やっぱ無茶するのを一匹入れるだけで作品ってほのぼのするよね。
「レイさーん!」
まだまだ幼い灰髪をした少女がぶんぶんと手を振りながらかけていた。
「アトラ、ミカヅキはいっしょじゃないの?」
振り返りながら言ったのが、レイ・ドラクエ。本作の主人公。
彼女は日課の畑仕事を行っていた。
「もう、ミカヅキは仕事ですよ」
「ああ、そんな時間だったっけ」
というより、彼らにはそもそも自由時間という物が碌にないのだ。
精々買出しに付き合うぐらいしか街を出歩く時間はないだろう。
レイとしては死ぬわけでもないのだからと、特に思うところはない。
火星とはそれほど他者に寛容ではないし、全体的に貧しいのだ。
それが我慢ならないのなら、やがて取って代わられるだけだろう。
弱肉強食が根付いた星それが火星だ。
「いやーそれにしても畑おっきくなりましたね!」
「まあ、一応お金かかってるからねー」
レイは自身に入ってくる金銭のほとんどを畑に使っていた。
もともと浪費癖もなく持て余していて、使い道に悩んでいたところに、畑がもっといっぱいあったら、飯もたくさん食べられるのにと言った小僧がいたからである。
広くなった畑を見て思う。
(ここにきてもう何年がたったんだったか)
アホじゃないのか。
火星の大地に降り立ってしまったとき、彼女はそう思った。
いや、彼女というには語弊があったかもしれない。
かつて彼女は、彼であった。
しかし、今は彼女なのでやはり語弊もなかった。
俗に言うTSである。
トランスセクシャルの略。またの名を女体化という。
しかもその過程に意味はなく、その結果にもやはり意味はなかった。
俗に言う神様転生である。
しかし、転生であるかは謎だ。
怒涛の勢いで説明がなされ、気が付いたらそこに立っている。
どうしようもなかった。
知りたいことを質問するまでもなく、じゃガンバとばかりに投げ出されてしまった。
しかも幼女である。
幼女である。
大事なことだ。
生きるのは熾烈を極めるかと思われた。
しかし彼女には力があった。
お約束のアレである。
彼女はダイの大冒険、最強の竜の騎士である(ダイ仕様エネルギー追加)
なお、世界的にみると科学全盛の超能力の欠片もない世界観の模様。
彼女は困った。親もなければ金もない。人間関係も白紙。
困ったが大した事でもなかった、粗末とはいえ服は着ている。
最悪暴力でどうとでもなるだろうと、いろんなものを諦めた。
とりあえず腹が減るまでと、夜の街をぶらついていたら、人さらいにあいそうになった。
そうか売れそうな見た目だったのか。
そうかそうか。
ぶん殴った。
大分軽くのつもりだったがあっさり、吹き飛んだ。
竜闘気を纏っていなくともこの強さ。
さすがはドラクエ時空ハイスペック。
ぞくぞくと次の犠牲者たちが現れた。
拳銃をバカスカ撃ってくる。しかし、竜闘気は貫けない。
気が付いたら全員伸していた。
とりあえず全員から財布の中身を徴収し、トップに殴り込みに行った。
アングラな界隈が存在するということは、必然まとめ役が存在するのだ。
決断は早かった。
あとからあとから湧かれても困るのだ。
やるなら一度に徹底的に。
マジで銃が効かないんですけど!と叫ばれながら化け物ぉぉぉぉ!と向かってくる敵をばっさばっさと薙ぎ払う。
仮に警察機構を呼んだとしても、この幼女にやられましたとはだれが信じるというのか。
つまり勝つしか相手にはなかったのだ。
もともと裏稼業は痛い腹を探られたくないから、そんなものに頼れなかったのもあったのだろうけれど。
そして一夜にして、幼女は裏社会のドンとなった。
彼女の意向が、すべてに優先される。
ドンとなった彼女は言った。
対戦車ミサイルを自分に打たせて。
「文句があったら私を殺せ、いつでも何人でもどんな相手でも、一人で受けてたとう。誘われよう罠に掛かろう。ただし、私以外を狙えば私はそいつに地獄を見せよう」
爆炎の中から無傷で帰還した彼女を見て、かつての裏社会のトップたちは膝を屈することを選んだ。
服に焦げ跡しかないのをトリックだといった奴は「ああ、トリックだよ」とサブマシンガン足もとに打たれた後、撃った銃を鉄塊にして投げつけられ、ミンチになった。
現代社会に生きる文明的な日本人だったとは思えない決着のつけ方だった。
そして彼女に逆らう者はいなくなった。
そして、一夜にして後の憂いがなくなってしまった。
とりあえずと世界観の把握にいそしむ。
情報社会はいいものだ。
動くことなく調べ物ができる。
そしてネットがあるくせに動画サイトも、掲示板もないとか舐めているのかと裏稼業の連中に命じて作らせた。
それはともかく、厄災戦とかいういかにも創作に出てきそうなネーミングを発見。
やはり調べ物は歴史に限る。
そしてモビルアーマーにモビルスーツ、そして極め付けにガンダムフレーム。
「ここはガンダムかよ!」
思わず叫んで、下僕たちに生暖かい目で見られる。
果てしなくイラッとしても、叫んだ己が悪い。
調べれば見た目のデータは意外と豊富だ。しかし全然ガンダムに見えない。
ガンダムはきちんと決戦兵器だが、モビルアーマーの扱いが良すぎる。
おかしい。
ここは本当にガンダムなのだろうか。
とりあえず見たことがあるガンダムがない。
新作だろうか。
そういえば一話とwikiと最終回付近だけ見たガンダムがあった。
あれだろうか。あれもガンダムというには?という感じだった。
あれか、バルバトスと言うアイテム使うと怒ってくる印象が強い名前したやつ。
そうかガンダムフレームは悪魔の名前か。
つまりここはそのガンダム時空。
どうしよう、メインキャラがガンガン死ぬことしか覚えてない。
地球でも火星でもドンパチがたくさん起きる。
まあ、最悪殴ればどうにかなるか。
「それでですねえ、ミカヅキが……」
なんてことを考えていたら、なぜかどっぷり主人公陣営と関係を築いていた。
あれか、暴漢に襲われているアトラを助けてしまったのが原因か。
ワレのシマで何してくれとんじゃワレェ的な奴だったというのに。
なぜかCGSにお邪魔したりして、ビスケットやアトラと茶を飲んだりするようになってしまったのか。
ちなみに、私がトップの裏組織は今ではなぜか動画サイトや掲示板が大当たりしたせいで、コンテンツ産業界の大会社の裏組織になってしまっていた。
クリエイターたちを支援するようにはいったけどさ。
自社持ちの通信衛星って何それ。
娯楽がここまで衰退している世界だとは知らなかった。
私は気が付けば会長である。
そして親しい人間は誰もそれを知らないという。
たまに黒服がやってくる、どこかのお嬢様的なサムシング的扱いを受けている。
私はお前らが乗ったモビルワーカーよりも強いけどな!
■
はっきり言って私が畑の世話をしているのは趣味以外の何物でもない。
なぜなら、それなりの頻度で組織の引き締めや敵対組織を破滅させるのに、留守にするからである。
なので、私の身の回りを世話させているメイドや下僕がいない間の畑仕事をする。
とはいっても、最近は私の恐怖が刻み込まれたのか、この界隈でそんなことを言うやつらも随分出てこない。
「おーい。下僕頑張ってるかあ!」
「へい、姐さん!」
十代前半の小娘が姐さんである。大爆笑だ。
なお、私のそば付きたちには自分の安全を第一にさせている。
そのために鍛えさせているし、普段着からして防弾仕様である。
少々いかつくなりがちなのが欠点だが、機能性重視ということで勘弁してもらいたい。
私を守るとかいうバカがたまに湧いてくるが、実弾戦闘訓練、ただし敵は私だけを見学させると土下座してくる。
私も実弾でないと緊張感というか弾速的に満足できないので、私の相手はミサイル機動兵器アリアリのオール実弾である。
そして理不尽を目の当たりにした立派な戦士へと彼らは成長していくのである。
あれよりひどくない。そう思えるだけで生存率はうなぎのぼりと評判だ。
そんな私はアトラたちに付き合って、ビスケットの実家的な畑にお邪魔していた。
子供たちが轢かれそうになったので、蹴りで車を止めた。
車にはしっかりとした足形ができてしまった。
「おいおい、君の足は何でできてるんだ」
「肉と骨ですが」
答えたものの、なんだか残念そうな顔をした青系の髪をした男と、なんだこのイケメンという金髪に厄介ごとめんどいという気持ちが隠せそうにない。
なにより親友だという彼らだが、片方には人間不信というか、ヒューマンデブリの諸君と似た臭いを感じるのだ。
というか顔を見ていたらなんだかだんだん思い出してきた。
記憶的に関わり合いになりそうな気配を思い出したので、青髪の方を少し話があると言って拉致る。
「おい、あの金髪はなんだ」
「なんだとは何だ。俺の親友に何を言っている」
「お前こそ何を言っているんだ。あれは子供と変わりない。目が見るべきものを見ていない」
「奴が子供?冗談はよしてくれ。轢きそうになったのは悪かった」
私が意趣返しでこんなことを言っていると思っているのかこの男は。
「あれはきっと孤児とかそういう成り立ちだろう。孤児でないとしたら生育環境がよっぽど最悪だったな」
「なっ」
「当たりか。どうだ信憑性が少しは上がったか?」
伊達に過酷な火星で下っ端の面倒を見てきていない。
「あれはそうだな。何と言ったらいいか」
私は考える。あの濁った眼はなかなか見れない。
信じるものは己だけ。近いようなそうでもないような何とも言えない目だ。
「お前が何を知っている!」
「知らんよ。分かるだけだ」
あまり覚えてないので、さらに考える。
「あれはそうだな。野望がある人間の目だ。愛を知らない子供の目だ」
だから先がどこにも定まっていない。
「お前を見る限り、今は周りに恵まれているんだろうさ。お前はバカで常識がなさそうだが嘘がない」
「おい!」
「黙れ。うんそうだな。だが思いは届いていない。それが何か知らないからだ」
そう、あれは無知な瞳だ。大人の目では決してない。
「奴は何も知らない子供のまま大人になったのだろう。愛を知らない。伸ばされた手の温かさに戸惑う。温かいことが理解できないから怖い」
そう、奴のルールの中には、愛や情がない。
ないから理解できないし、そんなものはないと拒絶したくなる。これだ。
「奴には奴なりのルールがある。生きていくうえで身に着けたルールだ。さすがにそれが何かはちょっとあって顔を見た程度の私にはわからん。ぼろが出ていないということは世の八割に通じる理だろう。だが、それにはきっと人の心がない。理不尽な世の中だ、理不尽に対抗するルールに心も必要なければ、思いもいらない」
野望がなければそれも人それぞれでいい。力がなければ人それぞれでいい。
だが、それらがあるというならきっと、いろんなものを巻き込んだ大いなるうねりとなるだろう。
「あれに思いを通じさせたくば、死ぬ寸前で後がないレベルですべての逃げ道をふさいで本気で対話させるか。すべての権力をはく奪して、田舎で奴を愛する人間によって時間をかけてほだすかのどちらかだろう」
「ばかばかしい。俺はあいつがすべてを明かしてくれる親友だ!」
「そうか、だといいな。お前らが権力者でなければ私もこんな面倒なことは言わないのだが」
「なっ」
「いや、一目でいいところの坊ちゃんだとわかるだろう。驚くなよ」
「くっ不愉快だ!」
「どうでもいいから、奴に注意して手綱はしっかり握れよー。たぶん私が迷惑する」
あ、やつのルールは力だった。
■
「ずいぶんと話し込んでいたじゃないか」
「ああ……」
青髪の男ことガエリオは、先ほどの彼女の言葉をいまだうまく飲み下せないでいた。
隣にいるマクギネス、彼に注意しろと言われた。
普段の彼であればバカなことをと、鼻で笑うところであったが、自分に対してあの無駄に言葉を飾らない話口に、彼女がそう感じていることは事実だろうと確信してしまっているからかもしれない。
そして、彼女の発言は別に、隣のマクギネスを中傷しているわけでもなかった。
ガエリオも、彼が野望を抱いているであろうことに気が付いていた。
それはギャラルホルンを正しい方向に導きたいという欲求であると、判断していたし、大きく間違っていることもないだろう。
今のギャラルホルンは既得権益に奢り、自浄作用もうまく働かない、そんな組織だということは実感はなくとも想像はつく。
権力側の彼はきっと理解しているという言葉を真に使うことはないだろう。
持っているものに持たざる者のことは分からないのだから。
「なあ、マクギネス俺たちは親友だよな」
「なんだ突然」
「いや、ちょっとな。先ほどの彼女に、お前は愛を知らないと言われてしまってな」
「君が?」
「ああいや、マクギネス、君がだよ」
「愛を知らないか……」
内に秘めていることが億劫になったので、すかさず言葉にしてしまった。
先ほども嘘がないと言われたばかりだ。正直者の俺に腹芸は無理だと、考えてしまうのは無理もなかった。
「ふふっ」
「どうした?」
「いや、彼女は占い師か何かかと思ってね。君は随分と信じたようだ」
「なっそんなことはない!ただお前は本当に俺のことを友と思っていてくれるのか不安になっただけだ!」
「ずいぶんと寂しがり屋だ」
「ええい!俺をバカにするな!」
賑やかに、しかし結局ガエリオの質問に答えないままに時は過ぎていくのであった。
■
オルガたちがCGSから独立しました。
いつかやるとは思っていたけどそうか今か。
というか、青髪と金髪にあったことで、ここがガンダムだということを思い出した。
生きるのに忙しいと人は意外と大事なことも忘れるらしい。
ガンダム・バルバトスいつみてもかっこ悪い。
あとガンダムは、仮面ライダー宜しくどんどん強くしていくのかと思ったら一気に弱くなったよね。
基本物理だもの、ビームは弱体化したし、レールガンも条約で禁止されているし、じゃあヒートサーベルぐらい用意しろよ!焼き切れよ!
これじゃあ戦闘にしか使わないのに、土木作業用じゃないか!
ただでさえ少ない人型している利点がガンガンなくなったよ。換装に手間なく好きな武装を手に持って使えるから人型なんだろう。
一撃で決着つくから無駄機能で許されていたんだろう。
ガンガン鉄塊ぶつけ合うだけならアタッチメントついた頑丈なボールでいいわ!
「で、あんたはどう思うよ」
「好きにしたらいい。知らない仲じゃないから後始末だけはしてやるよ」
どうして、鉄華団の相談役ポジションにわたしはいるのか。
別に拒否感があるわけでもないし、裏稼業の奴ら的にも私は用心棒で、相談役で、裏ボスだけれども。
「あの、そちらの方はどういった立場の方なのでしょうか?」
「そういや、ちゃんと聞いたことなかったなどうなんだ?」
知らないのにそんなポジションに私を置いたのか貴様ら。
流されすぎだろうこの孤児どもが!
そうだね孤児だもんね仕方ない。
「ここらの裏稼業の元締め」
「「え」」
「おいおい、ちょっと待てよ。結構ガキの頃からうちに入り浸ってたお前が?」
「そう、よく黒服が来るし。しょっちゅう留守にしてたでしょ」
「いや、確かにそうだけどよ。CGSはどうなんだよ」
「いや、筋を通さないからつぶすかと出向く前に、君らと仲良くなったから見逃してやっていただけで、この辺りの組織からすると仲間じゃないから」
「いや、えぇ……」
仕方ないだろ事実だから。私は仲良くなったから助けてやるなんていう独善的な趣味はない。
だから虐げられていても助けてはやらない。
だが、私にもなけなしの善意はある。死にそうになったらこっそり薬やらなんやらは手配してやった。
なにより彼らは私に助けてくれと言ってない。
言われてないことをやるのは違う。
それに自分でやりたそうだったし。
「あーなんだ。つまりコネとかだいぶあると」
「あるけど今の鉄華団に使わせるわけにはいかないかな。今じゃまっとうな商売についてしまった奴らも多いし、情報提供ぐらいならガンガンしてやるけど」
「わかった。正しく相談役ってわけか」
とりあえず、独り勝ちしそうな雰囲気を感じるトドはクビな。
いてもいなくても変わらんし。
■
なんか鉄火団がテイワズに入っちゃったんですけど。
奴らは木星圏の組織じゃろ。
なぜ火星を牛耳る私に頼まないのか。
あれか、私が牛耳っていることを知っているのは、知る人ぞ知る的な奴だからか。
トップはみんな知ってるけど、下っ端たちが私のことをどっかのお偉いさんの娘だと思っているからなのか。
事務職はあちこちから流してやって、うちの下僕にアウトソーシングもしてやっているというのに何ということだ。
私はそんなに火星を離れられないからなあ。
何というか、ついて行こうとしたら泣いて止められた。
姐さんがいないとダメなんだそうです。
火星からでも本気出せば近所のコロニーまで息止めてられるんだよ?
危ない事なんてないのよ?
並の毒は聞かないし、並じゃない毒にも耐えられるのよ?
耐えている間にキアリーかけると解毒も余裕なんだよ?言えないけど。
モビルスーツとガチの殴り合いできるのは知ってるでしょ?
いらいらしながら、うちの通信衛星使って連絡していたら、状況がどんどん悪化していって笑えるんですけど。
いや笑えない。
テイワズ入る羽目になったし、いや、組織にこだわりないんだけど、うちの利権かすめ取ろうとしてくるたちの悪いのが何人かいるんだよ。
火星在住の紐付きの裏組織は、大体拳で語って私のグループに組み込んできて、紐先からアンタッチャブルとかあだ名されていたりするんだ。
ぶっちゃけ仲が良くない。
私の知り合いで、鉄火団良くテイワズ入れたな。
名瀬氏に連絡入れたらげぇ!とか言われたし。
イライラが限界に達したというか、ドルトコロニーで大騒動が起きるって情報を得たからそろそろ助けに行ってやることにした。
積み荷が何かぐらいちゃんとチェックしろよバカヤロー。
自分たちがクーデターの道具運んでいることぐらいわかれ。
とりあえず追いすがってくるのを蹴散らして、パイロットスーツ着て、センサー遮断マントを羽織ったら、大気圏外目指してルーラである。
ふはははは、人程度のサイズの単独大気圏離脱を捕捉できるというならしてみるがいい。
「私が来た!」
「はあッお前なんでここに!」
「お前らが馬鹿たれだから急いできてやったのに何という態度だ」
「どういうことだ」
「クーデター勃発のための武器類運んできたんだろうが馬鹿どもめ!」
「なに?」
「しかもそれを分かってないと来た。馬鹿め」
やっぱこいつらちょっと一段して時間空いたら、いろいろ勉強させないとどうしようもないな。
「荷物の受け渡しが済めばそれほど遠くないうちに、大規模な武装デモが行われるだろう」
「ちっ」
「とりあえず団員を船に集めろ。外に出ていると騒動に巻き込まれるぞ」
「ユージン!全員帰還だ遊んでる暇はねえ!すぐに出られるようにしておけ!」
「おう!」
■
「フンヌ」
「銃弾をはじいた!」
「竜の騎士に不可能はない。さっさと船に戻るぞお嬢さん方」
「ええ、わかっています。フミタン行くわよ」
「ですが……」
「いいから行くわよ!」
「ていっ」
「フミタンに何を!」
「時間が本当にないのだ。問答している時間が惜しい。ではいくぞついて来い!」
気絶させたフミタンを担ぎ上げると、急いで現場を後にした。
顔バレNGのため、どこかの民族が使ってそうなドラゴンマスクをかぶっていた私。
どうして誰も突っ込んでくれなかったんだろう。
いや、そんな暇がないのは分かるのだが、解せぬ。
■
「がんばー」
「緊張感ねえな、おい」
「船沈没しても私だけは絶対に生き残るからな。まあ、治療ぐらいは手伝おう」
「何の根拠が。助かるぜ」
「しかし、ビスケットの落ち込みっぷりがパナイな」
「ああ」
「兄が死んだんだったか」
「ああ」
「まあ、家族が死ぬのはつらい。自殺ならなおさらな。自殺をするのはただの愚者だが」
「てめえ」
「落ち着け。死ぬってことはな究極の責任放棄なんだよ。死んだら何にもならない。その通りだ。そいつはそこで終わりだからな。でも、残されたものに重石を残していく。自分から死を選ぶなら跡を濁しちゃいけないのさ。残すもののための義務だよ」
「……」
「だんまりか。私は医務室にでも行ってくるよ」
「ビスケット……」
クーでリアが頑張ったり、特攻かましつづけて、ついに地球に。
なんか小じわが目立ちそうなキーキー声の人がいたが、お偉いさんらしいから後で調べておこう。
さて、何気に初地球だ。
コンテンツ産業的に、地球圏が主なお客様だというのに裏ボスは初地球とか、ちょっとどうかと思うな。
わたしのことだが。
■
「で、オルガ・イツカはどこまで頑張るんだ?」
「何の話だ」
「ビスケットにも似たようなこと言われたんだろう?」
「いや」
「もっと命を大事にしろよと言われただろう」
「ああ。言われちまった」
「どこまでも上を目指す男よ。追い立てられる男よ。お前の中にある目的を達するのに必要なところまで登ったらお前は立ち止まれるのかね」
「どういう意味だ」
「言葉のとおりさ。燃え尽きる前にとまれることを祈っておくよ」
「まだだ。まだ、立ち止まってなんていられねぇ」
やっぱりバカだ。こいつもバカだ。
先が見えている人間の少ないこと少ないこと。
■
というかこいつらバカだろアホだろ。
上半身裸で戦場に出るとか本当にバカだろ。
昔ならともかく今は金があるだろうが。
ヘルメットと防弾装備くらいしろよ。
流れ弾で普通に死ぬじゃないか。
モビルワーカーに乗っているのに、マシンガンの掃射で死ぬじゃないか。
「このバカが!」
「レイ!」
「クソ重たいんだよ。モビルスーツってやつは!」
「そんな馬鹿な!」
なんで私がこんな馬鹿どもの御守をしているんだ。
そういうのはお前らの仕事だろう!
「アトラ!ビスケット!」
モビルスーツの弾丸防いで、傾いたモビルワーカー元に戻して、蹴りいれてきたモビルスーツを受け止めるのは私にしかできないけれど!
「ミカヅキィィィィ!」
働け実戦部隊!生身は観戦だけさせておけ。
「助かったよレイ。ほんとに人間?」
「竜の騎士に不可能はない」
「よく言ってるけど何それ」
■
「おう、クソ爺。ちゃんと働けよ」
「なんじゃこの無礼な小娘は」
「なんだ、火星の裏ボス。レイ・ドラクエだよ」
「なにぃ!?」
そういえばフルネーム名乗ったの初めてかもしれない。
「爺さん。こいつそんなに有名なのか」
「有名も何も、こいつの所為で火星の利権から手を引くことになったものが多すぎて、ギャラルホルンに訴えたが、捕捉することができず、罪状も生身の人間に不可能な所業しか行わないことから訴えることもできず、よしんば訴えたとしても、神出鬼没でお話によって訴えを取り下げさせられる。しまいにはアンタッチャブルとか呼ばれるようになった奴じゃぞ」
「まじか」
「むしろこいつが味方にいて、火星はなんで独立してないんじゃ。こいつが一声かければ火星のほとんどが味方になるだろう」
「まじか」
「いや、急に独立することに利点が見いだせなかっただけだけど。私は困らないし」
「おかしいじゃろ」
「まだ地球はそんなに、仲良し(物理)増えてないからなあ」
■
「あんた邪魔だよ」
「ミカヅキ!殺すな!」
「わかった」
弱くなってもさすがはガンダム。
並の相手なら無双できるな。
手足ぶった切ってダルマになったモビルスーツから素手で中身を引きずり出す。
「人質確保!」
「くっ殺しなさい!」
「そういうの良いから」
「うっ」
最近戦場にふらついてても誰も心配してくれなくなった。
あ、アトラとクーデリアは別。ひどい男たちだまったく。
エイハブリアクターが壊れてない機体は大事。持って帰らなきゃ。
ああ、重い。
■
「あっ起きました?」
「ここは……」
「えーと、鉄火団の」
「おのれ!私をとらえて何をするつもりだ!宇宙鼠どもめ!」
「いいからちょっと静かに」
「むぐー!」
「アトラー。私がお話しておくからご飯持ってきてやって」
事情説明中。
「まあ、話は分かりました」
「わかってくれなきゃ困るよ」
「このような辱め、イシュー家の名折れ。死んで詫びるしか」
「死ぬなよ、てい」
「いたっちょっと、痛いですわよ」
「うわ、生ですわだ」
「ご飯持ってきたよー」
しめしめちゃんと熱い奴だ。
「敵の施しなど!」
「いいから食えよ」
「はい……」
「素直でよろしい」
(いま目が笑ってなかった……)
「あら、でも縛られたままでは食べられません」
「だいじょぶだいじょぶ。はい、あーん」
「ちょ、子供じゃないんですよ」
「あーんあーんあーーーん!」
無言で口を開く。
「あつッあつ、熱い!」
「ごめーん手が滑っちゃった」
「わざとでしょう!わざとですわね!」
「あははは。はいあーん」
「くっあーん。んぐ。あら美味しい。よいシェフを使っていますわね」
「へへへ、ありがとうございます」
「あら、あなたが作ったのですか。うちで雇って上げてもよろしくてよ?」
「だめー。アトラはうちの子」
■
「えーカルタ、マクギリスが好きなの?」
「そんなにはっきり言わないでください……」
「顔は良いし、性根は悪くないと思うけど。いばらの道だね」
「結ばれることがないなど分かりきったことです」
「いや、別に。猛アタックかけ続ければ不可能ではなかったと思う」
「本当ですか」
「まあ、今からだとアタックかける暇もなく、ボードウィンの妹に持っていかれると思うけど」
「くっ」
「というか素直じゃなさすぎ。マクギリスはさ直球勝負で根気勝負でないと落とせないよ絶対」
「あなたなんでそんなにマクギリスについて詳しいんですの?」
「まあ、ちょっとした知り合いだっていうのと、私の情報網的に」
「気になるんですが」
「まあまあ、それは置いておいて。奴は臆病者だから」
「マクギリスが?」
「そうだよ。友達っていうものが分からないと、手を出せないヘタレだよ」
「マクギリスがヘタレ……そんな風に言われるのを初めて聞きましたわ」
「あれはね。懐くまであと一歩だけど。そこまでが絶望的に遠いとみたね」
「絶望的……」
「あんたのことも、今回で殺す気だったね」
「そんなことは!」
「バカだよねー絆されてしまいそうだから自分の目の前からいなくなってしまえって感じなんだよ」
「そんな……」
「ああ、頭いいからわかっちゃった?殺されそうだったのに納得しちゃったか」
「私はマクギリスを信じています」
「いいじゃん。信じなよ。大切だから壊したいって結構よくあることだよ。信じて信じて絆させてやりなよ。友達として」
「ええ」
「だったら、素直になるといいよ」
「そ、それは。よけいなお世話です」
「だめだなあ、カルトは」
■
「はーい。私の作った医療用ナノマシン注射するよー」
「うん」
「何というかもうちょっと不安そうにしてほしいんだけど右腕麻痺」
「なんで?」
「いや、臨床試験とかしてないし」
「大丈夫」
「私にはお前の思考回路は理解できそうにないわ。じゃあ、ちょっとねてろ」
「うん」
プシュ
「なんなのかねこやつは。はてさてベホマー」
いやーベホマさんは万能だね。脳治療にも使える。
「レイ!ミカヅキは!」
「処置は終わったし寝てるよ。これで治らなきゃ私にはどうしようもないね」
「そうですか……」
「まったく、私の持ち出した怪しい治療に疑いすら抱かないとかなんなのかね本当に」
「ふふ、それだけ信頼されているということですよ」
「確かにこいつとも長いからなー」
「ちょっとうらやましいです」
「それはアトラに言ってやって。私はクーデリアやアトラと張り合うきないし」
「ええっ」
「むしろ私、女の子のが好きなんだよね。どう今晩とか?」
「ええっっ!?」
「ふふ、冗談だよ冗談。クーデリアは初心だなあ」
■
「人質解放。お別れだねカルト」
「ええ、なんだかんだあったけれど結構楽しかったわ」
「連絡するからちゃんと受けてよね」
「わかってるわ」
「そうそうマクギリスのこと本当に頼んだよ」
「それも、わかってるわ……」
「まあ、騒動がひと段落してしまっているのに結果的に友達誰も死ななかったから、もう行動起こせないと思うけどね」
「あなたは何でも御見通しね」
「何でもじゃないさ。知ってたことだけだよ」
「私からしたら十分になんでもよ。あんなに近くにいたのに分かってあげられなかった」
「おおっと、そのセリフは俺にも効くぞカルト」
「ガエリオ」
「まさか親友に殺されかかるとは、な」
「だからいったじゃない」
「ああ、まったくだ。君の忠告を結局無駄にしてしまった。俺が死ななかったのは君のおかげだ」
「モビルスーツと殴り合うのは本当に疲れるんだからな」
「疲れるで済んでしまうところに、神秘を感じるよ」
「いや、神秘とかじゃなくておかしいでしょう!常識的に考えて!」
「彼女に常識を求めることが間違っている」
「マクギリス……なにその顔?」
「はっはっは。この頑固者に鉄拳制裁を喰らわせたのさ」
「あなたがやったの」
「男は時に殴り合うことで分かり合うのさ」
「ああ、そうだな。つきものが落ちた気分だよ。私は誰かに止めてもらいたかったのかもしれない」
「止められないように策を巡らせていた男が何か言ってる」
「その策を全て阻止されてしまったからな」
「人質として確保しておきながら、死んだことにするんだからどうしようもない」
「なんだよー。ちゃんとぼろ出したじゃないか」
なんだかんだでギャラルホルンにでっかいコネができた。
実にセブンスターズのうち、三席である。
あと一つ落とすと過半数。
■
マクギネスが党首になったらしい。
へー以外の感想をどう抱けというのか。
正直興味ない。
なのでカルトが嬉々として語ってくれても、困る。
「歯ァくいしばれやおらァ」
そんなことより、馬鹿の調教で忙しい。
バカの名はオルガ・イツカ。
「俺はみんなのためを思って」
「知るかボケェ。何のために私が事業斡旋してやっていると思ってるんだごらァ」
「ちょ、レイ落ち着いて!」
「落ち着いてられるか。ハーフメタル鉱山なんていうくそでかい利権を、潤滑に回せるように整えてやっていたら、マクギネスの甘言でドンパチやりやがって」
「今回は相手が仕掛けてきたから」
「きちんと、取れるもん全部絞り上げろや!ぬるいわ!」
「ええぇ……」
「殺して終わりとか一銭にもならんわ。バカじゃねえの。全部取り上げて社会的に抹殺しろやボケェ」
まったく殺すならそこまでやってからだろうが。
敵はぶっ殺す大いに結構。更生したマクギネスの甘言もたまには乗ってもいい。
だが、やるからには金にしろ。
しかも裏どりだって足りてない。
奴が実行犯に口を利いたのは間違いない。
独断であるのも正しい。
だがどこに所属しているカスなのかはきちんと調べ上げろや。
「おう、俺が悪かった。そうだな金にしなきゃならなかったんだな」
「わかったならいい。金にならないなら金にする。うちの業界じゃ当たり前だ」
「えっ矛盾してない?」
「完全に金にならないなんてことはない。一見金になりそうになくても無理やり金にする。経営者にはそれが求められるんだよ」
「ああ」
とんだ暴論だがそれができない奴は、相手に食われるだけだ。
「というかさ、もう大体鉄火団的には躍進終了でいいんじゃねえの?」
「そうだよ。できれば戦いなんてない方がいいけど、一般でも大分稼げているじゃないか」
「そう、なんだろうか……」
「肩の荷は一生降りないだろうが、お前の家族は理不尽にごみでも捨てるように殺されることはなくなった。飯にも困ってない」
それじゃあ、足りないとでもいうんだろうか。
「そうだな、そうなのかもしれない」
「戦わなくてもいいようにと言うが、それはぶっちゃけ無理だ」
「なんでだ?」
「そりゃあ、お前。鉄火団は闘いの中で成り上がったからだ」
この世に妬み、恨みより恐ろしいもんはない。
それは感情だからだ。
こんなドンパチが日常な世界で、自衛できなければ食い物にされるだけだ。
金がある、闘いで成り上がった。
そんな組織に、恨みを持っている奴なんて一人もいないとでも?
なにより、裏社会では目立つというだけで攻撃の対象になる。
攻撃されるのに、戦わないなんて選択肢はない。
「だから、武力は大事だ」
「それも、うちが大きくなればなくなるんじゃないのか?」
「そりゃあ、減るだろうよ。割に合わないからな。だが、ゼロじゃない」
「そうか、なくならないのか……」
「もう充分だろ。掌に乗ったもん守れるぐらいにはなった。乗せるもん増やしたきゃちょっとずつ掌でかくしろや」
「そうだな」
「そんなどうでもいいことより、ミカヅキがどっちとくっつくか予想しようぜ」
「おい!」
「俺はアトラに頑張ってほしいかな。ずっと見てきてるし」
「おい、ビスケット!」
「いいじゃないか。これも平和になったってことだろ?」
「まあ、どうかもしれねえが……」
「私としては、両方とくっつくハーレムエンド押しなんだが」
「さすがにそれはねえだろ」
「そうか?ミカヅキだぞ?」
「なんだろうその説得力は……」