幻想的な奇跡の光が迸り、闇夜を照らす。
それは神々しくも見え、そして空から闇が生まれた。
闇は泥となりて、ことごとく滅びをもたらした。
そしてそれをただ見つめる男がいた。
「これにて劇は閉幕。記憶と何ら変わることなく悲劇であり喜劇であった」
男は感慨深そうに聖杯が破壊されたことで溢れ出でた泥を眺める。
だが泥というのも的確ではないのかもしれなかった。
あれは、この世すべての悪に汚染された魔力の塊であり、此度の劇で散っていった英霊たちの魂でもあった。
空には穴が開き、それは黒い太陽にも、涙している瞳のようにも見えた。
「予定調和は終わりを告げた。だがしかし残ってしまったものがある。それが俺と縁深きものであるというのならその掃除をすることも俺の仕事というものだろう」
―――――なぁギルガメッシュ王よ
瞬間、男から閃光が放たれる。
そして、その先にいたものは先ほど言の葉に乗せたギルガメッシュその人であった。
ギルガメッシュは驚きの表情を浮かべ、体を貫かれた。
「グッ」
男は突如として苦悶の声を上げた。脂汗を流し何かに抗うように胸をかきむしる。
どれほどそうしていただろうか、やがて苦痛から解放されたのか荒くしていた呼気に落ち着きが取り戻されだした。
「これは予想外。ただ魔力として散るかと思いきや最後に乗っ取りをかけてくるとは、俺と奴が存在として近かったが故か。あるいは英雄王の意地か」
思わぬ土産をもらってしまったと男はクツクツと笑う。
ひとしきり笑った後何が起きたのか呆然としている破綻せし聖職者を見る。
「精々気張れよ言峰綺礼」
どうせ聞こえはしない応援を投げかけ、地獄から背を向ける。
男の容姿はギルガメッシュに酷似していた。ただその瞳が蒼いことを除いて。
◆
第四次聖杯戦争にて、親を、友を失った少女がいた。
名を遠坂凛といった。
少女はあふれ出そうになる感情に、家訓を胸に歯を食いしばった。
―――――遠坂たるもの余裕を忘れるべからず、常に優雅たれ。
亡き父の教えだった。
聖杯戦争終結当時、母は生きてこそいたが、ただそれだけだった。
脳にひどい障害を負ったということだが、それよりも心が壊れてしまっていたようにも思える。
体は満足に動かず、何もない所へと夫への呼びかけを行い、そこにあたかも夫が、遠坂時臣が存在するかのように振舞う。
そして凛のことなど見向きもしなかった。
そんな母も先日ついに旅立った。
そんな母でも、いないよりはマシだった。
いなくなってみれば顔を合わせることの方がつらいと思っていた母も、いない方がつらくなった。
これで血のつながった家族というべき存在は、妹ただ一人を残す限り。
正確に言えば母方の祖父母こそ健在であったが、血縁の情を感じるほど親しくはなかった。
家が魔術師の家系で、祖父母は一般人だったことも関係の断絶につながったのだろう。
そして残された妹とは、自ら会いに行くことも、会って親しくすることも許されていなかった。
それが魔術師というものだったから。それが間桐との約束であったから。
親しかった友人すらなくしていた凛が接するのは、もっぱら父の弟子だった言峰綺礼という男だった。
凛はできれば関わり合いになりたくない程度には言峰綺礼という男が苦手だった。
魔術については一応兄弟子ということになるのだが、教わることはすぐになくなった。
才能があったから綺礼に教えられる限界はすぐに訪れたのだった。
魔術を教わるのと同時に中国武術を綺礼から習っていた。
とはいっても、型を教え、反復するように伝えると時々様子見がてらに型の確認と組み手をする程度で、頻度はそれほど多くなかった。
あっという間に一人でいる時間が増えた。
家訓をつぶやき、広すぎる火が消えたような静かな屋敷に耐えるのだった。
そんなある日、
「だれか助けてよ……。桜に会いたいな」
ポツリ、誰もいない家の中に本音が漏れた。
「だめだめ!しっかりしないと、さびしくなんてないんだから!常に優雅たれ!」
パシン勢いよく頬を叩き己に活を入れる。少女は強かった。いっそ悲しいほどに。
「う、いたたたた……」
いささか強く叩きすぎたらしい。こぼれた涙はきっと痛みのせいだ。
「えっなにが!?」
涙を拭うために持ち上げた袖の後ろから強烈な光が迸る。
「いったいなんだっていうのよ……」
少し気弱になった途端にこの仕打ち。さすがの凛も疲れが隠せなかった。
やがて光が収まるとそこには、一人の青年が尻餅をついていた。
「何の冗談だこれは……」
青年は凛を瞳をこぼさんばかりに見詰めていた。
「あ、あんた何者よ!ここが魔術師の工房だと知った上でのろうぜき!」
「家で寛いでいた俺をどんな手段を用いたかは知らんが、呼び出しておいて何という言い草だ」
「あんたなんて呼んでないわよ!勝手に来といてずうずうしいわ!」
「魔術師の工房に侵入するならするでもう少しましな格好をするわ。たわけめ」
青年の格好はいわゆる甚兵衛と呼ばれる半袖半ズボンな格好だった。
そしていかにも寛いでいましたと言わんばかりに、湯気の立つコーヒーを片手に持っていた。
尻餅をついておきながら一滴も溢していないあたり、無駄な技量を感じ取れる。
そして凛には目の前の青年が嘘を言っているようにはとても思えなかったが、自分が呼び出したとは断固として認めるつもりがなかった。
「そんなこと知らないわよ。とにかく私は悪くないからね!」
「やれやれ我儘な小娘よ。だが、故意ではなかったというのは認めてやろう。お前のような未熟な魔術師が空間転移の真似事をできるとも思えんしな。最も未熟でなくとも現代の者らにはほぼ不可能だろうがな」
「なにそれどういうこと?」
「なに、このレベルの空間転移は現代では魔法級とそれだけの話だ。小娘」
小娘というたびに凛の眉根が寄っていく。不機嫌な様子が明らかに見て取れた。
「凛」
「ん?」
「小娘じゃない。私の名前は遠坂凛だって言ってるの!」
「ああ、いささか脈絡がないがまだ自己紹介もしていなかったな。俺はギルガメッシュ・アークライトと名乗っている」
◆
ギルガメッシュ(偽)は予想外の展開に驚愕が隠せない。
このギルガメッシュ(偽)中身は元一般人の現逸般人である。
太古の昔、まだ神秘や魔法に満ちていた世界にて現在でも魔法に届きうる降霊術の鬼才がいた。
その鬼才は若かりしものならだれにでも起こりうる全能感、いわゆる中二病を発症していた。
俺にできないことは何もないと言わんばかりに、英雄王たるギルガメッシュを自らに降ろしその力のすべてを簒奪しようなどと企んだ。
だが当然ながらそんなことができるはずもなかった。
鬼才から見れば未来、聖杯戦争と呼ばれる戦いに英霊を降ろすにはそのままでは力が強すぎ、クラスという枠に収めることで力を縮小してそれでもなお、基本的に魔術師たちには御せないのだ。
令呪と呼ばれる絶対命令権、膨大な魔力を宿すそれすら強い意志を持って抵抗されてしまえば破られることもある。
しかし鬼才もさる者、ギルガメッシュに匹敵しうるほどの強固な自我を持っていた。
そして準備をしていた、ありとあらゆる外法、技を用いて自らをブーストしギルガメッシュを封じ弱らせていた。
ひたすらにお互いの自我を喰らい合い、このままではギルガメッシュに負けないかもしれないが勝てないと思った鬼才は自らの才能を存分に振るいどこかから呼び寄せておいた己に近い魂を燃料にギルガメッシュを食い尽くそうとした。
だがすでに弱っていた自我は、魂は、呼び寄せた魂に喰らわれてしまった。
そうすることで増大した魂はこれまた弱ってきていたギルガメッシュの魂をすら取り込んだ。
だが強大な自我は取り込んだ魂を変質させた。
そう、中二病を発病させたのだ。
ついでにそんな無茶をした、鬼才の体は当然ボロボロであった。
ある種、究極の生命体が誕生したのだがその残された時間は大変少なかった。
気が付いたと言えるかすら怪しい朦朧とした意識の中、三つが混ざることで誕生した自我はこのままでは死ぬことが分かった。
藁にも縋る気持ちで何かを取り出し、飲み干した。
そして次に気が付いた時には、ギルガメッシュの容貌をしながら鬼才の蒼い瞳を残し、元一般人としての自我をほとんど残したまま目覚めた。
そう、不老不死の存在として。
それから元一般人はギルガメッシュと鬼才のすべてを継承していたことから、名をギルガメッシュ、姓を鬼才のものであるアークライトと改めた。
そして紛らわしいので古い時代においては主にアークライトと名乗った。
中二病を発症したアークライトはその能力を存分に振るい、一般人の価値観とかを投げ捨て、我儘に強欲に振舞った。
具体的に言うと、世界に満ちる神秘を、蔵の中へと収める神の財宝を狙い続けた。
元一般人には収集癖があったのだ。
人造の物は基本的になんでも入っていたので、神造の物をひたすらに狙った。
やがて後の神話に盗賊王アークライトと言われた男の誕生であった。
この男の逸話には神話による括りはなく、あちらこちらに登場することからよほど人気のあった神だったのだろうと言われている。
実際男の逸話には、小気味好いものが多く残されていた。
あらゆる神話にてかなりの神に嫌われているが一部の神とは大変仲が良かったらしい。特にヘパイストスという神とは仲が良かった。
仲を深めたエピソードに出てくる、淫らな妻のしつけ方という著書はあまりにも有名である。ヘパイストスへと送られたそれを狙う神々も数多いたという。
もっとも神々が遠くなり近代に入りだす頃には、中二病も落ち着き過去を思い出し身もだえすること多い。
話を戻そう。
つまるところ彼は死んでいなかった。死んでいなかったものを呼び出すとはそれすなわち空間転移である。
そして、彼は思った。
なんぞこれ?
◆
というわけで、長い年月を経ても中身の精神年齢が変わらない、元一般人な俺はなかなか得難い経験をしていた。
というより得たくなかったともいえる。
家でやらなければいけない仕事ももうなかろうと、隠居生活を楽しんでいればいきなりの召喚である。
くどいようだが召喚というのは物質界におけるものを呼ぶのであれば空間転移以外の何物でもない。
今の時代においては基本的に魔法レベルの技巧である。
そしてまさかの呼び出しに慄いてみながら召喚者を見やればロ凛である。
ちょっnightの方にはかかわるつもりが一切なかったんですけど。
混乱中でも口はよく回る。
この体の謎スペックには感謝してもし足りない。
むしろ反射的に喋った方が外見相応の口調になるという。俺の存在意義はいったい。
こうして反射に頼る性格が形成されたのは仕方がないよね。
そうこうしているうちに自動翻訳会話機能付きの脳は意地っ張りかつ不機嫌な凛を言いくるめたらしい。
さすがだ俺の口。
すごいぞ俺の脳。
さて結局どう纏まったかというと自己紹介の後ネチネチ口撃しまくって、なんだか目が赤かった幼女をさらに泣かせて、なんやかんやあって、桜を誘拐してくることになったらしい。
どうしてこうなった。
◆
まったく何故俺がこんなことを。
そんなこと思いながら夜、間桐の家へと突貫をかけていた。
間桐邸には意外なことに結界の類がなかった。正確にいうなら侵入者を拒む類の結界がなかった。
多くの二次創作にあるように蹴破ってやろうと、嬉々としていたところがなかったら、嘘になるぐらいには楽しみにしていたというのに。
蟲ジジイの怠慢だぞこれは!と理不尽な怒りを燃やしつつ襲い掛かってくる蟲を魔術で消滅させながら、蟲蔵を目指す。
そうこうしているうちに、
道に迷った。
この家広すぎるだろう……。
待てマッピングはできている。ただ歩いて行った方に地下につながる階段がなかっただけだ。
そして脳内マップの空白を埋めるように探索をしているとボスが現れた。
「ひょひょギルガメッシュよ。この間桐の家に何の用かのう?」
「やっと現れたか、遅い。桜という小娘を誘拐しに来た」
そうだよ。人がいないから悪いんだよ。聞くこともできないからぐるぐる回る羽目になるんだ。
反応は捉えられるから最短距離で行こうと道なりに進んだら、大回りルートに突入させられるんだよ。
「桜を?いったいどういう風の吹き回しかのう。神父の命令か?」
「あのような奴にこの俺が命令を受けると思われていることが気に入らん」
「そうじゃのう。お前は命令なんぞ聞かんな。間接的にマスターを殺してしまうほどじゃからな」
「それがどうした?さて、貴様のような醜悪な汚物はここで消え去る定めにある。この俺の手によってな」
さて、別人なわけだが気づいていないならこのまま乗っかっておこう。
否定する意義も見いだせないことだし。
「こわいのう。じゃが最近とてもいいものを手に入れてのう。サーヴァントならこれには耐えられないじゃろう?」
ジジイの形代の前に穴が開き俺を取り込もうとうごめく何かが放たれた。
そういえばこいつ聖杯のかけらを回収して、桜経由でアンリマユを少し扱えるんだったか?
「だが効かん」
そのまま、適当な魔術をぶっぱして吹き飛ばす。あたってやってもいいのだが俺の体構成エーテルじゃないし。
でもなんかキモイじゃん?当たりたくないだろ精神的に。
「なんじゃと、そんなばかな!」
あれなんか驚いている?そういえば受肉しているはずのギルさんUBWルートで穴に落とされていたな。
実は実体があっても退けられない仕様だったのか?
そんなことを考えつつも俺はすかさず取り出した繋がっていれば経路から侵略して魂喰らってしまうような、浸食型ソウルイーターさんをジジイに突き立てる。
「疾く去ね」
「バカな!憑代から本体にッ……」
悪は滅んだ。さすがソウルイーター先生。群体っぽい相手には特効だぜ。
というより蔵の中身が万能すぎて生きるのに優しい。
さて、さっさか土地の権利書とかと一緒に桜を誘拐せねば。
◆
いつものように蟲に全身を這い回られていると、誰かがここへやってきたようだ。
とはいってもおじいさま以外にここに来る人なんてもういないのだけれど。
そんなことを考えていると金ぴかな人が現れた。
「ここか、手間を掛けさせおって…しかし、まったくもって醜悪な」
だれだろう?おじいさまじゃない人がここに居るなんて不思議。
「貴様以外にいないだろうが一応の確認だ。貴様が桜で相違ないな?」
「はい……」
金ぴかの人は蟲に埋まっていた私をまるで猫の子のように片手でつかみ上げると、視線を合わせてそう、たずねてきた。
私は間桐桜それ以外の何物でもなくて、間桐の魔術を継承させるためだけにいる。
「ちっ胸糞悪い」
私の顔を見て不機嫌そうに吐き捨てると、そのまま抱えられて蟲蔵の階段を上りだした。
「今日の訓練はもう終わりですか?」
ここに人がいて私を連れだすということはおじいさまの指示なのだろうと思う。
「終わりだ。これからは別にしなくともよい」
「でもやらないとおじいさまに……」
「あのジジイは死んだ。もうこの世のどこにも居はしない」
えっおじいさまが死んだ?そんなことがあるわけがない。おじいさまに逆らったらみんないなくなってしまうんだもの。
「そもそも奴が生きていれば、お前を取り戻そうと動くだろうよ。もはや家にしか寄る辺のなかった奴がお前を逃がしてやるはずもない」
言ってることはうまく理解できないけれど、おじいさまが私を取り戻そうとするということは理解できた。
確かにそうかもしれない。
じゃあなんで、おじいさまは現れないの?
おじいさまが死んだ?本当に?
「私をどこに連れていくの?」
そう、なら私はどこへ向かっているのだろう。いつの間にか金ぴかな鎧から普通の服へと変わっていた人は、夜の街へと向かっているようだった。
「遠坂邸だ」
とおさか……遠坂……なんで今更……。
「お前の母と父は死んだ」
そっか、死んじゃったんだ。じゃあなんで?
「凛が泣いてお前に会いたがっていた」
お姉ちゃんが?遠坂の家には私はいらない子だったのに。でもどうでもいいかな。
あそこよりひどいことはそうはないから、どこでもあまり変わらない。
それよりもこの人はどうしてこんなことをしているんだろう。
「そうか疑問か、俺は別に底なしの善人というわけでもない。殺す奴は躊躇なく殺すし、奪ったことも数知れぬ。だが、子供ぐらいには甘くある」
そこで一息ついてまた続ける。
「見知っていなければ、勝手に死ねと思う程度にはどうでもいい。だが、見知ってしまっているならば俺の好奇心とわずかな良心に基づき。俺の基準で、俺の思うとおりにする。邪魔するもののことごとくを粉砕し、蹂躙し、俺を押し通す」
そして大人は自己責任だから、俺の眼に入らないように気を付けて死ね。それだけ言って黙った。
私はこのまま遠坂の家へと連れていかれるのだろう。
この人の思った通りに。
この人の決めたとおりに。
すごいなと思った。
大きいなと思った。
そして、
「……あったかいな」
そういえばと思う。こうして誰かに抱き上げられるのはいつぶりだろうか。
会話らしい会話をしたのも、子供として扱ってもらうのも。
なんとなくそう思った。
◆
気が付けば桜は眠っていた。
どれほど死んだような目をしていても子供は子供か。
時代もあったが相当悪逆非道なことをしてきた自覚はあっても、子供にだけは甘く生きてきた俺にはなかなかどうして精神的にイラつくお子様だ。
すべてを諦めている。
すべてを求めていない。
ただ流された方が苦しくないから。
これはあれだろうか、どろっどろに甘やかせという俺に対する挑戦だろうか。
そこまで行くと俺という見本のようなダメ人間が出来上がるので、ほどほどがいいのだろう。
「あー予定外の多い事」
Zeroにおけるギルガメッシュを同族嫌悪よろしく美味しいところでぶち殺し、ついでに長らく盗賊王していたおかげで身についた権能で、伝承型宝具をランスロさんあたりからがめて、さてあとはもう人類が滅びるまで隠居だと決めて長野に邸宅を購入して暮らしていれば、召喚である。
そのままさよならしてしまえば、話は早かろうが、知り合った一人暮らしの幼女を放り出すのは何とも具合が悪い。
そして言うならその幼女には妹がいて、面倒を見てやれば結局のところその妹も関わってくること確実。
仕方がないので妹も拾って、成人するまでは面倒を見てやろうと、口が勝手に結論を生み出した。
そうなってくると聖杯戦争起きない方が面倒がなくていいんだろうが、まあまだ十年ぐらいあるから気長に考えればいいだろう。
それにしても育児って似非とはいえギルガメッシュの仕事じゃないな。
◆
かくして凛と桜は俺によって再会した。
目覚めた後の様子に凛が食って掛かってきたが、俺のせいじゃないし、隠すようなことでもなかろうと本当のことを適当に吹き込んだ。
結果、凛がガン鳴きした。
泣きながら桜に縋り付き、謝っていたがお前別に悪くないだろう。
桜にしてもまだ憎らしく感じるほど感情が育ってないだろうし。
そして、無表情幼女に縋り付く幼女となんだかシュールな光景が誕生していた。
それからというもの凛はひたすらに桜を構うようになった。
和解?はまだしているとはとても言えないが、凛が話しかけてもぼーっと見つめ返していることが多い。
俺が話しかけても同様であまりしゃべらん。
元のように仲のいい姉妹になるには結構な時間がかかりそうだった。
だが、どうすればいいのか戸惑っている雰囲気を感じることもある。
言ってみれば一度完全に価値観を破壊されたのだ。
普通というものになじむにはそれ相応の時間がかかるだろう。
原作における桜はよくあんなに普通に振舞えるように育ったものだ。
俺がこの家に連れてきたからなのか、俺が寛いでいると近寄ってくる。まるでひな鳥のようだ。
懐かれているのだろう。たぶん。
凛が歯ぎしりしながらこちらを睨むのでいささか居心地が悪いのが欠点だが。