風・空に偏在する金剛界尊よ
今ぞ遍く光に滅相し奉る
天地玄妙神辺変通力離――』
卍曼荼羅――無量大数
波旬の質量が膨れ上がり、汚らわしいほどに黒く染まった自己愛の渇望が夜刀の肌を貫いていく。
『がああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
波旬が腕を振りかぶる。
それに合わせて夜刀も破壊光を放った。
二つがぶつかり合い、破壊と消滅の嵐が吹き荒れる。
当然というか、夜刀の破壊光が押し負けた。しかし、それだけだ。
その一振りで歴代の神格をまとめて薙ぎ払える一撃をいなした。
猛る神威を奔らせながら、夜刀が断頭の刃を波旬に向ける。
「波旬。お前が、閉じた己の世界で無限になるというのなら
――俺は、永遠の刹那の中で無限を超越するだけだ!」
瞬間、座すらも切り刻まれそうな絶大な威力を秘めた断頭の刃が疾走した。
私用で次も遅くなります。
ごめんなさい。