劇場版(風)ポケットモンスターXY 暁の鳳雛(ひな)ホウオウ 作:平成たろう
ポケットモンスター、縮めてポケモン。この星の、ふしぎなふしぎな生き物。空に、海に、大地に、さまざまなポケモンが、なかよく共存している。
この少年、マサラタウンのサトシ。相棒のピカチュウと、バトル&ゲット。旅の仲間のセレナ、シトロン、ユリーカといっしょに、こころの奥の真実をさがして、旅をつづけている。
「風の都カエレスダム、平地のなかに突如あらわれる街並はふしぎという他なく、観光客を童話のせかいにいざなってくれる街……。だって、サトシ」
「へー、童話の世界か……」
サトシたちは旅の途中、セレナが是非寄ってみたいと言っていた風の都、カエレスダムにおとずれていた。
「名物は、ミルタンクからしぼったミルクを原料としたチーズ。味はとても濃厚で、また芳醇なかおりが鼻をたのしませる。えっと……この先の広場で、チーズ市をやってるんだって」
ガイドブックから顔をあげたセレナは、すこし伸びあがって、運河に沿うた行く手のほうを指さした。
「地図によると、あっちね」
「じゃあ、ユリーカがいちばん乗り!!」
「待てって、おれも行くよ」
「ちょっとふたりとも、走らないでくださいっ!!」
シトロンの制止もきかず、ふたりは走っていった。バザールのにぎやかさも近づいてくる。ふたりはほんとんどいっしょに建物の角をまがると、活気あふれる人の流れと極彩色の市場の景色が、ふたりのこころを迎えた。
「ねえ、サトシ、あそこで何かやってるみたいだよ」
「本当だ。行ってみるか?」
「うん」
ユリーカはおおきく肯き、ゆっくりやってくるふたりに向かって、
「あっちに行ってるね!!」
と大声で伝えた。
シトロンとセレナは苦笑いをしつつ、ちいさく手を振る。そうしてサトシたちは、人だかりの出来ている方に走っていった。どうやら四ツ路になっているところで、なにやら行われているらしい。
ふたりは人だかりの前に立って、すこし躊躇っていたが、意を決して暑苦しいほどの人混みの中に入っていった。左右に揉まれつつ、ほっとひと息つけるところに出てくると、サトシのすぐ目のまえで、ほのおタイプのブーバーンがばったり倒れた。
「ぼくの勝ちだね」
そう言ったのは、ブーバーンの向かいに立ったひとりの男だった。そいつはあたりをぐるりと見まわし、きょとんとするサトシのことを見つけたようで、
「ピカチュウか……。いいだろう、君、名前はなんて言うんだ?」
「おれ?」
「そうだ」
「おれはマサラタウンのサトシ、こいつは相棒のピカチュウ」
「マサラタウン。ずいぶんと遠いところから……。まあ、いいさ。トレーナーであることに変わりはない。じゃあサトシ君、ぼくとポケモンバトルをやらないかい?」
「ポケモンバトル……」
サトシはピカチュウと顔をあわせた。
もちろん――――
「いいぜ。売られたバトルは買うのが礼儀。いけ、ゲコガシラ、君に決めた!!」
シトロンたちがようやく追いつくと、バトルはすでに佳境に入っていた。たがいに最後の一匹をくり出したところである。サトシは相棒のピカチュウを、相手はガルーラを。そしてそのガルーラはシトロンの目の前で、虹のような七いろの光を放ってメガシンカした。
お腹の袋にいた子どもがひょっこり外に飛びだしたのだ。ユリーカは目をかがやかせて、かわいいと叫んでいるが、サトシのほうはいささか動揺――――しかし、それもまた、ポケモンバトルの醍醐味だ。
キャップをかぶりなおすと、ピカチュウにでんこうせっかを命じた。が、おやこあいの力はすさまじい。ピカチュウのでんこうせっかを親のほうがひきうけたと思うと、子どもの片手が真っ赤に燃えて、ほのおのパンチが飛んでくる。
ピカチュウは直撃、ふきとばされる。そして矢継早に、グロウパンチの嵐だ。ピカチュウはきりきり舞いしながらそれを避けるが、ガルーラのおやこあいには防戦一方である。
サトシは逆転の一手をあたりに捜すと、ディアルガの噴水がかたわらにあった。サトシは叫んだ。絆の力ならばサトシたちも負けていない。ピカチュウは即座したがって、ディアルガの噴水のうえに飛び乗った。
相手のトレーナーは、ガルーラたちにはかいこうせんを命じる。
こちらに迫る二条のはかいこうせんに、ピカチュウはぎゅっと目をつむるが――――そのとき、ピカチュウの足もとから水が吹きだし、ピカチュウを空高く持ち上げた。
観衆があっと見上げたなかで、サトシの声がひびく。――――十万ボルトだ!! はげしい雷撃は風の都にこだまし、ガルーラおやこはあえなくノックアウト。空いっぱい鳥の羽音が満ちみちて、やわらかな風が吹き抜ける。