俺は現在、怒っている。いや、いじけている。
理由はボーダー内で……訓練生にも通達されている話……近々起きると予想されるネイバーの大規模侵攻の話が俺の所には一切通達されなかったからだ。
「だから悪かったって~。機嫌直せよ~、ぼんち揚げやるから」
「いや、本当にすまなかった……私の通達ミスだ」
迅さんと忍田本部長で謝罪。
「いいですよ……どうせ俺は存在を忘れられる運命ですから……」
「いや、ユーマ君の事に気をとられて言い損なった私が悪い。本当にすまない」
忍田本部長、マジ謝り。聞くところによると空閑の奴の親父は忍田本部長の先輩にあたる初期ボーダーのメンバーでとてもお世話になった人らしい。
「それより迅さん。大規模侵攻で俺はどうなるんすか?」
「ん~、ああ。さっき比企谷の弟子になった子……ルミちゃんだっけ? あの子は大規模侵攻でウチのメガネ君達と一緒にピンチになる。だから比企谷には、なるべくルミちゃんをC級のトリガーでも戦えるように鍛えて欲しいんだ」
!? ルミルミがピンチに!?
「それって、場合によってはルミルミがネイバーに拐われる事もあるって事っすか?」
「ああ、そして一番最悪の未来ではウチのメガネ君が死ぬ結果になる」
三雲が……死ぬ……?
「大丈夫、そうならないように戦うんだ。未来は無限に広がっている。俺等の手で未来を動かすんだ」
迅さんは、俺にぼんち揚げを渡して言った。
あの後、俺は空閑が提供した情報で大規模侵攻で襲ってくるのは『アフトクラトル』か『キオン』であること、『アフトクラトル』の連中にはトリオン能力を高める為のツノがあることや黒トリガーが13本もあったことなど、色々と教えてもらった。
そして今……
「いいか? 訓練用トリガーは緊急脱出ができないから大規模侵攻でやられそうになったらとにかく逃げろ。捕獲用に捕まるのも戦闘用に殺される事も駄目だ。とにかく逃げろ」
「うん、でも倒せるなら……」
「訓練用トリガーで倒せるのはバムスターくらいだ。モールモッドみてーな戦闘用トリオン兵はたぶんまだ留美には無理だ。だからトリオン兵にあったら倒そうと考えず逃げろ。だが、もし前に一斉駆除した小型のラッドを見つけたら破壊しろよ?」
「わかった」
ルミルミを特訓中。
とりあえず武器のアステロイドの命中率を上げる。
「あと、これはいざと言うときにだけ使え……」
「ん? なにこれ?」
俺は、黒い箱のような物を留美に渡す。
「お守りみたいなものだ……ピンチになったら開けろ。それまでは持っておけ」
俺はルミルミの特訓を続けた。
次回から大規模侵攻編に入ります。