仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました)   作:猫つまみ

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プロローグ

 猫を見てるだけで、心が癒される。

 

 あの円らな瞳。モフモフの毛並み。気まぐれな性格と、小動物という言葉が相応しい小さな身体。

 

 

 どれを取っても、俺のストライクゾーンだった。

 

 

 

 

 

 目まぐるしく車が走り交う都会の片隅に、数多のお店が建ち並んでいた。そんな人々が行き交う中でも一際騒がしいお店が存在していた。

 

 太陽の光が降り注ぎ続け、蝉が忙しなく鳴く、夏の盛りの頃。

 

 太陽が意地悪をしても並び続ける人々が求める物とは、一体何なのだろうか?

 

 

 

 ガラス越しに見える外には蟻の行列の如く、人がごった返しになっていた。

 暑そうに汗を拭く者や、ひたすら水分補給をする者までいる。そんな人々を見て俺は、ちょっとだけ優越感に浸っていた。

 

 外で待つ人々は暑さに我慢するしかないのに、俺はクーラーの効いた部屋で、悠々と涼しんでいた。

 

「あ? ヴァーチャルゲーム?」

「そう。やってみないか? かなり面白いんだぜ!」

 俺は友達と、大学の近くにあるモコモコナルドに来ていた。

 

 

 モコモコナルドというのは、可愛いと言われる動物達が数多く揃い、それらと戯れながらコーヒーが飲める地元で人気の喫茶店だ。

 

 そして俺の好きな猫も居るから、毎日の様にここに通っている。

 

 膝の上にネズミ色が印象的なアメショー柄の猫を乗せながら、ジュースを飲み干す。

「んー……って、言われてもなあ」

 俺の向かいの席に座るのは、大学で知り合った友人だ。黒髪に黒目。一般的な日本人の男性の特徴を忘れていない作りの顔立ちだ。

 

「頼むよ。新規ユーザーを招待すると、SR武器貰えるんだ」

「いやいや……SR武器とか言われても、分かんないし」

 かなり必死だったので、ちょっとだけ助けても良かな? と思いながら、膝の上の猫ちゃんを撫でる。

 

 膝の上に収まり切る位小さくて、とても柔らかな毛並み。

 女の子で例えるなら、健気で儚く守ってあげたい。そんな気持ちにさえなってしまう位、可愛いらしかった。

 

 今は眠っていて瞳は見れないが、それでも可愛い事に代わりはなかった。そんなアメショーの可愛さに顔が綻びた俺の所に、一匹の犬が近付いて来た。

「お? 犬だぞ」

 友人は俺に犬も構ってやれ的な事言ってるけど……一度その犬を見て、そっぽ向いた。

「相変わらず、猫しか見えてないんだな……」

「犬の種類なんて全く分からないし、興味ないね」

 スヤスヤと俺の膝の上で眠る猫を見て、緩んだ表情をしてしまう。

「……この扱いの差は、何なんだ?」

 かなり呆れた顔してるけど、俺は猫さえ居ればそれで幸せになれる。

 

 

 これは何を言ってもダメだと思ったのか、友人は元の話に戻した。

「スッゲェ面白いんだよ。自分じゃない自分になれたりするんだぜ?」

 身を乗り出して演説し始める友人は、無駄に鼻息が荒かった。

「分かったから、顔近付けるなよ!」

 何だかんだで、承諾してしまう。

 

 ◇◇◇

 

 俺は友人に連れられて、ネットカフェへと来た。

 

 二人部屋らしく、それなりに大きかったりする。机にはパソコンと二体のヘッドギアが置いてあった。でも初めて入ったから、これで大きいと呼べるのかは、俺には分からない。

 

「おい、早く座れよ」

 かなり浮き足立ってるこの友人は、俺の頭にヘッドギアを装着させた。反論する暇すら与えてくれない素早い行動に、感服すら覚えてしまう。

「良いか? 俺が良いって言うまで、目開けるなよ?」

 そんな友人の言葉を聞いて、頷こうとした俺だったけど……。

 

 

 

 

「もう目開けて良いぞ?」

「早!?」

 あっという間にヴァーチャル世界に来たらしく、言われるがままそっと目を開けた。

 

 --すると……三百六十度見渡しても、草木しかない草原の中に立っていた。

 

 空はとても青く、トンビだか鷹だかが鳴きながら空を飛んでいる。

 見渡す限りの草原は、俺の心を一瞬で掴み取った。

 

 あり得ない程に美しく、あり得ない程に静かで落ち着く……そんな風景が広がり続ける。ただそれだけの場所なのに、何故か、心の底から泣きたくなってしまう。

 

 何時の間にか、目頭が熱くなっていた。

 

「あっはっはっ。泣きたくなるだろう? ここは、初心者が初めて訪れる場所って設定されててさ。あんなビルまみれの世界とは全く違うから、自然体で居られるだろ?」

 俺の肩を叩く友人の姿は、シンプルな青い服の上に木で出来た胸当てを着用していた。髪や顔はリアル世界その物だった。

 

 そして俺はと言うと……上下白い服に履き古された茶色い革靴だった。顔は……鏡がないから、分からないままだった。

「どうだ? 気に入ったか?」

 本心からの笑顔で聞いてくる友人に対して、俺も本心で答える。

 

「ああ。凄く良いぞ。本心に、お前がはまる気持ちが分かるよ」

 アルプスにでも行かなければ、見る事の出来ない草原。爽やかな風が、俺の身体の先へと走り抜けて行く。

 

 こうして俺は、このゲームにのめり込んで行く。

 

 

 

 けれどこの選択があんな現実を体験する選択だったなんて、今の俺は考えもしなかった。

 

 

 

『そう。これが、全ての始まりだったんだ』

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