遊戯王デュエルモンスターズAE   作:yun1

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第10話 制御不能―ロス・インゴベルナブレス―

 アトスから連絡を受けた翌日の午前六時。日が昇りかけている時間帯のとあるビジネスホテル前。少年ボルトスは自身の前で頭を垂れている三人の甲冑姿の人物を見て満足そうな笑みを浮かべた。

「これで、全員かい?」

「は、王国三銃士アトス様より指令を受け我らキングダム・ナイツ、同じく王国三銃士が一人ボルトス様の御前に参上いたしました」

 力のこもった声を聞きながら、ボルトスは手を差し出す。

「で、例のカードが発動した場所は特定できたんでい?」

「は、こちらが座標地点です」

 左端にいた男がタブレット端末を差し出す。ボルトスはそれを受け取り、画面を確認する。

「なるほどねい……。姫さんがそこに留まっているとは考えにくいが、調べてみる価値はありそうでい。行くぜいお前ら。姫さんという名の捕り物の始まりでい」

『はっ!』

 ボルトスを先頭にした四人は、一気にその場を駆け抜けた。彼らを付けている黒い存在を背にしながら。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 午前八時。今日は日曜日という事もあり、観月舞は早雲がいるシーベル家に来ていた。

 家主であるミラ・シーベルとその付き人メイレン・マグナスがシーベル家と関わりが深い富豪が主催するパーティーに出席するため、留守番になる早雲とミラの弟、クリフ・シーベルの面倒見を頼まれたからだ。因みに妹の優希は兄の昴と共に大好きな特撮ヒーローの映画を観に行っている。

「悪いわね舞、来てもらっちゃって」

「別にいいわよ。暇だったし」

「ふーん。てっきり刹那とデートでも行くのかと思ってたわ」

 その発言に、舞は顔を熱くしながら豪奢なパーティードレスを身に纏ったミラを睨みつける。

「全く、どいつもこいつも……なんで私と刹那を……」

「だって、ねぇ?」

 ミラが同意を求める様な視線を青色のパーティードレスを纏ったメイレンに送る。二人とも化粧をしているのもあって、普段とは違う大人っぽい魅力が醸し出されていた。

 普段から無自覚な色気を出しているメイレンはともかく、普段はやや子供っぽさが残るミラも、髪型などを変えるだけでこうも妖艶な雰囲気になるのかと、半ば感心していた。

「くすっ、そうですね」

 苦笑いしながらメイレンも同意する。苦笑こそ浮かべているものの、仕方なく同意している、という風には見えないのが舞に頭を抱えさせる。

「あっ、お嬢様そろそろ車が来ます」

「そうね。じゃあクリフ、お姉ちゃんとメイ行ってくるから、舞の言う事ちゃんと聞くのよ? 夕方には帰ってくるから」

「あいっ!」

 ミラがしゃがみながら、可愛らしい熊さんの絵が描かれたパジャマを着たクリフに優しい声色で語り掛けると、クリフは元気な返事と勢いよく挙げた手でそれに答えた。

「早雲さんも、お気をつけて。恐らくすぐには無いとは思いますけど、いつ追手が来るか分かりませんし」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。そうなったら舞と二人でやっつけるから」

 メイレンの心配をよそに、へらへらと笑う早雲。とは言えメイレンの言う事ももっともなので、そこの警戒を怠る訳にはいかない。

 ミラとメイレンを見送った後、舞は周囲を一度確認してから部屋の中に戻り、リビングで一先ずくつろぐ事にした。

「クリフ君、パジャマ着替えないの?」

「あ、そうだった! 着替えるねー!」

 舞がそう告げると、パジャマ姿のままだったクリフがソファに置かれた自身の着替えを確認する。そしてそのまま勢いよく脱ぎ始める。

「……まあ、子供だしね」

 舞は視線を逸らし、椅子に腰かけてテレビの電源をつけた。テレビではワイドショーが放送されており、出演者達があれでもないこれでもないと討論している様子が放送されている。それを何気なしに眺めていると、早雲が隣に腰かけてきた。

「何だかごめんね、せっかくの日曜日に」

「だから大丈夫よ。いつもは大体妹の面倒を見ているから、それがあんたとクリフ君に変わっただけの話。クリフ君、冷蔵庫開けるわね」

「あいっ」

 それだけ言うと舞は立ち上がって冷蔵庫へ向かい、飲み物を探す。すると。

 ずんっ、と大きな音を立てたかと思うと建物内が揺れた。舞は急いで二人の元へ向かう。

「地震かもしれないわ、二人ともテーブルの下に隠れて!」

 早雲もクリフもテーブルの下に隠れ、舞も同じようにする。しかし、その揺れはすぐに収まった。安堵しながら三人はテーブルの下から出る。何気なく窓に視線を移すと。

「っ!?」

 眼前に、不気味な青白い焔を纏ったモンスターの顔が現れた。それは黒い姿のモンスター。それを見た早雲の顔が一変する。

「あれは、まさか……!」

「姫様を発見! 強行突破する!」

 その鋭い言葉と同時に窓ガラスが吹き飛ばされる。

「危ない!」

 舞はクリフを庇う様にしながら、再びテーブルの下にしゃがむ。音が止むとすぐに起き上がり、身構える。

「大丈夫、クリフ君?」

「う、うあーん! こわいよー!」

 舞に抱きついて震えるクリフ。怪我をしている様子は無さそうなので、彼の頭を撫でて落ち着かせようとする。

「早雲は?」

「私も大丈夫、だけど」

 早雲はきっと窓ガラスが割れた方向に睨みを効かせる。そこには、甲冑と黒と赤色のデュエルディスクを身に着けた人物が三人いた。

「キングダムの兵士キングダム・ナイツ、ここに見参。姫様、お迎えにあがりました」

 左端にいた男が前に出ながらそう告げる。しかし早雲は負けじと立ち上がる。

「おあいにく様。私は帰るつもりは一切ないから。どうする? 無理矢理連れてく? どうせ私を殺す事は父さまが許さないんでしょ? 父さま自身の手で殺したいだろうから」

 物騒な言葉を口にする早雲に舞は目を見開く。しかし、そんな舞を尻目に早雲は睨み合う。しかし、デュエルディスクとデッキはソファの上にあるバッグの中だ。手元に無い以上、早雲も舞も戦う手段が無い。クリフも恐怖から舞に抱きついたまま離れようとしない。どうすればいいか頭を回転させていると。

「何っ!?」

 キングダム・ナイツと名乗った男の一人が上ずった声を上げる。彼ら三人の背後から赤い鞭の様な光線が伸びて、三人のデュエルディスクを捕らえたのだ。その場にいた全員がもう一度窓際に視線を移す。

 見ると、機械じみた隼のモンスターが外で浮遊していた。そのモンスターに乗っているのは、男物の黒スーツを身に纏い、ドクロの形をしたシルバーメタルのマスクで顔を覆ったスタイルの優れた女性。マスクの奥から覗く双眸は獲物を捕らえた隼の如く鋭利で、舞が狙われている訳でもないのに突き刺さりそうな程強い意志を感じた。

「その姿……まさかロス・インゴベルナブレスの者か!?」

 左端にいた男が尋ねると、その女性は頷いた。

「そうよ。でも貴方達に名乗る名は無い。このまま三人纏めて殲滅する」

「なんだと!?」

「我ら三人を一度に……そんな事出来ると思っているのか!?」

「当然よ。でなければ、仕掛けない」

 四人のやり取りを聞いていると、早雲が思い出した様に口を開く。

「ロス・インゴベルナブレス……前に父さまが言っていた。確か多くの裏組織を壊滅させた、その名の通り制御不能のデュエルチームだって」

「あの変な赤い光は何なのよ?」

「あれはデュエル・アンカーって言って、裏世界で使われる相手を逃がさないためのものだよ。もしかすると……」

 早雲が考え込んでいると、黒スーツの女性が部屋の中に入って再び口を開いた。

「デュエルフィールド、展開」

 デュエルディスクのボタンを押すと、彼女を中心にキングダム・ナイツの三人を不思議な緑色の光が取り囲んだ。それを見た早雲は、やはりという顔を見せた。

「やっぱり、デュエルフィールドも」

「もうこの家にこれ以上被害が及ぶことはない。さあ、殲滅してあげる」

「ならば、ルールはどうする?」

 真ん中にいた男が左端の男に尋ねると、左端の男はニヤリと笑った。

「ふ、ならばこうしよう。ライフはそれぞれ8000。ターン進行は我ら三人の後にお前とし、最初のターンは全員攻撃不可にしよう」

「ちょっと、それじゃ彼女一人が不利じゃない!」

 余りに理不尽なルールに舞も加勢しようとするが、クリフが離してくれないので動けない。

「無駄よ。そのフィールドは外からの干渉は出来ないし、それ以前にデュエル・アンカーを解除しない限りデュエル自体に干渉できない。いいわ、事実上のバトルロイヤルってところかしら。そのルールを呑んであげる」

「ほ、本気なの!?」

 無謀とも思えるが、女性は舞を無視して三人に視線を移す。そしてデュエルディスクを起動させる。ディスクの部分がドクロの形をした、黒のデュエルディスクを。

「ふ、その様子だと我ら三人を相当侮っているようだが、その事を後悔するがいい!」

 キングダム・ナイツの三人も身構える。もう、止める術は無い。

「もう無理だよ舞。後は見守るしかない」

「っ……」

「あぅー、舞おねえちゃん……」

 早雲が宥めるように言い、クリフは不安そうな目を向ける。舞は不安がらせない様にクリフの頭を撫でながらこのデュエルを見守る。

『デュエル!』

 三対一という圧倒的という言葉では言い表せない程、理不尽なデュエルが幕を開けた。

 

キングダム・ナイツ右端:LP8000

 

キングダム・ナイツ中央:LP8000

 

キングダム・ナイツ左端:LP8000

 

ドクロマスクの女性:LP8000

 

「先攻は私だ! 私は『幻影騎士団ダスティローブ』を召喚」

 最初は右側にいる男から始まる様だ。現れたのは、黒いローブを纏った青白い霊体。フィールドを浮遊し、埃を落としておく。

「更に自分フィールド上に幻影騎士団モンスターが存在する場合、『幻影騎士団(ファントムナイツ)サイレントブーツ』を手札から特殊召喚できる」

 続けて現れたのは、ボロボロの服装を纏った青白い霊体。二体とも感情が読み取れず、無機質な感じを受ける。

「レベル3の『ダスティローブ』と『サイレントブーツ』でオーバーレイ!」

 二体のモンスターが黒い光となって、時空の狭間に吸い込まれていく。空間が閉じたかと思うと、大きな炸裂音を鳴らす。先程から怯えていたクリフは、ますます抱きしめる力を強めた。

「戦場に倒れし騎士達の魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ! エクシーズ召喚! 現れろ、ランク3。『幻影騎士団ブレイクソード』!」

 現れたのは、先程彼らが乗っていた黒い馬に、折れた剣を手にしている青白い焔を纏った騎士。周囲を駆けるが、まるで幻影の様にあちらこちらにその姿を見せては消える。

 攻撃力は2000とランク3のモンスターとしては最高クラスの攻撃力を持っている。

「カードを一枚セットし、ターンエンドだ」

「次は我であるな。我のターン、ドロー。我は魔法カード、『増援』を発動。デッキから戦士族モンスターである『幻影騎士団サイレントブーツ』を手札に加える。そして『幻影騎士団ラギッドグローブ』を召喚」

 真ん中の男がカードをディスクに叩きつける。現れたのは、青白い焔を下半身に纏った、大きな手袋を浮遊させたモンスター。しかし、その手袋は様々な箇所が破れている。

「そして『サイレントブーツ』を効果により特殊召喚。レベル3の『ラギッドグローブ』と『サイレントブーツ』でオーバーレイ。エクシーズ召喚! 『幻影騎士団ブレイクソード』!」

 再び『サイレントブーツ』が現れたかと思うと、続け様にエクシーズ召喚を決め、漆黒の騎士が並び立った。

「『ラギッドグローブ』をエクシーズ素材にしたエクシーズモンスターはエクシーズ召喚に成功すれば攻撃力が1000アップする。よって『ブレイクソード』の攻撃力は3000になる。ターンエンドだ。

 

幻影騎士団ブレイクソードB

ATK2000→3000

 

「続いて俺のターンだ。ドロー。俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、『ジャンク・フォアード』を手札から特殊召喚できる」

 現れたのは、黄土色の身体をした戦士。その左腕には射撃型の武器が携えられている。

「そして『幻影騎士団ラギッドグローブ』を召喚し、二体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 現れろ、『幻影騎士団ブレイクソード』! 『ラギッドグローブ』の効果で攻撃力は3000!」

 大きな手袋のモンスターが現れると、三度同じ光景が繰り広げられる。三体目の黒い騎士の登場に、舞と早雲の顔は険しくなる。

「これは、きついわね」

「うん。でも彼女は動じている様子がないよ?」

 見てみると、表情は見えづらいが、女性は動揺している感じでは無さそうだ。

「ふ、果たしてその余裕がいつまで持つ? カードを一枚セットして、ターンエンドだ

 

幻影騎士団ブレイクソードC

ATK2000→3000

 

「私のターン、ドロー」

 ようやく回ってきた女性のターン。しかし、攻撃できるようになるのは次の男のターンからだ。果たしてどう立ち回るのか。

「手札から『RR(レイドラプターズ)―バニシング・レイニアス』を召喚」

 現れたのは、緑がかった体色を持つ猛禽類のモンスター。

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のRRモンスター一体を特殊召喚する。私はもう一体の『バニシング・レイニアス』を特殊召喚。二体目の効果は使わない」

 もう一体出現する、緑色の猛禽類。そしてレベル4のモンスターが二体揃ったとなれば。

「ほう、お前もエクシーズ使いか」

「レベル4の『バニシング・レイニアス』二体でオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚」

 二体の『バニシング・レイニアス』が時空の狭間へと吸い込まれていき、爆発する。

「冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で全てをもぎ取れ。飛来せよ、ランク4。『RR―フォース・ストリクス』」

 現れたのは、何処か機械じみた風貌のフクロウのモンスター。守備表示で召喚されているため、女性を守る様に『ブレイクソード』三体の前に立ち塞がる。

「オーバーレイユニットを一つ取り除き、『フォース・ストリクス』の効果発動。デッキからレベル4、鳥獣族、闇属性モンスター一体を手札に加えるわ。私は『RR―ファジー・レイニアス』を手札に加え、その効果を発動。私のフィールドに『ファジー・レイニアス』以外のRRが存在する場合、手札から特殊召喚できる。守備表示で特殊召喚」

 続けて現れたのは、黒いスズメの様なモンスター。バサバサと飛び回りながら辺りを警戒している。

「更に魔法カード、『一時休戦』を発動。互いのプレイヤーはデッキからカードを一枚ドローする。その代わり次の相手ターンまで互いに受けるダメージは全てになる。この場合は貴方達三人全員引けるわ」

「ほう、ダメージ無効と引き換えに合計三枚ものカードをドローさせるのか。随分と気前がいいな」

「どうせ殲滅するのだから問題ないわ」

 四人がほぼ同時にカードをドローする。それと同時に一人一人にバリアが張られ、プレイヤーを守る盾となる。

「カードを四枚セットして、ターンエンドよ」

 これでようやく、全員が最初のターンを終えた。状況としてはキングダム・ナイツの三人フィールドに『幻影騎士団ブレイクソード』が並びリバースカードは合計二枚。対する女性のフィールドには守備力2000の『RR―フォース・ストリクス』と守備力1500の『RR―ファジー・レイニアス』、そして四枚ものリバースカードがある。

 しかし、次のターンからは攻撃が可能になる。それは三人もの攻撃を凌ぎ切らなければ女性に勝機は無い事を意味していた。果たしてどう切り抜けるのか、舞と早雲はじっと戦況がどう動くか見つめる。

「私のターン! カードを一枚セットし、『ブレイクソード』の効果を発動。オーバーレイユニットになっている『サイレントブーツ』を取り除き、今伏せたカードとそちらの『フォース・ストリクス』を破壊する!」

「なら、その『フォース・ストリクス』をリリースして罠発動。『ナイトメア・デーモンズ』。貴方のフィールドに攻撃力2000のナイトメア・デーモン・トークンを三体、攻撃表示で特殊召喚する」

 『フォース・ストリクス』が光の粒子となって消滅すると、その粒子が右端の男のフィールドに流れていき、三体のデーモンを生み出した。右端の男は考え込む仕草を見せる。

(これは、どうするべきか。全モンスターで攻撃できるが『一時休戦』の効果でダメージは受けない。攻撃をすれば『ファジー・レイニアス』は破壊できるが、問題はあのリバースカード三枚。迂闊に手を出して『聖なるバリア―ミラーフォース』の様なカードならば目も当てられない)

「一つ聞きたい。『一時休戦』のダメージ無効効果はこのターンまでか?」

「そうね。バトルロイヤルルールなら伸ばす理由が無いからそれでいいわ」

 その答えを聞いた男の目が見開く。

(ならば、ここは攻撃を控え残りの奴に託す)

「墓地の『サイレントブーツ』の効果発動。このカードを除外することでデッキからファントムと名の付いた魔法、罠カードを一枚手札に加えられる。私は『幻影霧剣』を手札に加える。そしてカードを一枚セットし、ターンエンドだ」

「ならば我のターン! 『幻影騎士団クラックヘルム』を召喚」

 現れたのは、青白い焔を纏ったひび割れた兜。手が浮遊しており、何かを求めるように彷徨っている。

「そして『ブレイクソード』の効果発動。オーバーレイユニットの『ラギッドグローブ』を取り除き、『クラックヘルム』と『ファジー・レイニアス』を破壊」

「『ファジー・レイニアス』の破壊は通すけど、罠発動。『威嚇する咆哮』。これで真ん中の貴方はこのターン攻撃宣言できない」

 辺りを獰猛な獣の咆哮が木霊する。それにより、幻影騎士団達は竦み上がったように動かなくなってしまった。

「そして破壊された『ファジー・レイニアス』の効果発動。デッキから同名カードを手札に加えるわ」

 これで尽きていた女性の手札が回復するが、何なのかが分かっている以上そこまで意味は無い。

「墓地に送られた『クラックヘルム』の効果発動。このカードを除外することでエンドフェイズに墓地から幻影騎士団カード、またはファントムと名の付く魔法、罠カード一枚を手札に加える。このままターンエンドとし、『クラックヘルム』の効果発動。『幻影騎士団ラギッドグローブ』を手札に加える」

 墓地から出てきたカードをキャッチする真ん中の男。これで左端の男にターンが回る。

「俺のターン! さあ、そろそろ攻めさせてもらうぞ! まずはカードを一枚セット。そして『ブレイクソード』の効果発動。『ラギッドグローブ』を取り除き、セットした『貪欲な壺』とそちらから見て左側のリバースカードを破壊する!」

「これもフリーチェーンのカードよ。罠カード、『おジャマトリオ』。真ん中の貴方のフィールドにおジャマトークンを三体、守備表示で特殊召喚する」

 ポン! という愉快な音と共にかの有名なおジャマ三兄弟が「ど~も~!」と妙に威勢のいい声で出現し、文字通り真ん中の男の邪魔をする。おジャマ三兄弟は男に向かってクシャミをしたり、鼻くそをほじったり、尻を掻いたりと三者三様の行動を見せる。

「今墓地に送った『ラギッドグローブ』の効果発動。除外し、デッキからファントムと名の付く魔法、罠カード一枚を墓地に送る。『幻影騎士団シャドーベイル』を墓地に送る。更に、このターン俺は通常召喚を行っていない。『切り込み隊長』を召喚。効果で『クラックヘルム』を特殊召喚だ」

 現れたのは、精悍な顔つきの勇ましい戦士。そしてその号令により再度出現する、浮遊する兜。攻撃力は1500と高く無いが、今の状況では攻撃が通るのでさほど重要ではない。

「このままバトルに入る! 『クラックヘルム』でダイレクトアタック!」

 『クラックヘルム』が浮遊している手で拳を作り、女性に迫る。

「ダメージステップ時に『クラックヘルム』を対象に罠カード、『幻影翼(ファントムウィング)』を発動! 攻撃力を500アップさせ、このターンあらゆる破壊から一度だけ身を守る。そして『幻影翼』が墓地に送られたことで『クラックヘルム』の効果発動! ファントムカードが墓地に送られたので攻撃力500アップ。合計1000ポイントアップで2500だ!」

 おジャマトークンはエクシーズ素材に使用できないので、こうするしか無いが攻撃力2500は中々脅威だ。そう思っているうちに『クラックヘルム』が女性に迫るが、相手は攻撃を実体化させることが出来る事を思い出し、舞は思わず立ち上がった。

 しかし、女性は跳躍することでその攻撃を躱して見せた。男の舌打ちする音が聞こえた。

「流石に躱すか。だが次はどうだ!? 『切り込み隊長』と攻撃力が3000になっている『ブレイクソード』でダイレクトアタック!」

 続けて『切り込み隊長』と『ブレイクソード』が斬りかかる。女性は動かずに、デュエルディスクを盾にして二体の攻撃を凌いだ。

「まさか、デュエルディスクで凌ぐだと。ターンエンドだ」

 

キングダム・ナイツ右端

LP:8000

手札:3枚

 

キングダム・ナイツ中央

LP:8000

手札:5枚

 

キングダム・ナイツ左端

LP:8000

手札:3枚

 

ドクロマスクの女性

LP8000→5500→4300→1300

手札:1枚(RR―ファジー・レイニアス)

 

 やはり、ここに来て一気にライフを削られてしまった女性。しかし、彼女は慌てる様子を一切見せない。何故そこまで堂々と振る舞えるのか、舞には理解できなかった。

「やはりこの程度、ね。もういいわ、このターンで殲滅してあげる」

 ギラリ、と殺意のこもった視線がマスク越しに光り、舞は背筋が凍りついた。隣にいた早雲や舞に抱きついているクリフも同じものを感じたようで、戦慄しているのが分かる。

「私のターン! 私は永続罠、『最終突撃命令』を発動! 表側表示のモンスター全てを攻撃表示にする!」

 あのカードは早雲も発動こそしなかったが、使っていたカード。その効力により、おジャマトークンが攻撃表示になる。

「そして魔法カード、『マジック・プランター』を発動。『最終突撃命令』を墓地に送り、デッキからカードを二枚ドロー」

 発動したばかりのカードをあっさりと墓地に送り、手札に変換する。

「魔法カード、『ハーピィの羽箒』を発動。相手の魔法、罠カードを全て破壊するわ」

 これにより、フィールドに伏せられていたカードは一掃される。

「更に魔法カード、『闇の誘惑』を発動。デッキからカードを二枚ドローし、手札の闇属性モンスターを除外する。……除外するのは『ファジー・レイニアス』」

 更にドローを加速させ、手札のカードを除外する。これで準備は整ったようだ。

「ライフを半分払い、墓地の『RR―フォース・ストリクス』を対象に魔法カード、『RUM(ランクアップマジック)―ソウル・シェイブ・フォース』を発動! 選択したモンスターを特殊召喚し、そのモンスターのランクより二つ上のエクシーズモンスターをエクシーズ召喚する」

「何だと!? 墓地のモンスターを利用してのエクシーズ召喚!?」

「しかも、ランクアップ!」

 『フォース・ストリクス』が墓地より蘇り、時空の狭間に消えていく。そして何度目になるか分からない爆発音が聞こえた。

「誇り高き隼よ。英雄の血潮に染まる翼翻し、革命と奪還の道を突き進め! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れろ! ランク6、『RR―レヴォリューション・ファルコン』!」

 現れたのは、血に染まったかのように真っ赤な翼を持つ隼のモンスター。しかし鳥獣というよりはもはや隼の機械といった方が通じる気がする。攻撃力は2000と、素の状態の『ブレイクソード』と互角だ。しかし、今はそのうち二体が攻撃力3000になっているため、今のままではどうする事も出来ない。

「『レヴォリューション・ファルコン』の効果発動。このカードがRRエクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしている場合、一ターンに一度、相手フィールドのモンスター一体を対象に発動できる効果があるわ。そのモンスターを破壊し、攻撃力の半分のダメージを与える。『切り込み隊長』を破壊し、600のダメージを与える」

 『レヴォリューション・ファルコン』からミサイルが放たれ、『切り込み隊長』を爆破する。その余波が左端の男を襲うが、男はディスクのボタンを押す。するとバリアが展開され、爆風から男を守った。

「オーバーレイユニットの『ファジー・レイニアス』を取り除き、『レヴォリューション・ファルコン』の更なる効果発動。このターン、このカードは相手モンスター全てに一度ずつ攻撃できる。更に装備魔法、『巨大化』を発動して『レヴォリューション・ファルコン』に装備。自分のライフが相手より下の場合、攻撃力が倍になる。」

 これにより、『レヴォリューション・ファルコン』の攻撃力は4000。一気に『ブレイクソード』を逆転した。

「バトル。捕らわれた者たちの意思を継ぎ、全ての敵を殲滅せよ! 『レヴォリューション・ファルコン』で全てのモンスターを攻撃!」

 女性の声に呼応し、『レヴォリューション・ファルコン』が無数のミサイルを撃ち込む。

「特殊召喚された相手モンスターとこのモンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時に『レヴォリューション・ファルコン』の効果発動。相手の攻守を0にする!」

「バカな!?」

 男三人の目が大きく見開かれる。つまり、攻撃力4000のダイレクトアタックがそのまま飛んでくるのと同じなのだ。

 右端の男はナイトメア・デーモン・トークン二体を破壊され、トークンが破壊された時に発生する800ポイントのダメージも含めて合計9600のダメージ。

 真ん中の男はおジャマトークン二体を攻撃され、同じくトークンが破壊された時に発生するダメージ300を含めると8600のダメージ。

 最後の左端の男は『クラックヘルム』と『ブレイクソード』を攻撃され、初期ライフと同じ8000のダメージを受けて敗退した。

 三人共、オーバーキルであった。

『ぐああああああああああああ!?』

 三人の断末魔が聞こえる中、爆風がデュエルフィールドを覆った――。

 

キングダム・ナイツ右端

LP:8000→2700→0

 

キングダム・ナイツ中央

LP:8000→3200→0

 

キングダム・ナイツ左端

LP:8000→7400→2900→0

 

ドクロマスクの女性

LP1300→650

 

 デュエルは終わった。デュエルフィールドが解除され、土煙も消える。その中から無傷の女性が現れるが、舞達三人は呆然として言葉も出なかった。

 あれだけ不利な条件で始めたデュエルを、圧倒的な力を持って文字通り殲滅した。その事実が呑み込めないでいる。しかし、それは紛れもない事実なのだ。

 ふと、床に目をやると三枚のカードが落ちていた事に気づく。女性はそれを拾うとスーツのポケットに入れた。その意味を察したのか、早雲が女性に近づく。

「まさか、君達は敗者をカード化させることも……?」

「できるわ。貴女達の力は盗めないものじゃない」

 近づく早雲に対し、女性がディスクを構えているのに気づく。

「待って――!」

 舞は立ち上がり、二人を止めようとする。そこに。

「ふん、終わったか」

 外から聞こえてきた、新たな男の声。そちらを見ると、今度は赤いワイバーンに乗った黒スーツとドクロマスクの小さな人物がいた。女性はその姿を確認すると、しっかりと頷いた。

「ええ。そっちは? 確か、もう一人いたはずだけど」

「ふん、探すのに手間取った。見つけたと思ったらお前のデュエルが終わって、敗北を察したらしいゴミはさっさと逃げた。ゴミらしい判断だがな」

 その小さな人物はワイバーンから降り、こちらを見据える。その双眸からは女性以上の威圧感が溢れていた。

「それで、一つ聞きたいんだけど」

 女性が早雲をじろじろと見る。

「貴女、姫様って呼ばれてたけどまさか、キングダムの関係者? それもかなり上の立場の」

「元関係者だよ。そこは否定しない」

「そう。なら、私達の敵よ」

 再び身構える女性。それを見てまずいと思い、舞が前に出る。

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 彼女は確かにキングダムの関係者だったけど、今は私達と一緒に戦う仲間よ? あんた、私達を助けてくれたんじゃないの?」

「勘違いしないでほしいわね。私はそこに殲滅すべき相手がいたから倒しただけのこと。貴女達を助けたのは、その過程で生まれた結果に過ぎないわ」

 女性の眼光は今にも舞を刺し貫きそうな程に尖ったものだったが、舞とて引き下がるわけにはいかない。睨み合いが続く中、沈黙を破ったのは背の小さい男だった。装着されたデュエルディスクから赤い光線が伸び、舞の手首を拘束する。それを見た女性がため息を吐いた。

「なっ……!」

「女。俺とデュエルしろ。さっきあのゴミを仕留めそこなった憂さ晴らしだ」

 離そうと引っ張り、千切ろうとしてもびくともしない。どうやらこれから解放されるためにはデュエルを受けるしか無いようだ。

「気を付けてよ、舞。なんでいきなりデュエルを吹っかけてきたか分からないけど、負けたらカード化されるかも」

 早雲に忠告され、舞の顔が少し強張るが、もう逃げられない。覚悟を決めるしかなさそうだった。

「舞おねえちゃん、これー」

 いつの間にか、クリフが舞のバッグからデュエルディスクとデッキを取り出してくれていた。

「ありがと、クリフ君」

 それを受け取ると、舞はディスクを装着してデッキをセットする。機動させてからオートシャッフルした後、手札を取る。すると女性がマスクに手を掛けているのが見えた。

「一対一でやる時は顔を見せるのが私達の流儀。私達に臆することなく向かった事に対しても敬意を込めて、自己紹介するわ」

 女性に呼応する様に、男の方もマスクに手をかけ、そして一気に脱いだ。二人の素顔が明かされる。

「……私はロス・インゴベルナブレスのメンバーの一人、“ザ・クリーナー”、藤宮翔子(ふじみやしょうこ)。そして彼が私達を束ねし者――。“キング・オブ・ダークネス”桐生悠貴(きりゅうゆうき)よ」

 二人の素顔を見て、舞は思った。この二人の顔は、まさに強者の顔つきであると。

 




どうも、yun1です。最近は調子がいいみたいですぐに書けますが、あまり調子に乗りすぎると反動が来そうで怖いです。

さて、今回から登場したデュエルチーム、ロス・インゴベルナブレスですが、これはスペイン語で制御不能、コントロール不能な奴ら、手に負えない奴らといった意味があります。

今回の翔子のデュエルでその制御不能ぶりを描けてればいいなと思います。

それでは、次回にてまたお会いしましょう。
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