HDDの肥やしになってた短編晒し   作:クヤ

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りりなの1

 チカチカと光るモニター。

誰もいない六畳ほどの扉も窓もない部屋。

打ちっぱなしのコンクリートのように、無機質で、人のぬくもりも、自然の息吹さえ感じることはない。

チカチカと暗い部屋の中重厚な灰色の机に乗って、その存在を主張する。

頭は霞がかかったようにぼやけ、自分が何者であったのか、それさえおぼつかない。

しかし、考えることもなく唯一の光源たるモニターの前へと腰を下ろす。

はて、椅子はあっただろうか?

そんな疑問も生まれた端から露と消え、その明りに意識が引き寄せられる。

気が付けばチカチカした画面から切り替わっていた。

そこにはこう書いてあった。

 

『転生における諸項目』

 

 

 

 

 

沈んでいた意識が浮上を始める。

手始めにどこからか聞こえる目覚ましの音がだんだんと近づいてくる。

しかし、カチという音とともに音が消え去り静寂が帰ってくる。

すると今度は、体が揺さぶられる。

 

――――未咲、起きてください未咲

 

すると重かった目蓋が持ち上げられ、目の前にいる人物を像で結ぶ。

長い銀髪と赤い瞳が特徴的な彼女。

 

「おはようリーンフォース」

 

「おはようございます。我が主」

 

そういって彼女は柔らかく微笑んだ。

 

 

 

 

 

まず、彼女との出会いを語る前に。彼、東郷未咲(トウゴウミサキ)という存在の自己紹介を済ませてしまいたい。

端的に言って彼は、転生者という昨今大変便利に扱われるアレである。

モニターにキーボードで転生に関する選択を完了し、転生した人間である。

死後の世界でもオートメーション化が進んでいるのかと時代の変化を感じてしまう。

転生についてこの手の小説で考えるとき誰もが気になりつつ、どうでもいいと思わなくもないそんなものが一つある。

そう転生特典だ。

どうせ最強なんでしょ?そんなアレだ。

入力画面には、『転生特典』というタイトル『名称』『備考』という項目が存在した。

得られる特典は一つのようだった。

一つでも破格すぎるとは思うが。

この時美咲は考えた。

いや常日頃から思っていたのかもしれない。

この手の転生者はどうして『俺の考えた最強にかっこいい能力』を選ばずよくある漫画ネタの能力にするのかと。

そうして未咲は『名称』ヤミ。

『備考』をまさに『俺の考えた最強に厨二臭い能力』として長々とそれはもう長々と書き込んだ。

そして決定するとエラーが出ることもなく満足感とともにその世界を去った。

そう、書き込み終わった時点で満足していたのだ。

 

そして次に目覚めたとき、彼は七歳の少年だった。

そこそこの広さのマンションの一室にいきなり存在していた。

当然パニックになった。

夢だと思っていたのだ。

転生とかねーよ。そう思っていたのだった。

当たり前である。信じてしまった奴はただの頭がかわいそうな子。

万が一、億が一、那由多が一そんなことがあったとしても記憶はなくなるはずだと思っていた。

しかし、現実は非常である。記憶を持ったまま七歳児として生きていかなければならない。

まず確認したのは親である。

当然いるものと思っていた。

しかし現実は非常である。いなかった。

どうしろというのか地理を確認したところ日本だった。

ならば名目上の保護者はいるはずであると、家探ししてついに見つけることができた。

どこかの弁護士らしい。連絡はつかなかった。

入学案内が届いていたことをを確認する。

『聖祥大学附属小学校』

二次元だよ。リリカルなのはだよ。

もはや投げやりであった。

そうしてそそくさと入学の準備を終えると彼は気を失うように眠りについたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一晩経って前世のことなどうっちゃった彼は検証した。

『俺の考えた最強に厨二臭い能力』をである。

思いつく限り能力を記述した彼に死角はなかった。

特典を決める際に戻るボタンがあったことを神に感謝したい。

さらりと流したものであったが、名称に反することを備考欄に書いてもエラーが出てしまうのだ。

しかし、その括りは非常に緩いものでもあった。

こちらの認識がキーになっているようで、かなりむちゃくちゃな理屈でも通るのだ。

筋が通っていなくもないと思うことができれば。

たとえば、『名称』時間に関する能力ならば時間を引き裂く、砕く、止める、緩める、食べると、どういうことですか?という内容でも通ってしまうのだ。

何も考えず時空間倉庫なんていうものを記入すれば備考は通ってしまう。

空間なんて名称には入ってないだろと突っ込みを入れながら、進めようとすればエラーが出る。

長文化して時間を○○するにしてしまうとその範囲から出たものは軒並みアウト。

きわめてファジーなものであったため屁理屈が好きであった彼は『ヤミ』にすべてを懸けた。

というよりどこまで行けるのか興味がわいたというべきか。

夢だと思ってはいても、凝り性な人間はどこまでもやってしまうという見本のような話だった。

しかし、その時のことを感謝する時が来ようとは人生とはわからないものである。

 

話がそれたがつまり能力の検証を行ったのだ。

制限など特につけたりした覚えはなかったのだが、能力の使用には何らかのエネルギーが必要なようであった。

魔力、気力、カロリーなどなど能力価値から考えれば非常に低コストではあるようであったが、使用するのである。

一度の使用程度には何の問題もなかった。が、長時間、高出力での使用には厳しいものがあった。

この時は仕様として諦めていた。

デメリットよりもメリットが遥かに勝つが故に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月日は流れて小学3年生の春。

俗にいう原作開始の時期、俺は何とか小学生をしていた。

保護者がいないというのが最も面倒らしい面倒事だった。

口座に金だけは大量にあったので、お手伝いさんでも雇おうかと思ったが、いかんせん俺の現在の実年齢は子供である。

どこにガキから金をもらって働いてくれる大人がいるというのか。

そもそもどこに求人を出せという話でもあったが、出したところで子供が(ry

ともかく、それは解決して素晴らしいメイドさんの入手に成功したのでまあいい。

入手までが非常に大変だったが。

飯、風呂、掃除にご近所づきあい。

小学校に通いながらでは非常につらかった。

なにより手足が短い。

能力による補助がなかったら人生投げていたとしても、俺は一向に不思議じゃない。

そうしてついに感慨深い、原作の時期である。

転生してから分かったことと言えば、もはや当然と言っていいレベルの話で主人公高町なのはとは同い年であったこと。

どうやらほかにも転生者と呼ばれるものがいたこと。

こちらの知らない転生者も当然のことながらいるのだろうけれど、お互いに関わる気がなければ問題ない。

原作介入とかしちゃうんだろうなーと、どうにもあれであるが。

放っておけば勝手に解決してくれる保証もないわけで、完全に無干渉とかありえないけれど。

ただ余計なことはしないでくれと切実に願っている今日この頃。

盛大にブレイクを実行した俺のセリフではないのだけれど、仕方のないことである。

しかし、管理局のあるミッドチルダ方面に転生している善人がいた場合、原作がそもそも始まらないという非常に心休まる結果もあるのかもしれない。

がんばれ、まじでがんばれ!と無責任なエールをそんないないかもしれない人に送っておく。

そうなれば、なのはが翠屋を継ぐ未来もあるかもしれない。

あそこのお菓子美味しいんだよな。

さすが本職のパティシエのいる店である。

コーヒーも好きだが豆はすでに独自のルートを開拓してあるし、俺の好みは一般人受けしない胃に悪そうな苦味にもあるのでうまいと思ってもそこに行って飲みたいほどでもない。

それととらハはほぼ混じってないんだよね。

地形的な意味ではほぼ同一だと思うけど、登場人物がいないいない。

なのはがぼっちということで推して知るべきだったかもしれない。

俺も詳しくはないが居候兼従業員とか世界の歌姫とかいた気がする。

何というか重ならなかった気配みたいなものを感じる。

探してみれば名前が同一の人もいたけれど、こう、うまいこと噛み合わなかったというか?

 

久遠もいなかった。

 

久遠もいなかった。

 

モフモフは正義だというのに、なんたるッなんたる悲劇。

正直転生したとわかってリリなのと理解した瞬間に最も期待したのに、いなかった。

別れがまず来ない動物とか素敵だと思うんだ。

 

まあ俺の悲劇について語ってしまえば、一万字ぐらいあっという間に消費してしまう上にループが入るからおいておいて、転生者について語ってみたいと思う。

 

 

転生者その一、神崎隼人君の場合

 

彼は一見いたって善人のように見える。

他のクラスメイトにも人気が高い。ただし原作3人娘は除く。

このことから推察するに、おそらく彼はハーレム幻想なんかを抱いてしまったロリコンである。

下心かよこしまな思いかは知らないが、とりあえず危機察知能力の高そうなすずかやアリサに特に警戒されている。

何というか一見仲良さそうなのに、一歩引かれているというかそんな感じだ。

たとえば「どっか遊びに行かない?」と聞かれても十中八九断られている。

やんわり拒絶されているのに彼は懲りない。くじけない。

あのガッツはどこから湧いてくるのだろうか?そこだけは尊敬してもいい。

 

転生者その二、ギルガーメス・桜木君の場合

 

彼の特筆すべきところはあれだろう。どう見ても外見が子ギルさんではないですか。

きっと特典でギル様になりたいと願ったに違いあるまい。

人生ロールプレイングを楽しんでいるのか、割と傲慢というか横暴なのである。

子ギルさんはもっと性格がよかったと思うのだが、残念なことにロールは大人の方である。

どうにもなのはに非常になつかれている所を見ると、トラウマの時期にやさしく接したというところだろう。

あるいは拳で殴りあった仲なのだろうか、アリサのように。

子供に興味がない健常な精神をしているようで、不良のお兄さんといった立ち位置に落ち着いているようである。

神崎君にはどうも気に入られていないようだが。

自分が3人娘と大して仲良くできないのに、仲良さげにしているからだろうか。

 

転生者その三、メガネ君(名前は忘れた)の場合

 

メガネをかけてる。以上。

冗談は置いておいて、テストにおいて常に満点を取る真面目くん。

だが俺は知っている。

なぜか紛れていた大学入試レベルの因数分解の問題とかうっかり解いてしまって、そのことを公表されてしまったときにしまったという顔をしていたことを。

なお、俺はしっかりと回避した。

なぜか中学レベルの問題とか普通に出てくるので、うっかりそれ以上の問題を解かないようにしないと目立ってしまうのだ。

先生が公表しやがってくれるもので。

コツとしてはわざと三角がつく回答を混ぜることだ。あとは間違えるジャンルを決めておく。適当に間違えると先生にばれる。

それらができないと、プライドの高いアリサに絡まれるようになりますと。

そして奴は絶対にコミュ症だ。間違いない。

いや精神年齢合わないのは理解できるんだが、ちょっとクラスで浮きすぎだろ。

思わず、あまりにもボッチレベルが高すぎたからうっかりやらかすまで毎日一緒に飯食ってたよ。

教室で一人で弁当食うとか、気を使わないほうが俺くらいの精神年齢だとおかしい。

せめてどっかで隠れるように食ってくれ。

 

転生者その四、東郷未咲君の場合

 

精神年齢が子供なのか、いたって普通にクラスになじんでいる。

学校ではそれなりにしゃべり楽しく過ごしているが、誰かと遊びに行くのは稀。

曰く、「休日は寝ていたいんだ」とのこと。

クラスメイト達の評価は「普通にいい人だけど。ちょっと変、うまく説明できない」とのこと。

よく、女の子の頭を慈愛の表情で撫でるがやましい気持ちは一切なく。

冷やかされても、「俺、16歳以下には興味ないんで」とコメントして恥ずかしがる様子は一切ない。

真顔で言われるため、冷やかした方がうろたえることもしばしば。

三人娘の頭もよく撫でるのでこれまた神崎君には好かれていない。

 

これらが発見されている転生者と思しき人物たちである。

お互いなんとなく察しているに違いないが、特にそのことについて会話はない。

間違っていたら頭がおかしい人になってしまうからだ。

他にもいるかもしれないが、行動がどう見ても普通の小学生じゃないのはこの4人に絞られる。

神崎君については気のせいということもあり得るが、きっと転生者であってくれるに違いない。

しかし、俺以外には普通の親が存在しているのはどういうことだろうか。

すべてが俺の被害妄想なんてこともあるのかもしれない。

むしろそうであってほしい。一人だけハードモードスタートだったとか、目から汗が流れてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学生として過ごしだして一年ほどたったある日のこと。

今日も今日とてヤミを使って家事に励んでいたのだが。

 

(あー毎日のこととはいえ結構疲れるなー)

 

いい加減なれてもよさそうなものだが、なかなかそうもいかず能力使用の後の疲労感を覚えていた時のことであった。

 

(外付けバッテリーとかあったらきっと疲れないのに)

 

そこで閃いてしまった。

いや思いだしたというべきか永遠結晶エグザミアその存在に。

彼のヤミは努力のかいあって大変幅広い能力を持っている。

その中にこんな力もあった。

闇に分類される者に対する絶対権限、闇に取り込んだものの複製改変。

闇の書、砕けえぬ闇。

無限エネルギー機構に加え、メイドが手に入るかもしれない。

彼はすぐに行動に出た。

幸い闇なんて名前の付いた物品は探すまでもなく意識すれば感じることができた。

闇の書の精神空間に乗り込んだ。

 

「お前が管制人格だな」

 

「ッなにものだ?ここは闇の書の中、目覚めていない今、主ですら干渉できないこの場所にどうやって現れた」

 

「そんなことはどうでもいい。俺は我儘だ。とても我儘だ。大事なことなので二度言ったぞよく覚えておくように」

 

理解できない。そんな様子の彼女にこちらの言いたいことだけを一方的に告げる。

 

「騎士たちと今の主を助けてやるからお前は俺の物になれ」

 

「そんなことは不可能だ。私は主を蝕みやがて死なせてしまう魔道書。長い歴史の中そんなことは誰にもできなかった」

 

「実際ここにアクセスできてるだろ。今までいたのかそんなのが?」

 

「いなかった。だが、しかし、本当に可能だというのか闇の書の闇を払うことが?」

 

「闇と呼ばれている以上俺にどうにかできないわけはない」

 

「……ならば頼む。私はどうなっても構わない。騎士たちと、主を救ってくれ」

 

「契約成立。今日から俺がお前の主だ!あとから何を言っても聞かないからな。あと俺エロいから。普通にエロいから。今はまだ子供だからそんなにしないけどそのうちご無体なことするから!」

 

「私など、女としての魅力に乏しい者に奇特なことだな……」

 

「普通にかわいいから!あとおっぱいでかいから!そんなこと言うと罰が当たるぞ!」

 

かくして闇の書は守護騎士システム以外の機能はオミットされほとんどガワだけとなったものが八神家に残されたのだった。

リリカルなのはAs始まりません。

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