竜の軌跡   作:LEGEND

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第3話

翌日、昨日のリリスが何を感じていたことなど何も知らないケインは目を覚まして顔を洗ったあと、朝食を作り始める。モコもケインの周りで「キュウキュウ!」言いながらピョンピョン飛び跳ねている。朝飯が待ち遠しくて仕方ないようだ。その姿に微笑ましくなりながらケインは朝ご飯を作り、テーブルに並べてリリスを待つことにした。

 

今日は珍しく5分もしない内にリリスが二階から降りてきてすぐ顔を洗いに行った。ケインが料理を作ってからさほど時間がかからずに、2人は朝食を食べ始めた。

 

「今日は珍しく早いね?いやな夢でも見たのかな?」

 

「べ、別にケインには関係のない話でしょう!さっさと食べて協会に行くわよ!」

 

「僕は心配して言ってるんだよ?それなのにその反応はないと思うけどなぁ・・」

 

「ご、ごめん・・。でも本当に大丈夫だからケインは心配しなくていいからね?」

 

「ならいいけど。なんかあったら僕に言ってよ?」

 

「うん。ありがとう心配してくれて」

 

「どういたしまして」

 

ケインは笑って返事をしたあとまた朝食を食べ始めた。リリスが早く起きたのは単純に昨日の出来事のせいでなかなか眠りにつけずに朝方まで続いたことと、ケインと夫婦になって子供もいて幸せそうに暮らしている夢を見て恥ずかしさのあまり飛び起きたからである。そんなことをケインに話せるわけがないので。

 

(ケインと結婚していた夢を見たなんて恥ずかしすぎて言えるわけ無いでしょ!でもあれが実現したら一番いいのになぁ・・)

 

「朝御飯食べないの? 食べないなら僕が食べるけど」

 

「えっ!?た、食べるわよ心配しなくても!」

 

「ならいいけど」

 

そう言ってケインは自分の食べ終わった食器を片付けにキッチンへと歩いていった。リリスは考えるだけで恥ずかしくなるようなことを一旦頭の中から追い出して、朝御飯を先ず食べることに集中することにした。

 

 

 

ケインとリリスはトレント支部に行く前に家の掃除を始めた。長らく掃除をしてなかったため、掃除する場所が多かったせいで3時間ほど掃除をしていた。掃除を終えたあと、ケインが昼御飯を作ってそれを食べてからトレント支部へ行くことにした。

 

その道中、トレントへ入るやいなやなにやら慌ただしい雰囲気が街全体を覆っていた。なにやら良からぬことが起こったと思った2人は急いでトレント支部へと向かう。トレント支部の扉を少し乱暴に開けて、カウンターでなにやら通信機で電話をしていたフウカに事情を聞いた。

 

「フウカさん!なにかあったんですか!」

 

「トレント鉱山で地盤が崩れて鉱員が閉じ込められたそうよ。今軍察に連絡を送ったけど到着が明日の早朝になりそうなのよ」

 

軍察というのはマリーナ王国の軍部が管轄している警察の事である。遊撃士でも手に負えない事件や事故が発生した場合に動く機関で、それ以外は情報局として稼働している。軍察のトップの人物は王国史上最年少で大佐の位に就いた実力者であり、性格も顔も申し分ないという完璧人間のため、世の女性たちを虜にしている言わばイケメンであることは別の話である。

 

「大変じゃないですか!だから街の人達があんなに慌てていたのか」

 

「それに最近トレント鉱山内で魔獣が発生しているらしいのよ。ケイン君とリリスちゃんが遊撃士になる前はバルトがよく退治に行っていたぐらいね」

 

「それじゃあ閉じ込められた鉱員の人達は!?」

 

「襲われていたとしてもおかしくない状況ね」

 

フウカは深刻な表情を見せながら言った。魔獣にも人を怖がって襲わない奴もいれば、逆に怖いからこそ襲ってくる魔獣もいる。バルトがわざわざ鉱山まで行って退治しに行くほどなら後者の可能性が高い。或いは人を食べてしまう魔獣の可能性もある。そんな危険な所に朝方までいたら鉱員達の命が危ない。そう思ったケインは無言のまま得物の刀の鞘を握り締め、外に出ようとした所でリリスに腕を掴まれて阻止された。

 

「リリス、離してくれ・・」

 

「離すわけないじゃない。1人でトレント鉱山に行かせるわけにはいかないでしょ?」

 

「行かせてくれ。今もこうしている間に鉱員の人達の命が脅かされている。早く行って助けてやらないと!」

 

「1人でなんとかなるわけないでしょ!!どうして1人で行こうとするの!!私も協力ぐらいするから頼ってくれたっていいじゃない!」

 

リリスは蚊帳の外にされそうになったことに酷く怒って涙ぐんだ目でケインを睨みつけた。ケインはその迫力に押されて後ろに一歩下がってしまった。

 

「だ、だってトレント鉱山は坑道が長いことで有名だし、今は魔獣も湧いている。リリスはその環境に耐え抜いて鉱員が閉じ込められている場所まで魔獣を倒しながら行って、鉱員を助けても今度は魔獣の攻撃を鉱員に当たらないように気を配りながら出口までまた歩いていける?」

 

「そんなことできるに決まっているでしょ!!何のために遊撃士になったと思ってるの!私は人々の役に立ちたくて遊撃士になったんだから今がその時でしょ!ケインがなんと言おうと私は行くからね!!」

 

「・・・・わかったよ。僕は何も言わない。リリスも無理だけはしないでよ?」

 

「わかってるわよ。ケインもあまり心配させないでね?」

 

ケインは頷くことで肯定をリリスに示して、そのままフウカがいるカウンターまで歩いていった。

 

「フウカさん。軍察の人が来るまで待てと言われて待てる僕達じゃないんです。迷惑をかけるかも知れませんが、2人でトレント鉱山に閉じ込められた鉱員の人達を助けに行ってきます」

 

「今更駄目だと言って聞かないのは判っているから行ってらっしゃい。怪我だけはしないこと。いい?」

 

「判ってます。こんなことで怪我するような身体じゃありませんから」

 

「なら大丈夫ね。あとこの事はトレント支部からあなた達に向けた依頼ということにしておくわ。この依頼をこなしたら本部への推薦状を書いてあげる」

 

本部への推薦状というのは正遊撃士になるための必需品のことだ。トレントを合わせて5つの都市の支部から貰った推薦状をマルトス本部に渡して、そこでそれなりの働きをしたら晴れて正遊撃士になれる。その一つが貰えるということで、ケインとリリスはより一層やる気になっていた。

 

「さぁ、これでこの依頼は遊撃士協会トレント支部直々の依頼になったわ。あなた達が何も背負い込むことは無いから好きなようにやってきなさい。但し無理だけは絶対しないこと」

 

「フウカさんありがとうございます。それじゃあ行ってきます!!」

 

「行ってくるわね!!」

 

2人はそのまま勢いよく扉を開けてトレント鉱山へと走っていった。その後ろ姿を見つめていたフウカは2人の無事を祈るとともに、2人が成長していく姿を微笑ましく思っていた。

 

トレント鉱山へは空港の出入り口がある北側の門から外へ出てしばらく道なりに進み、分岐点で右に曲がると首都のマルトスに向かう街道になるが、左に進むとトレント鉱山へ向かう山道が広がっている。ケインとリリスは急いでその山道を登っていき、トレント鉱山の出入り口がある場所に着いた。そこには鉱山の関係者とその家族、街の野次馬で埋め尽くされていた。皆鉱員達の救助を祈りながら待っているようだ。

 

「凄い人集りだ。これは鉱山に入るまでに骨が折れそうだね」

 

「取り敢えず鉱山長に話を聞きましょ?この鉱山で起こっていることを詳しく聞かないと」

 

「そうだね。それじゃあ行こうかリリス」

 

「当たり前じゃない。早く行くよケイン!」

 

2人はまず鉱山長を捜すために人混みの中へと走っていった。そして周辺を見て回っていると鉱員救助作戦の本部を見つけた。2人は取り敢えずその本部の中へと入っていった。

 

「すいません!遊撃士協会の者ですが今回の件について遊撃士協会直々から依頼が出たのでお伺いしました」

 

「それは本当かね!! それは丁度良かった。ついさっき落盤が起きた場所を見つけることができたんだ! ささ、こっちに来て話し合いをしようじゃないか!」

 

白髪を所々に生やした筋肉質の50代ぐらいの人から声がかかった2人は、空いていた4席の内の2席に腰掛けた。会議をしている人達は皆鉱員の人のようで、体格が実年齢に見合わない人ばかりだ。ケイン達が席に座ったのを見計らって鉱山長であろうさっきの人が話しを始めた。

 

「遊撃士の人達が応援に来てくれたのは本当に有り難い。落盤が起こった場所は特定できてもそこまで行くには儂等ではキツイものがある。最近は魔獣も大変な数が湧いてきている。一匹なら何とかなるが集団となると儂等では到底適わん。是非とも君たち遊撃士のお力添えをお願いしたい」

 

「判っています。僕等の仕事は魔獣退治も有りますが、その街の人命を救助するのも遊撃士の仕事の一つですから」

 

「何とも有り難い御言葉だ。それでは君達にはこのトレント鉱山の地図を託す」

 

鉱山長は席を立ち、会議が行われている机のど真ん中に置かれていた地図を折ってコンパクトにしたものをケイン達の席まで持って行って渡した。2人はすぐさま席を立ってその地図を受け取り、広げて鉱山の全貌を確認してみる。その地図には大きく赤い丸で囲っている部分が一つと、至る所に赤い×印が記入されていた。

 

「その地図の大きく赤い丸で囲っている部分は鉱員達が閉じ込められている場所だ。トレント鉱山の最下層の一番奥にあるから気をつけてくれ。あと、赤い×印の所が小規模の落盤が確認されている場所だ。落盤はこれからも起きる可能性もあるから気をつけてくれ。それに鉱山の中は少し薄暗いと思うからこれを持っていきなさい」

 

鉱山長は地図の他にも魔力を流すことによって光るライトと、魔獣の油を染み込ませた紐に火をつけることで明かりを灯すランプ、ランプが使えなくなった際に使える松明の3つを渡してくれた。

 

「ありがとうございます。魔力の方はリリスが持っておいて。火をつけるランプと松明は僕が持っておくから」

 

「わかったわ」

 

「そうだ、ちょっと待ってくれ」

 

鉱山長は何かを思い出したかのように、会議に参加していた鉱員の1人に耳打ちをした。その耳打ちされた人物は手元にあったカバンから赤い何かを取り出してケインに渡した。

 

「この赤いものは何ですか?」

 

「岩を爆破するためのダイナマイトだよ。鉱員が閉じこめられている場所は相当大きな岩が転がっているはずだ。そこでダイナマイトをぶっ放してやれ」

 

「ダ、ダイナマイトって!大丈夫なの?急に爆発したりしないの?」

 

「そんなことは絶対有り得ない。もしそんな危ない代物だったら君達に渡していない」

 

ダイナマイトを渡した人物は少しぶっきらぼうにものを言った。取り敢えず信頼できるものとしてそのダイナマイトを受け取ったケインは、予め持ってきたポーチのようなものにダイナマイトを入れて、鉱山長に話を始めた。

 

「それでは鉱員救助作戦と平行して魔獣討伐も行います。鉱山長さんは僕たちが戻ってくる鉱山の中に入れないようにしてください。あと魔獣が出てくることも有り得るのでその時は退治するなり逃げるなりの行動をとってください」

 

「判った。こちらのことは私が何とかするから君達は何も心配せずに救助をしてくれ」

 

「はい!それでは行ってきます! 行こうかリリス」

 

「えぇ!早く助けに行きましょ!」

 

2人は鉱山長と会議室にいる人達に挨拶を行った後、急いで鉱山へとむかった。

 

 

 

 

トレント鉱山の中は酷い有り様だった。魔獣を寄せ付けない効果を持つ光源も落盤のおかげで所々壊れていて全体的に薄暗い。しかも落盤で崩れた岩などが散乱して人1人歩くだけで精一杯なぐらい道幅が狭く、魔獣も光源が無いせいでちらほら確認できる。奥に進むだけでなかなか骨が折れる作業だ。しかもトレント鉱山がそもそも複雑な形状で、坑道が大量に存在するので更に大変なことになっている。ケインはさっき鉱山長から貰った火をつけるランプを、リリスは魔力を流して明かりをつけるライトを灯しながら奥へと進んでいた。

 

「この有様は酷い。一体なにが起こればこんな大規模な落盤が起きるのかな?」

 

「そんなの私が知るわけないでしょ! でも地震なんかでここまで崩れるのはおかしいと思うけど?それにしてもこの岩鬱陶しいわね!」

 

「かといって人の手によって此処までの落盤が造れるのかな?」

 

リリスの言っていることも一理あるが、人為的に大規模な落盤や所々の地面の陥没が起きるほどの自然災害を造れる訳がない。ましてや魔法だった場合、これほどの魔法は禁止になっているはずだ。でも、もしこの落盤の原因がなにかしらの自然現象だった場合、家にいる時点でも地震なら揺れを感じただろうし、他のことでも絶対気づいたはずだ。ケインはこの落盤の原因を探るのも目的の一つに入れて鉱員救助のための探索を続行した。

 

所々に灯りがあるおかげで陥没している場所は避けて通れるが、急に岩の影から魔獣が出てくることに関しては避けては通れない。魔獣が逃げてくれればいいのだが、好戦的な魔獣もいるわけで。

 

「はぁぁぁああ!」

 

ケインは、影が実体化したような黒い魔獣を斬る。魔獣は悲鳴も断末魔も上げることなく白い光となって消えていく。ケインはそれを確認すると刀を鞘に納め、少し離れて魔法の準備をしようとしていたのにケインに見せ場を取られて若干不機嫌なリリスのところまで歩いていった。

 

「ケインばっかりズルイ!私の活躍の場を取らないでよ!」

 

「そんなこと言ったって魔獣が僕を襲ってくるから撃退するしかないでしょ?それとも僕が魔獣にボコボコにされればいいの?」

 

「そういうことを言っているわけじゃないわよ。ただ私にも依頼をこなしているっていう実感が欲しいだけ」

 

「なら今も鉱員救助っていう依頼をこなしているでしょ?それに魔獣なんて親分的存在を倒さないことにはすぐ湧いてくるから大丈夫。見せ場はまだまだある」

 

そういってケインは奥へと進んでいく。少し遅れてその後ろをリリスが付いていった。奥に進む度に魔獣の数が増えてきている気がしているケインは、魔獣の気配を察知出来るように常に気を周りに配って警戒することにした。

 

鉱山ということで下の坑道に行くためのエレベーターが至る所に設置されている。鉱員が閉じ込められている場所まで行くには、エレベーターを下へ上へと何度も使わないと行けない。まるで性質の悪い立体迷路だとケインは感じていた。

 

リリスもリリスで影が実体化したような黒い魔獣や落盤した岩と混じって襲ってくる岩にデカい口と目が付いた魔獣、青赤緑といった色とりどりのスライム、人を襲ってくる蝙蝠といった魔獣共を倒しながら鉱山を進むので少し疲れてきているみたいだ。その証拠に歩く速さが遅くなったのと全くと言っていいほど喋らなくなった。それを薄々感じていたケインはリリスに尋ねた。

 

「リリス大丈夫?疲れてない?」

 

「だ・大丈夫よ・・・。私のことなんか・・心配しなくてもい・・いから早く行きましょ」

 

「今は一刻を争うから休憩できないからなんとか頑張って。無理そうだったら僕にちゃんと言ってよ?」

 

「判ったわ。ありがとう」

 

そう言ってはいるものの表情は険しいままだ。ケインは早く鉱員達を見つけてリリスを休ませなければいけないという焦りが徐々に生まれてきていた。そんなことはお構いなしに湧いてくる魔獣共を片っ端から倒しながら、先へと急ぐ2人は地下へと降りるエレベーターを見つけ、鉱山最下層へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

ケイン達が鉱山で悪戦苦闘している頃、フウカは最近何故トレント鉱山に魔獣が湧いてきているのかという疑問を解決するために、街の図書館に来ていろんな種類の文献を漁っていた。鉱山の歴史が綴られた物や魔獣の習性を纏めた魔獣図鑑、さらにはマリーナ王国誕生以前からの歴史を纏めた文献などありとあらゆる物を読みふけっていた。

 

「鉱山の歴史本にはこれといったものは書かれてないし、魔獣図鑑も見当違い。王国の歴史本も抽象的だからあまりよろしくない。やっぱり魔獣が湧いてきたのは偶然だったのかしら?」

 

頭をひねりながらいろんな考えを巡らすフウカ。遊撃士協会の特権を使って一般公開されていない本も読んでみたが、やはり根本的な原因を探ることは出来なかった。そして最後の望みを掛けて本棚から取り出した本は、書かれてから相当年代が経っているみたいで、紙は色褪せて所々茶色に変色していた。表紙も驚くほど痛んでいてかろうじて題名が読めるぐらいだ。フウカはその本を手に取り題名を小声で読み上げた。

 

「『エウロペの至宝』?こんな本見たこと無いわね。ボロボロだけどなんとか読めそうね」

 

フウカは手に取った本を丁重に扱って持って行き、読書スペースで読み始めた。所々文字が読めない所はあるが、書かれている内容は十分伝わってくるので根性で読み進めるフウカ。そしてその本には興味深い事が書かれていた。

 

『・ロッツ・リアに星の・印が現・たとき、・の・の音が響き渡り空・大・が・の世を崩・させるだろう。気をつけろ。魔が騒・・すは終わ・・始・りだ』

 

「最初の単語はカロッツェリア湖の事よね。星の印が湖に現れるってどういうことなの? それにマリーナ王国内には全国に響き渡るほどの鐘なんかないはず。一応マリーナ城の頂上には鐘はあるけどそこまで大きくないし・・・。

 

読みにくいけど空の何かが現れて人の世が崩れるって如何にも嘘臭い話だけど・・・。魔が騒ぐってことは魔獣のことでいいのかしら?もしそうなると今鉱山で起きている魔獣の大量発生が直にマリーナ王国全土に広がることになるわね。これは本部に連絡を入れた方がいいのかしら・・・」

 

フウカは見つけた本を隅々まで読んでいくと、そこには信じがたい力を持つ『至宝』という存在についての事がとても詳しく書かれていた。魔法の属性にそれぞれ一つの『至宝』があるようで、その『至宝』一つ一つが有り得ない力を秘めているということ。大昔に実際に至宝が使用されたときの記録まで残っていた。摩訶不思議な出来事についても数多く書かれていた。

 

「これは凄い本を見つけてしまったわね。信じ難い話ばかりだけど何かの役に立ちそうね」

 

フウカは本を手に取り、図書館をあとにする。司書の人には厳重に保管してくださいとしつこく何度も言われた。フウカはあまりにしつこいのでキレそうになったが、これほど注意してくるということは余程貴重な本だろうと感じつつ、図書館を後にした。

 

 

 

 

鉱山に潜っているケインとリリスは、落盤の影響で出現したであろう湧き水を飲みながら休憩をしていた。リリスの体力は限界寸前で歩くことも辛くなってきている。それを解消するために偶然見つけた湧き水が湧いている場所で休憩しているのだが、リリスの体力が回復するには多少なりとも時間が必要のようだ。回復魔法は傷を癒すものなので、体力を回復する事はできない。ケインは本気でリリスをここら辺で待たせておこうかと思い始めた。

 

「地図を見てみるともうすぐで鉱員の人達が閉じ込められている場所だね。リリスはここで待って体を休めておいて。魔獣除けの灯りも丁度あるしね。あとは1人で何とかなるから」

 

「なに言ってるのよ! 私はまだまだ疲れてないわよ!」

 

「威勢だけ良くても体がついていけないなら意味ないよ。足が震えているのがいい証拠」

 

リリスは返事を返さずに俯いてしまった。ケインはそれを肯定と受け取り、湧き水を少し飲んでから得物である愛刀を手に取った。

 

「僕は先に行って鉱員の人達を助けてくるからリリスはここを絶対に離れないでよ?」

 

「判ったわ。ケインも無茶だけは絶対にしないでね?」

 

「判ってるよ。じゃあ行ってくる」

 

リリスに笑顔を見せてから、さっさと鉱員を助けてリリスを本当に休ませるために、走って目的の場所へと向かった。

 

「ここか・・。この岩いくらなんでも大きすぎないか?」

 

ケインがリリスと別れて5分ほど走ったところに目的の場所があった。落盤で落ちてきた岩とは思えない岩がとてつもない存在感を放っている。ケインは向こう側に人がいるか確認すると、岩の向こう側から声が聞こえてきた。

 

「誰かいますかー!!」

 

「おーい!誰だか知らんが助けに来てくれたのか!」

 

「そうです!怪我をしている人はどれだけいますか!」

 

「幸い怪我をした奴は1人もいない!7人全員無事だ!」

 

「わかりました!今からダイナマイトを使ってこの岩を爆破します!離れていてください!」

 

「判った!頼む!」

 

一枚岩の向こう側では鉱員達が声を掛け合って奥の方へと避難を始め、「もう大丈夫だ!」という声を聴いた後、大きな岩にダイナマイトを仕掛けた。

 

そしてダイナマイトの導火線に火をつけて、ケインはすぐさま距離をとって離れた場所にあった岩の後ろへと隠れる。導火線が燃える音が木霊するなか、強烈な爆発音と爆風がケインの隠れていた岩に襲いかかった。

 

爆発が収まって煙が晴れて、ケインが岩から顔を出すと岩には大きな穴が開いており、そしてその穴から閉じ込められていた鉱員の人達が7人出てきた。皆それぞれ喜びを抑えることなく全力で表現していた。叫んでいる人もいれば涙を流している人もいる。それを遠目から見ていたケインの元にひとりの炭坑夫だと一目でわかる体格をしている男がやってきた。

 

「君が助けに来てくれたのか!!本当に助かったよ」

 

「いえ。遊撃士として当然のことをしただけです」

 

「君は遊撃士だったのか!!若いのに凄いね。1人でここまで来たのかい?」

 

「2人で来たのですが相方が歩くのも辛そうな表情をしていたので、少し離れたところに落盤の影響で湧き水が湧いている場所があったので、そこで休憩させています」

 

「そうか。ならその子もここに連れて来てくれ。すぐそこに上へ上るためのエレベーターを先日造っておいたからすぐ地上に帰ろうじゃないか」

 

ケインはこの言葉にすごく驚いた。今まで迷路のように張り巡らされた鉱山道を歩いてきて、疲れ果ててやっとたどり着いたのにエレベーターで一気にここまで行けたなら骨折り損のくたびれ儲けになるからだ。

 

「エレベーターがあったんですか!?」

 

「知らないのは当然だと思うぞ。今日仕事がある程度終わってから鉱山長に報告しようと思ってたからな。わざわざこんな長い鉱山道を歩かせて申し訳なかった」

 

男はケインに頭を下げて謝った。ケインはすぐに頭をあげてくださいと言ったが、すぐには頭を上げてくれなかった。そして男は頭を上げ、ケインに「相方を連れてきてくれ」と言われたので、リリスが休憩しているところまで走って向かった。

 

「リリス!!鉱員の人達を救助したから地上に帰るよ!全員無事だ!」

 

「本当?怪我人も居ないのね。良かった」

 

リリスが休憩しているところまで行くと、岩場に座っているリリスが水を飲もうとしたところだった。ケインの姿を確認したところで水を一気に飲み干し、そしてケインのところまで歩いていった。

 

「疲れもある程度は取れたみたいだね。良かった良かった」

 

「おかげさまでね。さっさとその場所まで行きましょう」

 

「キュイキュイ!」

 

「キュイ?うわっ!!なんでモコがここに居るんだよ!」

 

「私が休憩してたら私たちが歩いてきた道から来たのよ。たぶん一緒に付いてきたんじゃないかな?」

 

「そうか。なんで付いてきたんだろう?」

 

ケインの足元にぴったりくっついているモコを見ながら、モコに問いかけるように言ったが返事など返ってくる訳がない。モコは嬉しそうにケインの足元でぴょんぴょん跳ねていて、ケインの腕へとジャンプしてそのまま抱っこの体制になり、そしてモコはすぐに目を閉じて眠りについた。

 

「モコは相変わらず寝るのが早いな。それよりも鉱員の人達が待っているから早く行こうか」

 

「そうね。なら早く行きましょ」

 

ケインとリリスは鉱員の人達が待っているところまでモコを起こさないように急ぎ足で、魔獣をできるだけかわしながら向か1、鉱員の人達と合流した後、すぐ近くにあったエレベーターまで移動したところでケインが調べたいことがあるからここに残ると言い出した。

 

「え? ケインもう一回言ってくれない?ちょっと聞き間違いがあるかもしれないから」

 

「だからここに残――」

 

「そんなことさせるわけ無いでしょ!!!」

 

リリスが声を荒げてケインが喋り終える前に叱りつけた。リリスの声は鉱山中に響き渡り、一緒にいた鉱員達も驚きを隠せずにいた。

 

「またそうやって私だけ仲間外れにして自分1人だけで解決しようとする!なんで私を頼ってくれないのよ!」

 

「リリスは疲れてるでしょ?そんな状態で僕について来てもはっきり言って足手まといだよ」

 

「な、なに言ってるのよ!私はこんなに元気で――」

 

リリスは喋り終える前に身体がふらついて倒れそうになった。ケインはそれを最初から判っていたようにすぐリリスの身体を優しく支えた。

 

「ほら言ったとおりでしょ?疲れていないと思っていても身体は限界なんだよ。今は先に支部へ戻って休んでいて。すみません、リリスを運んでやってくれないでしょうか?」

 

「あぁ、お安い御用さ。お前も気をつけてな。ここのエレベーターを使えるようにしておくから無理だと思ったらすぐ地上へ戻って来いよ?」

 

「ありがとうございます。では行ってきます」

 

「ケイン!待ちなさいよ!」

 

ケインはリリスを見て大丈夫だと言いたげな笑顔を見せてから、鉱員達が閉じこめられていた場所の奥へと走っていった。ケインの腕の中にはちゃっかりモコも収まっており、1人と1匹はリリス側から目視できない所まで走っていってしまった。

 

「行っちまったか・・。よし、それじゃあお嬢さんを連れて上へ帰るぞ。鉱山長に謝罪しないとな」

 

男はリリスをおぶって、エレベーターの中へと入っていく。そして7人全員入ったところでエレベーターの起動装置の電源を入れ、上へとエレベーターは昇っていった。リリスはケインに連れて行ってくれなかった事に対する怒りと、自分の不甲斐無さに苛立っていた。

 




おはこんばにちはLEGENDです。今回はトレント鉱山の落盤事故に向かわせました。落盤事故に向かう際のケイン君の自分勝手な言動は、自分で書いていても反吐がでました。まあ、あえて残すんですけどね(ニッコリ)

さて、第1章もそろそろおわりに近づいてきました。主人公2人の活躍楽しみにしていてください。もし誤字脱字がございましたらご一報いただけると幸いです。

では。
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