時は現在から二年前。
学校がネイバーに襲われなんとか生き残った俺、比企谷八幡は、ボーダーに入隊して一年がたった。
「雪ノ下隊。A級認定、おめでとうございまーす! カンパーイ!」
……そして今、雪ノ下隊はA級部隊としてランク戦を勝ち上がった。今は隊長陽乃さん。葉山、一色。オペレーターの城廻先輩とパーティをしている。
……正直参加したくなかったが、一色に無理矢理連れてこさせられた。
「いやぁ、これも比企谷君のサイドエフェクトのおかげだねぇ」
「まあ、その通りっすね」
「うっわ、先輩。そこは『そんなことないですよ~』とか言う所じゃないですか~?」
うるせぇ。実際ここまで勝ち上がれたのは俺がステルスヒッキーで敵チームのエースを奇襲、闇討ちしてきたのが大きいだろが! だからB級中位の荒船隊や上位の本牧隊に難なく勝てたんだろ。
「だけど、ここからが本番よ。あたしたちの目的は遠征部隊選抜。A級には比企谷君のサイドエフェクトの通用しない菊地原君や影浦君もいるしね」
そう俺はサイドエフェクトで大抵の相手なら十本勝負をして十本負けることはないが菊地原と影浦に関してだけはサイドエフェクトが通用しないため十本勝負で十本負ける。雪ノ下隊にとってはここが正念場だ。
「まぁまぁ、今はこの場の空気を楽しみましょうよ」
「うんうん、そうだね。比企谷君の妹さんもボーダーに入隊したことだし」
「小町はまだC級ですがね……」
そうこの場は雪ノ下隊のA級認定のお祝いの他に小町のボーダー入隊を祝う会でもある。
「待っててね、小町もすぐに正隊員になるから」
正隊員になっても雪ノ下隊には入れないがな……人数的に。
小町は正隊員になったら新しいチームを作ることになるだろう。
一応、小町はスナイパー。なので一色が師匠になって面倒を見てくれている。正直あざといこの二人に組ませたくはない……
こうして、時は過ぎていった。
ある日。俺は本部に呼び出された。
そこにいるのは城戸指令、鬼怒田さん、根付さん、忍田本部長、林藤支部長、あと迅さん。
そして机の中央に何やら黒いトリガーホルダー?のような物が置いてある。
「よく来たな。まずはA級昇格おめでとうと言っておこう」
「へ? あ、ど、どうも……」
城戸指令の予想外の言葉に俺は口ごもる。そして説明を受ける。
「これは少し前の遠征で手に入れた、まだトリオンを注ぐ前の黒トリガーだ」
……!? 黒トリガー……
「比企谷を呼んだのは、迅のサイドエフェクトでこれは比企谷が持つべきだと出たからだ。比企谷八幡。君にこれを預ける」
……迅さんの未来予知のサイドエフェクトでこれを俺が持つべきだと出た……それはつまり……
「……なるほど。俺は近々死ぬって出たわけか……」
すると忍田さんが机を叩いて言う。
「まだそうと決まったわけではない! 迅の予知も君が持つべきと出ただけだ。それにトリオンを注いだと出たわけじゃない!」
たしかにそうかもしれない。だが、黒トリガーの力は未知だ。もし必要とあれば……
俺は、これを雪ノ下隊の面子に内密にして、預かった。
次回。
陰影誕生秘話(予定)。