竜の軌跡   作:LEGEND

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第5話

「あなたはケイン君っていうのねぇ。素敵な名前ですねぇ」

 

ケインが落ち着きを取り戻すまで待ってもらい、ある程度落ち着いたところで自己紹介が始まった。ケインが落ち着きを取り戻す最中にモコがどこに隠れていたが判らないが戻ってきて、ケインの足元にくっついていた。ケインの目の前にいる竜は本来の姿から人型へと変化しており、洞窟内の壁画にあったように耳が人間よりも尖っており、まるで大地のような色をした立派な尻尾が伸びていた。

 

「では、あなたが本当にあの伝説の魔獣である『竜』という事ですね?」

 

「そうよぉ。魔獣とはまたちがうけどねぇ。私の名前はサーニャ=ベアトリクス。ここで暮らす『地竜』たちの長であり、この鐘を守護する者よぉ」

 

なんとも間延びする話し方をするサーニャに若干困惑しつつもその姿を一瞥するケイン。髪は肩よりも少し長く全体的にふわっとしている。とてもグラマーな体型をしていて、ボンッキュッボンッとはこういうことだと言えてしまうような体つきだ。服装はどこかの民族衣装のような服装で、袖が長く丈も長い独特な服を着用している。どこかポワンとした雰囲気を持っているため竜達の長というのが少し信じられない。

 

「大きな揺れが起きたから鐘が心配で見に来たら、大きな蛇とオーちゃんと人間が戦ってるからびっくりしたのよぉ。危なくなったら助けに入ろうかと思っていたのだけれど大丈夫だったみたいねぇ」

 

「いつから僕たちの戦闘を見ていたんですか?」

 

「オーちゃんが雷を纏った一撃を大きな蛇に当てたところから見ていたわねぇ。人間と一緒に協力して戦っていたから手を出すのも悪いかなぁと思ってぇ。」

 

「そうなんですか・・・。それよりもオットレーさんってサーニャさんにオーちゃんって呼ばれているんですね」

 

「儂も柄ではないからやめて欲しいのじゃ。でもサーニャ様が一向にやめてくれないからの」

 

「いいじゃない別にぃ。ケイン君もそっちの方が可愛いと思うでしょ?」

 

可愛い可愛くないの問題かと疑問に思ったケインだがそのことは一旦置いといて、ここの洞窟に来てから気になっていた鐘のことをケインはサーニャに聞いてみることにした。

 

「サーニャさん。あそこにある鐘のことですが僕たち人間の世界とこの世界を隔てるために造られたとオットレーさんから聞きましたが、それ以外の理由はないんですか?」

 

「ふーん。ケイン君はなんでそんなことを思うわけぇ?別に世界を隔てるためっていうだけで充分な存在理由じゃないかしらぁ?」

 

「次元を隔てるだけならあそこまで大きくなくてもいいと思うんですよ。ぼくはこっちの世界に関しては全くの無知ですけど、あそこまで大がかりなモノは必要ないとただ単純に思っただけです。こちらの世界の魔法は僕たちが住んでいるものよりも高度だからもっとコンパクトにできると思って」

 

「なるほどねぇ。まぁ鐘について憶測立てるのもいいけど早く自分の世界に帰らなくてもいいのぉ?いまなら私が直々に送り返してあげるわよぉ?」

 

サーニャはケインの憶測を聞いていたが答えを出さずに話題を逸らした。ケインは深く追及することもなくサーニャに憶測を聞いてもらった礼を言った後、サーニャさんの力を借りて人間の世界に戻ることにした。オットレーには改めて深く礼をしてモコを抱きかかえて帰る準備をし始める。と言っても泊まりに来ているわけではないので準備は1分もかからず終了していた。

 

「これでよし・・・。サーニャさん、僕を元の世界に戻してください。準備は整いました」

 

「判ったわぁ。それじゃあ始めるから私が描く魔方陣から抜け出さないでねぇ。もし抜け出すと抜け出た部分だけこちらに残して帰ることになるからねぇ」

 

サーニャは背筋が凍えるようなことをさらっと言った後すぐ詠唱を始める。するとケインの足元に大きな大地の色をした魔方陣が現れた。ケインが魔方陣を注意してみると、魔方陣の中には何が書いてあるか皆目見当もつかない文字があり、魔方陣にびっしり書かれていた。すると少しずつ魔方陣から光が漏れだし、ケインはサーニャの言葉を思い出して魔方陣の中に腕と足がすっぽり入るように立つ。

 

「流石ですね。こんな高度な魔法見たことないですよ」

 

「お褒め頂光栄だわぁ。その魔方陣の中で自分が帰りたい場所を頭の中で思い浮かべればそこの場所にちゃんと転移してくれるはずよぉ」

 

「わかりました。それではオットレーさんサーニャさん。またここに来る機会があればまた来ます。2人ともお元気で」

 

そういうとケインは目を閉じてトレント鉱山の入り口の風景を思い浮かべた。するとケインは体が浮いたような不思議な感覚に身を包まれ、ケインが思い浮かべたトレント鉱山へと転移していった。ケインを見送ったサーニャとオットレーは帰路に着く。その途中オットレーはサーニャを見上げながらある問いかけをした。

 

「一つ聞いてもよろしいでしょうかなサーニャ様」

 

「いいよぉ。オーちゃんは何か気になることでもあったぁ?」

 

「あの鐘の事ですわい。よかったのかの?あの人の子に鐘の真相を教えなくても」

 

「ケイン君に鐘の本当の存在理由を教えたところで信じてもらえないだろうしぃ、信じたとしてもケイン君はそれをどうすることもできないと私は思うけどなぁ」

 

相変わらず間延びした感じでオットレーに応えるサーニャ。オットレーもそれはそうじゃのうと一言返した。ケインが歩いてきた道とは反対方向へと足を進める2人。するとサーニャが唐突にそれにといってさっきの会話に言葉を足していた。

 

「それにあの至宝はもう何千年もの間使われてない、いや使えないしねぇ。それにあんなモノは人間に渡しては滅びの道に進む一方だわぁ。『竜の至宝』なんて今の時代にはない方がいい。使えなくなったことが逆に良かったかもしれないわねぇ」

 

サーニャはそういうと歩を進める速さが少しだけ速くなった。オットレーもそれに合わせてサーニャの隣を歩く。2人の間を何とも言えない空気が流れる中、地竜達が棲む郷へ歩いていく2人であった。

 

 

 

 

ケインが元の世界に帰ってからは凄く大変だった。まず、トレント鉱山の鉱山町にこれほどまでするかと言えるぐらい感謝の言葉を貰った。そして助けた鉱員達からお礼だといって、嫌というほど野菜や魚、肉などといったお礼の品を半ば強引に渡された。ケインも助けたのは当たり前だからと言って貰わないつもりでいたが、鉱員達の迫力に負けて全部貰ってしまい、家の食事が1カ月は買い物に行かなくてもいいだろうと思えるぐらいの食材が倉庫の中に積まれている。そして一番大変だったのはリリスだった。

 

まずケインになぜ連れていかなかったのかと散々喚き散らした後、無事でよかったと急に泣き始めてケインはひたすらオロオロしていた。フウカもフウカで急に抱き着いたりして報告もままならない状況で対応にひたすら困ったケインだった。リリスもだいぶ顔色は良くなったがまだ本調子ではないらしく、1日体を休めることにしてケインが元の世界に戻った2日後に次の街へと旅立つことにした。

 

報告する時、ケインは竜の存在と大鐘の存在、そして壁画のことは伏せておき、落盤事故の原因も「大蛇の可能性がある」と言わずに、「結局わからなかった」という事にしておき、ケインとモコが体験したものは一切話さずに報告をした。

 

 

 

そしてトレント鉱山落盤事故から2日後経った日の早朝、ケインとリリスは旅をするための荷物をもって遊撃士協会トレント支部へと出向いた。支部の建物内にはフウカしかおらず、バルトはまだツヴァイ支部の応援から帰ってきていない様子だ。フウカは支部に出向いた2人に声をかけ、次の協会支部がある港湾都市ラグーナへの行き方を事細かに教えた。

 

「ラグーナへは最低でも歩いて2日はかかるわ。だから歩きで行くなら途中にあるラグレント休息所によって1日休んでから目指しなさい。それにしても本当に歩きで行くわけ?飛行船のチケットなら今日の昼の便のものを手配できるわよ?」

 

「リリスの身体を鍛える一環でもありますし、何より王国全土を回るわけですから街道の様子とか自然といったものを肌で感じてみたいわけですよ。だから僕たちは極力飛行船とかは使わないで自分の足で王国を回ってみるって二人で決めたんです。」

 

「そこまで決めていたのなら私から言う事は何もないわ。でもいくら道が整備されているとはいえ魔獣も普通にでるし山も上り下りする場所もあるから十分気をつけるのよ?」

 

「そんなの判ってるって。そんなことで泣き言言ってたら遊撃士の仕事なんてこなせるはずないわ。心配せずとも私たちは大丈夫よ」

 

リリスは胸を張りながらそう言った。確かに街道の魔獣は遊撃士が苦戦するほどでもないし、トレントからラグーナまでの道のりは基本的に平坦なのでそこまで疲れることはないだろう。フウカはそう思い、もう一度注意を促した後、ラグーナに無事着いてからの行動する順番を2人に教えた。そして2人に教えることが無くなったフウカはカウンターから席をはずし、二人の門出を見送ることにした。

 

「それじゃあフウカさん。正遊撃士になるためにいろいろ学んできます!」

 

「すぐに正遊撃士になって驚かせてやるわ!!」

 

「その意気込みはいいけどあまり焦っても意味ないからね?」

 

「わかってるって。それじゃあ行ってきます!!」

 

「行ってきますフウカさん」

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

ケインとリリスはトレント協会支部の扉を開け、朝日が差し込むなか悠々とラグーナに向けて歩き始めた。何を話しているかは判らないが、時折笑い声が聞こえてくる2人の後ろ姿を見ながら手を振るフウカ。ケインとリリスの2人が朝靄で見えなくなるまでフウカは手を振り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ケインとリリスは休憩をはさみながら着々とラグレント休息所へと向かっていた。途中魔獣とも何度か遭遇したが難なく撃退して歩を進める2人。そして朝早くから出発し、途中で家から持ってきた弁当を食べて、日が傾くぐらいまでへとへとになるまで歩いた結果、日が沈む前にラグレント休息所に着くことができた。

 

ラグレント休息所はトレントとラグーナのちょうど真ん中に建てられた施設であり、食事は出ないし部屋も狭いという欠点もあるが、通常このような素泊まりの宿でも最低200ベルかかるところが、ここでは20ベルで泊まることができるため、街道を歩く人にとってはとても便利な施設だ。食事が出ない代わりに、休息所内には調理ができる場所もあるため、家から持ってくる人やラグレント休息所の周りに自生している食べられる食材を採ってきて食べる人もいる。

 

ケインとリリスは家から沢山もらって余ってしまった食材を2日分ぐらいもってきておいたので、食事に困ることなくラグレント休息所に泊まることができた。兄妹だからという理由で一緒の部屋にされたことに関してだけ、リリスは気に入らなかったのか最後まで二部屋にしようと頑張っていたが、健闘むなしく一部屋になってしまった。そして夜もふけってきて綺麗な月の光が外の景色を彩る光景を見ているケインにリリスが語気を強めて話しかけた。

 

「私はベッド寝るからね!!絶対入ってこないでよね!!ケインはそこのソファーで寝なさいよ!!わかった?」

 

「わかったから・・・。僕はもう少し起きてるけどリリスは寝るんでしょ?」

 

「ええ。トレントからここまで歩いてだいぶ疲れたから。明日も歩かないといけないから早めに寝るわ。おやすみ」

 

「お休みリリス」

 

そういうとリリスはベッドの中へと入って行った。そして相当疲れていたのか数分もしないうちに寝息が聞こえてきた。ケインはリリスを起こさないよう静かに照明を落として、ソファーに無理矢理寝転んで受付の人から貰った毛布を上にかけて寝る態勢に入った。そして上を向きながらボソッと独り言をつぶやいていた。

 

「明日からは知らない街で遊撃士としての修行に入るのか・・・。まぁそんなに焦っても意味ないってフウカさんも言ってたし無理することなくゆっくり着実に進んで行こう」

 

そういうとケインは目をつむり、そしてケインも数分もしないうちに規則正しい寝息をし始めた。遊撃士としてのスタートラインに立った2人に今後どのようなことが起こるのかは空の女神にしかわからないことだ。今はただ月夜の光に抱かれながら明日も歩いてラグーナへ向かうための元気を養う2人であった。          

 

                

 

                To Be Continued

 




おはこんばにちはLEGENDです。今回の話で第1章は終了します。書き溜めてあったものもこれでなくなりましたので、次回以降からは完成次第投稿します。なにぶん私生活が忙しいため更新が大幅に遅れてしまうので、首を長くして待っていてください。

さて、今回は第5話というよりも第1章のエピローグ的な立ち位置になります。1周り成長した2人がトレントを離れ、次の街であるラグーナへ向かいます。ラグーナで出会う先輩遊撃士や依頼の数々を通して更に成長する2人を楽しみにしていてください。

では。また次回お会いしましょう。
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