遊戯王デュエルモンスターズAE   作:yun1

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第5話 闇の鼓動

 奉花市の隣にある都市、崎村間(さきむらま)市。雑居ビルなどの灯りが炯々と灯され、眠る事の無い都市の路地裏で、一つの決闘が行われていた。

 一人は派手な金髪と服装が特徴的な大学生くらいの男性。遊んできた帰りなのか、リュックサックが足元に置かれている。その左腕に装着された学生用に支給されているデュエルディスク、通称アカデミアディスクを構え、息を切らしている。

 もう一人は、黒いコートにフードを被った人物。表情は窺えないが、その雰囲気は闇夜の中にあって不気味さが際立つ。デュエルディスクも学生とは異なり、シャープなデザインが印象的な黒と赤のデュエルディスクを使っている。

「く、くそがぁ……! 行け、『魔法剣士トランス』! 奴のモンスターをぶっ潰せぇ!」

 学生のモンスター、『魔法剣士トランス』が黒コートの男が従えているモンスター、『デーモン・ソルジャー』に斬りかかるが、その攻撃は突如出現した虹色のバリアに弾き飛ばされ、『魔法剣士トランス』も破壊される。

「『聖なるバリア―ミラーフォース』発動。その攻撃は通らない」

 発せられた低い声から、コートの人物は男性であると読み取れる。

「くそ、くそぉ!」

 悔しそうに地団駄を踏む学生。しかし、既に手札が尽きているので出来る事は何も無く、このままターンを明け渡した。リバースカードも無い状態で。

「お前は我らの駒としては使えそうに無い。このまま消してやる。私のターン、『デーモン・ソルジャー』でダイレクトアタック」

 そしてすぐに『デーモン・ソルジャー』が学生に飛び掛かり、手にしている剣を一閃する。僅かに残っていた学生のライフはこの攻撃によって全て奪われ、学生の敗北が決定した。しかし、それだけでは無かった。

「がっ、あっ……?」

 なんと、その攻撃は学生の体を本当に切り裂いていた。袈裟懸けに斬られ、血飛沫が舞い踊る。学生の瞳から光が消え、その場に崩れ落ちる。こと切れた学生を見下ろしながら、黒コートの男はディスクの電源を落とした。すると、その背後から声が掛けられる。

「どうだ、イレイザー・デュエルディスクの調子は?」

「は、問題ありません。マイマスター」

 黒コートの男の背後から現れた人物はマントで体が隠れてはいるが、身長がかなり大柄で黒コートの男を見下ろす様に見つめる。

「お前に新たな任務を与える。先日、首領のお嬢様がアジトから抜け出したのは知っているな? お前に姫様を連れ戻す役割を任せたい。何しろ、逃げ出した際に例のカードを持ち出したそうだからな」

「はっ。マイマスターの命とあればなんなりと」

「姫様の居場所は、万が一に備えて取り付けてあった発信機が示してくれる。抵抗するようなら、デュエルで拘束する許可も帝王から得ている。くれぐれも傷はつけるなよ。いずれ我らを率いる事になる跡継ぎなのだから」

「是非ともお任せを。必ずや姫様を連れ戻してみせます」

「頼んだぞ我が従者、バザンよ」

 再び大柄な男に一例すると、黒コートの男、バザンは姿を消す。残った男は学生の遺体を憐れむように見つめ、かがんだ。

「お前の死を無駄にはしない。お前の死は我らが創り上げる王国(キングダム)の礎となるのだからな」

 男は語りかける様にそう呟き、立ち上がって夜空を見上げるのだった。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 奉花市立、海原(うなばら)小学校。在籍児童数が千人に迫るマンモス校である。そこの二年一組では、帰りの会が今まさに終わろうとしていた。

「きりーつ! きをつけーっ! せんせい、さよーならー!」

「さよーならー!」

 号令係の児童に続き、他の児童も一斉に先生に挨拶する。その中には観月優希とクリフ・シーベルの姿も混じっていた。

「はい、さようなら。帰る時は車や自転車に気を付けましょう」

『はーい!』

 児童達がきゃいきゃいと騒ぎながら、ランドセルを背負っていく。優希とクリフも黄色と青のランドセルをそれぞれ背負って教室から出た。

「クーくん、クーくん。今日は『ギラス』であそぶのー?」

 『ギラス』とは優希とクリフ、二人の姉が行きつけにしているカードショップだ。もっとも、クリフは家がお金持ちのため、新しいカードはすぐに仕入れる事が出来る。そのため、たまに買う事はあるもののデュエル場として使っているのが主なのだが。

「遊ぶよー! ミラおねえちゃんとメイおねえちゃんも来るってー」

「じゃあじゃあ、ぼくとねーねーとせっちゃんおにーちゃんも行っていいー?」

「うん、大丈夫だよ!」

「わーい!」

 今日も『ギラス』で遊ぶことになり、優希は喜びをジャンプで表現する。何故かクリフも一緒になってジャンプしていたが、二人でジャンプすると何だか楽しい。

 学校を後にすると、二人は真っ直ぐに『ギラス』へと向かう。道中、互いの姉や兄についての話をしながら店の前に差し掛かると、既に二人と同世代の子達が集まっていた。

「わっ、わっ。いっぱいいるよー! ふみゅ、ねーねー達は?」

 優希がクリフの方を見ると、クリフは携帯電話を取り出して、姉から来ているメールの確認をしている。

「おねえちゃん達もあと少しで来るってメールが来てたよー」

「そっかー。ね、ね。それまでデュエルする?」

「うん、やろうやろう!」

 二人がデュエルディスクを取り出そうとした、その時だった。

 店の自動ドアが開き、影が一つ飛び込んできた。露出度の高い服を着た、綺麗な女性だ。年齢は舞やミラ、メイレンとそう変わらない様に見える。

「い、いらっしゃい……?」

「ごめん、少しの間隠れさせて」

「へ?」

 店の店主に対してそう言うと、女性は店内の奥に消えていく。向かった先は女子トイレだ。

 直後、自動ドアが轟音と共に破壊された。その時に発生した突風により、売り物のカードやパックも吹き飛ばされていく。

「ああ、店がーーーーー!?」

 店主の悲痛な叫び声が聞こえる中、現れたのは黒いコートを羽織った屈強そうな男。それが前に出て、呆然としている店主に詰め寄る。

「おい、今ここに女がひとり来たはずだ」

「は? っていうかあんた、よくも店をめちゃくちゃにしてくれたな!? どうしてくれるんだ!」

 今度は店主が血相を変えて男に迫るが、前に出てきた男は意に介さないかの様に無視して辺りを見渡す。

「誰でもいい。何処にいるかだけ教えろ。そうすれば手荒な真似はしない」

「って、無視するな! こうなったら警察を――ぐあ!?」

 店主が電話を取ろうとするが、男の蹴りによって沈黙してしまう。

「発信機に気づく辺りは流石我らの姫。だが気づいた時期が遅かった様だ。こうして、しみったれたカードショップに逃げ込まなくてはならないのだからな」

「ど、こ、がしみったれてる、ってぇ……?」

 しかし、またしても男は呻いている店主の言葉を無視して、辺りを見渡す。そして、優希とクリフの方に視線を向けた。二人はビクリと身構える。

「おい、そこのガキ二人。今入っていったはずの女が何処にいるかだけ言え」

「……やだ」

 それに答えたのは、クリフだった。優希は思わずクリフの顔を見る。

「クーくん?」

「メイおねえちゃんに教わったんだもん。変な人についていかない、教えないって。だから絶対に言わない!」

「そうか。なら仕方ない」

 そう言って男は左腕に装着している、デュエルディスクを構えた。優希達が使用しているものとは違う形のものを。

「デュエルだ。私が勝ったら、女の居場所を吐いてもらうぞ」

 思わず優希は息を呑む。しかしクリフは――。

「やだ!」

 と、拒否の姿勢を崩さない。

「っ……このガキ……!」

 流石にこれには激昂したのか、バザンがクリフに向かって手を振り上げる。優希はクリフを助けようと足を踏み出そうとするが、恐怖で足が竦んでしまっている。クリフもぶたれる事を覚悟したのか歯を食いしばる。

「待ちなさい!」

 バザンの張り手が振り下ろされようとした瞬間、店内に大きな声が響き渡った。皆が一斉に振り返る。クリフはその姿を見て、安堵の表情を浮かべていた。

「その薄汚い手を今すぐ下ろしなさい。でないと地獄に堕とす」

 その人物、ミラ・シーベルは殺意が籠った視線をバザンに向けている。クリフはバザンが呆然としている隙を突いて、優希の腕を掴んで姉のいる方に向かう。

「なっ、このガキ!」

 バザンが捕まえようとするが、空振りに終わる。こうしてクリフと優希は無事に姉達の許に帰って来られた。

「おねえちゃーん!」

「クリフっ! 大丈夫? 怖かったよね……」

 思いっきりミラの胸に飛び込み、安心感を得ようと顔を埋める。ミラもクリフを思い切り抱きしめてくれた。

「でもでも、ボクがんばったよ。ちゃんとメイおねえちゃんに言われた事を守ったもん! 変な人に何も教えないって」

「そうでしたか。クリフ様は偉いですね。ちゃんと優希ちゃんも連れてこられたのですから」

 ミラの隣にいたメイレンが、ニコリと笑った。クリフもつられて笑う。

「ねーねー!」

「優希! 怪我はないの!?」

「だいじょーぶだよ、ねーねー!」

「うわ、こいつは酷ぇな……。店長、大丈夫っすか?」

 一方の優希も舞の許に飛び込んでいた。その傍らでは刹那が店の惨状を見渡し、倒れている店長を介抱していた。

「さて、と。メイ、クリフをお願い」

「はい、お嬢様」

 ミラがクリフを引きはがし、メイレンに預ける。メイレンに肩を抱かれながら、クリフは不安そうに姉の顔を見上げる。

「大丈夫よ、クリフ。お姉ちゃんがあんなのに負ける訳ないでしょ?」

「……うん! おねえちゃんは強いもんね!」

 姉弟は拳をぶつけあって、笑顔を見せる。ミラはバザンの前に立ちはだかる。

「何があったか知らないけど店を破壊するなんて、随分な事をするじゃない。けど、私にはそれ以上に許せない事がある」

 そう言うと、ミラは相手を刺し殺すかの様な鋭利な視線をバザンに向ける。

「よりによって私の大事な可愛い弟に、手を出した事よ。地獄に堕ちる準備は出来ているわね?」

 デュエルディスクを構えるミラ。それを見たバザンはため息を吐く。

「……仕方ない。そこのお嬢さんとデュエルする意味はないのだが、お嬢さんはやる気のようだ。なら私が勝ったら店主、女の居場所を今度こそ吐いてもらうぞ」

「女? 何のことか良く分からないけど、なんでもいいわ。早くしなさい」

 言われるまでもない、と吐き捨てながらバザンはディスクを構え手札を取る。ミラもデュエルディスクを起動させてデッキをシャッフルし、手札を取る。

「……そういえば、お嬢さんの名前を聞いていなかったな。私はバザン」

「ミラ。ミラ・シーベルよ」

「ほう? 何処かで聞いた名だな」

 ミラの名を聞いたバザンが怪訝そうな顔を見せるが、すぐに表情を元に戻す。

 暫しの静寂の後――。

『デュエル!』

 戦いの火蓋は切って落とされた。

 

ミラ:LP8000

 

バザン:LP8000

 

「どうやら私の先攻の様だ。私は『デーモン・ソルジャー』を召喚」

 現れたのは、正に悪魔と呼ぶにふさわしい恐ろしい顔つきの戦士。効果を持たない通常モンスターではあるが、攻撃力は1900と下級モンスターとしては優秀な数値を誇る。

「カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!」

 ミラは弟にされた仕打ちに対する怒りをぶつけるかの様に、気迫あるドローを見せる。

「私のフィールドにモンスターが存在しない時、『フォトン・スラッシャー』は手札から特殊召喚できる」

 ミラがカードを叩き付けると、空間を幾重にも切り裂く剣筋が見える。それを突き破る様にして現れたのは、光の粒子で構成された戦士。片刃の剣を構え、『デーモン・ソルジャー』と対峙する。

「更に『フォトン・クラッシャー』を通常召喚!」

 続けざまに現れたのは、やはり光の粒子で構成された人型のモンスター。今度は打撃系の武器を携えている。

 両者共に下級モンスターでありながら攻撃力2100、2000という数値を持つモンスターだが、ミラは惜しげも無くこの二体を重ねる。

「私はレベル4の『フォトン・スラッシャー』と『フォトン・クラッシャー』でオーバーレイ!」

 二体のモンスターが別の時空に繋がる穴へと吸い込まれ、爆発を起こす。

「エクシーズ召喚! 行くわよ、『輝皇帝ギャラクシオン』!」

 現れたのは、白銀の甲冑を纏った光の皇帝。光り輝く剣を振りかざし、『デーモン・ソルジャー』に突き付ける。

「『ギャラクシオン』の効果発動。オーバーレイ・ユニットを二つ取り除き、デッキからあるモンスターを特殊召喚する」

「あるモンスター……?」

「来ますね、お嬢様のエースモンスターが」

 『ギャラクシオン』が自身の周りを浮遊していたオーバーレイ・ユニット二つを剣に吸収すると、それを天高く放り投げた。すると宇宙空間が広がり、星々が輝きを放つ。

「闇に輝く銀河よ、希望の光となりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れなさい、『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)』!」

 現れたのは、瞳の奥に銀河を宿した神々しく輝く竜。幼い頃からずっと一緒に歩んできた、ミラの魂とも言うべきモンスターだ。

「やったー! おねえちゃんの『銀河眼』だー!」

 クリフが喜んでいるのが見える中、バザンは呆然と『銀河眼』の姿を見つめる。

「こいつは……」

「覚悟しなさい。『銀河眼』で『デーモン・ソルジャー』を攻撃!」

 『銀河眼』がアギトを開くと、光の粒子が集まっていく。その粒子は巨大な閃光となって『デーモン・ソルジャー』目がけて放たれた。

「罠カード、『ドレインシールド』発動! 攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分ライフを回復する!」

「させないわ。『銀河眼』の効果発動! このカードが相手モンスターと戦闘を行う時、このカードと攻撃対象モンスターを除外する」

「何!?」

 突然、上空で輝く銀河の光が強くなったかと思うと、『銀河眼』と『デーモン・ソルジャー』の二体を吸収していく。これにより、『ドレインシールド』は空振りに終わる。

「これでアンタのフィールドはがら空き。『ギャラクシオン』でダイレクトアタック!」

 『ギャラクシオン』が鋭く踏み込み、光の剣でバザンを切り裂く。

「ぐうあっ……!」

 大きくよろけるバザン。ソリッドビジョンを使ったデュエルはリアルさを出すために、ダメージを受けた時に衝撃が来る様に出来ているが、あくまで僅かなものだ。バザンのダメージの受け方は大げさに見える。

「バトルフェイズ終了と同時に、『銀河眼』の効果で除外されたモンスターはフィールドに戻る」

 再び銀河が輝くと、二体のモンスターが舞い戻る。

「『銀河眼』を良く知っていれば、『デーモン・ソルジャー』を敢えて破壊させて『ギャラクシオン』の攻撃の時に『ドレインシールド』を使ってたわね」

「ま、『銀河眼』自体がそう流通しているカードじゃねぇからな。ああなるのも無理は無い」

 舞と刹那の言葉に耳を傾けながら、ミラは手札のカードを手に取った。

「カードを一枚セットして、ターンエンドよ」

 

ミラ:LP8000

手札:3枚

 

バザン:LP8000→6000

手札:3枚

 

「そうか、何処かで聞いた名だと思っていたが、思い出したぞ。お前、世界中のデュエルディスクの製造、販売を行っているシーベル・コーポレーションの令嬢だな?」

「そうよ。それがどうかした?」

「これは驚いた。まさかご令嬢様がこんな場末のカード屋に足を運んでいるとはな」

 嘲るようなバザンの声に、ミラは不快そうに吐き捨てる。

「私が何処に行こうと、私の勝手じゃない。それより、今はアンタのターンよ。早くカードをドローしたらどうなの?」

「ふ、そうだったな。ドロー。まずは速攻魔法、『サイクロン』を発動。そのリバースカードを破壊させてもらう」

 バザンのフィールドに発生したサイクロンが、ミラのリバースカードである『聖なるバリア―ミラーフォース』を破壊する。

「そして装備魔法、『堕落(フォーリン・ダウン)』を発動する。『銀河眼』はいただくぞ」

 『デーモン・ソルジャー』の目が妖しい赤い光を放ったかと思うと、『銀河眼』の瞳が『デーモン・ソルジャー』と同じ色になり、バザンのフィールドへ向かう。

「『銀河眼』!?」

「この装備魔法は私のフィールドにデーモンモンスターがいなければ破壊されるが、今は『デーモン・ソルジャー』がいる。お前が残してくれたおかげだな」

「くっ……」

 ミラに対峙する『銀河眼』。今までミラと一緒にいた者からすれば、考えられない様な光景だった。

「ふ、自らのモンスターに蹂躙されるがいい。『銀河眼』で『ギャラクシオン』に攻撃」

 『銀河眼』の放つ閃光が、ミラの『ギャラクシオン』に迫る。『ギャラクシオン』も光の剣で対抗するが、力の差は覆しがたく破壊される。

「くあっ……!? この、痛みは……?」

 直後、全身を駆け抜けた普通のデュエルではありえない痛みにミラの顔が歪む。バザンは口元に下卑た笑みを浮かべる。

「我らのデュエルは普通のデュエルでは無い。受けたダメージが体感システムの何倍もの衝撃となって襲う。いや、本来なら実際に傷つける事も出来るがな」

「なんですって!?」

 ミラの目が見開く。そして刹那も目を見開いている。

(実際に傷つける? それってまさか……!)

「『デーモン・ソルジャー』のダイレクトアタック!」

 ミラを守るモンスターはいない。デーモン部隊の尖兵たる存在の攻撃は、直接攻撃となってミラに襲い掛かる。

「あぐううう!」

 腹部を切り裂かれ、先程よりも感じる強い痛みに、ミラはその場にしゃがみ込む。

「お嬢様っ!」

「おねえちゃーん!」

「ミラっ!」

 メイレンとクリフ、舞の声が響く。ミラは暫く動けなかったが、それでも痛みを堪え、踏ん張って立ち上がる。

「ほう、なかなか気持ちが強いな。普通の奴ならこれで心が折れるのがいるがな」

「弟のために始めたデュエルを、放り出す訳、ないでしょ……!」

「おねえちゃん、大丈夫!?」

 姉を心配する弟の声。姉は弟の方に振り向き、しっかりと頷く。

「大丈夫よ。言ったでしょ、お姉ちゃんは負けないって」

「あぅー……」

 それでも痛がっている表情は見えているのか、弟の表情は晴れない。

「カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

 

ミラ:LP8000→7000→5100

手札:3枚

 

バザン:LP6000

手札:1枚

 

「私のターン!」

「ここでスタンバイフェイズ時に『堕落』のデメリット効果発動だ。私は800のダメージを受ける。

 『銀河眼』から流れ込んだエネルギーを受けるが、バザンの表情は変わらない。

 ミラはドローしたカードを確認して手札に加えると、敵の手に渡っている『銀河眼』を見上げる。

「『銀河眼』……やっぱり私のモンスターだけあって、敵に回すと厄介ね。けど、すぐに取り戻してやるわ。手札から速攻魔法、『フォトン・リード』を発動。手札からレベル4以下の光属性モンスター一体を攻撃表示で特殊召喚する。行くわよ、『ギャラクシー・ドラグーン』!」

 現れたのは、『銀河眼』を一回り小さくしたようなドラゴン。攻撃力は『ギャラクシオン』と同じ2000だ。

「ほう、そんなモンスターで何ができる?」

「『ギャラクシー・ドラグーン』で『銀河眼』に攻撃!」

「自爆特攻か!?」

 『ギャラクシー・ドラグーン』が光の粒子を集め、閃光として放つ。

「『ギャラクシー・ドラグーン』はドラゴン族モンスターにしか攻撃できないけど、その代わりドラゴン族モンスターと戦闘を行う時、バトルフェイズでの攻撃対象モンスターの効果を無効にするわ。更にダメージステップの間だけ、このモンスターの攻撃力を1000アップさせる」

「なにっ!? これでは『銀河眼』の効果が……」

 『銀河眼』も迎え撃つべく、閃光を放つ。しかし同威力となった二つの閃光は拮抗し合い、やがて巨大な爆炎を引き起こした。

 爆炎が消滅すると、二体のモンスターはフィールドから消滅していた。

「馬鹿な。相討ちをしてまで自らのモンスターを取り戻すか」

「もちろん、このままで終わる訳がない。メインフェイズ2に入り、装備魔法『銀河零式(ギャラクシー・ゼロ)』を発動。墓地のフォトンかギャラクシーモンスターを一体、特殊召喚するわ。再び降臨しなさい、『銀河眼の光子竜』!」

 主の許に舞い戻る、銀河の竜。ミラは満足そうな表情を浮かべる。

「ただし、このカードを装備したモンスターの効果は無効となり、攻撃も封じられる。けど、私はまだ通常召喚をやっていないわ。『銀河の魔導師(ギャラクシー・ウィザード)』を召喚!」

 現れたのは、白い法衣を身に纏い、一つ目を不気味に光らせた魔導師。

「『銀河の魔導師』の効果発動! メインフェイズ時、このカードのレベルをターン終了時まで4つ上げるわ。『銀河の魔導師』のレベルは4から8に上昇する」

「これでレベル8のモンスターが二体……来るか」

「私はレベル8の『銀河眼の光子竜』と『銀河の魔導師』でオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 二体のモンスター、『銀河眼の光子竜』はドラゴンの光となって、時空の渦に吸い込まれ、爆発を起こす。

「宇宙を貫く雄叫びよ、遥かなる時を遡り銀河の源より甦れ! 時空の化身、ここに顕現! 現れなさい、『No.107銀河眼の時空竜(タキオン・ドラゴン)』!」

 現れたのは、黒光りする体躯を持つ、刺々しいフォルムの竜。大きく咆哮すると、辺りの空気が震えた。

「もう一体の『銀河眼』だと……」

「私のエースは二体いるわ。一体は『光子竜』、もう一体はこの『時空竜』。この二体でアンタを地獄に叩き込んであげるわ。ターンエンドよ」

 

ミラ:LP5100

手札:0枚

 

バザン:LP6000→5200

手札:1枚

 

 『時空竜』がミラの言葉に呼応するかの様に、もう一度雄叫びを上げる。その存在感はそこに居るだけで相手を飲み込める程、圧倒的だった。

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