玉狛支部の近くに来ると、白髪子供と……カピバラ? が何やらラジオ体操をしていた。
報告書によると人型ネイバーは白髪の中学生(チビ)って書いてあるが……たしかにチビだな……そしてそいつには黒い炊飯ジャーみたいな特殊トリガーがあるとも書いてある。
ここは先手必勝だな……
俺は無心となり、存在を消すかのごとくにサイドエフェクト『ステルスヒッキー』を使う。
サイドエフェクト『ステルスヒッキー』
正式名称『認識疎外強化』要するに『影が薄い』
俺が意識すると、まわりは俺の存在に余程敏感なやつ以外は気づくことが難しくなる。
さらに俺は……
「……トリガーオン……」
黒トリガー『陰影』を発動する。そしてその武器であるクナイのような短剣を持ってゆっくりと人型ネイバーに近付いて後ろをとり――
「ユーマくん! 危ない!?」
「ん? !?」
ち、気付かれた。
声がした方を見ると、人型ネイバーと同じくらい身長が低く、アホ毛の女の子とメガネの中学生が来ていた。
メガネの方はこの人型ネイバーと信頼を受けていると言うB級隊員の……メガネ君? と迅さんは呼んでた奴だ。
「な、いつの間に!?」
「へぇ、あんたいつの間に俺の後ろに来てたの? 全然気づかなかったけど?」
『ステルスヒッキー』の弱点。一度誰かが気づくと連鎖的に周りの全員が気づくようになる。だから一人でも気づかれるとその場ではもう使えないのだ。
「よく気づいたな、あの女の子。俺のサイドエフェクトに……」
「サイドエフェクト!?」
人型ネイバーよりもメガネ君の方が驚いている。
「そしてあんたは黒トリガーだね」
「ぶ、黒トリガー!?」
やっぱりメガネ君の方が驚いてるな……
「俺、もうボーダー隊員なんだけど? 襲われる理由ないよね?」
「本部はネイバーであることよりお前が黒トリガーであることが問題なんだよ。お前と迅さんの黒トリガーがここに二本あるとボーダー内のバランスが面倒になるから黒トリガーだけでも奪ってこいって城戸指令の命令だ」
するとネイバーの少年は……
「お前じゃないよ。空閑遊真だよ。そうか~、この黒トリガーが問題なのか……しかし困ったな……俺のトリガーは手放すことが出来ないし……」
ふむ、黒トリガーはトリオン能力の高い人間が自分の命と引き換えに全トリオンエネルギーを注ぎ込んで完成する。迅さんの話では空閑の黒トリガーはこいつの親父さんが死にかけていた息子を救うべくして黒トリガーの中に本体を閉じ込めてトリオン体の体を作っていると聞いた。その黒トリガーの中の本体は今も死へ少しずつ進んでいる。つまりはこいつの黒トリガーはこいつの体と同化しているため、奪うことは空閑の死を現す。
「正直、この場で黒トリガー同士のガチバトルとかしたら色々と面倒だから、ボーダー隊員である間は黒トリガーは使わないって宣言するか本部に所属を移すかでもしてくれねーか? そしたら俺は諦める」
城戸指令は諦めないだろうけど……
空閑の奴は少し考えて……
「わかった。もともと黒トリガーじゃオサム達とチーム組めなくなるから使うつもりもなかったしね。ボーダー隊員の間は黒トリガーは使わないよ」
空閑の宣言を聞いて、俺はトリガーを解除する。
「チーム組むのかよ……本部に所属を移せば、S級隊員にしてくれるかもしれないのによ……」
俺が言うと……
「俺はオサムとチカとA級チームを目指してネイバーフットへチカの兄さんと友達を取り戻しに行くためにオサムとチカに協力してるからS級隊員になっても意味ないからね」
ほう、あの二人はそんな目的があって空閑をボーダーにいれたのか。まさか『あいつら』と同じ目的だったとは……
すると玉狛支部から誰か出てきた木崎か?……
「あー!? あんた、比企谷じゃないのよ!? まさかユーマの黒トリガーを狙ってきたわけ!」
A級隊員の小南桐絵だった。めんどくせぇのが来たな……
「まあな、既にこいつの黒トリガーはいただいた」
「な!? く、ユーマは私の弟子よ! 返してもらうわよ!」
すぐに騙されるアホな子である。
「あんた、つまんない嘘つくね?」
「おお、そういや嘘を見破れるんだったか?」
この会話を聞いた小南は……
「騙したの!?」
そのくらいわかれ。ん? というか……
「空閑って、小南の弟子なの?」
「うん、まあね」
「騙されやすくて大変だな。こんなのが師匠で」
「ちょっと!? 酷くない!?」
俺はそのあと、本部に戻り、任務失敗を本部に報告したのだった。
会議室。鬼怒田さんと根付さんと城戸指令が話している。
「ふん、やはり比企谷も所詮は忍田派と言うことか……最初からやる気なんぞなかったと言うわけか……」
「まあいい、もうすぐ遠征中のトップチーム、太刀川隊、風間隊、雪ノ下隊、冬島隊が帰還する。問題ないだろう」
そして、迅さんのトップチームの妨害作戦が始まろうとしていた。
八幡の黒トリガーの名前は『陰影』読みは『インエイ』です。『かげかげ』ではありません。
能力は次回!
いつになるかわかりませんが……