仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
俺達は朝になって、一緒に町に出掛けた。お金が少なくて、殆ど買えなかったけど……。
「ねえ。これからどうするの?」
砂紗が俺にウィンナーをあげたいのか、目の前でちらつかせていた。
『パクリ!』
「あーー!」と言う、残念そうな声が聞こえたが、ちらつかせる方が悪い。そう思ったから、謝りはしなかった。
「……情報集める?」
銀の髪をサラサラと風に遊ばせながらホットドッグをモグモグと食べているのは、砂紗の次に仲間になったエルフの少女、エルサだった。
「いや。今はよそう。昨日も言った様に、今は情報が混乱してるだろうしさ。そんな状態で、正確な情報が掴めるとは思えないし……」
前足で喉をかきながら言う俺は、まさしく猫そのものだった。
砂紗とエルサはそんな俺を見て、手をワキワキさせていたが、何時もの「シャーー!」で、お触り禁止令を発動させた。
誰も居ないだろう草原に来た俺達は、ひとまず近くの川で休憩を挟みながら次の町を目指していた。
「ねえ……気になってる事があるんだけど……」
砂紗は川で取った魚を火に掛け、焼き魚として食べよう。そう言ったので、その魚は砂紗に任せる事となった。
因みにその魚を取ったのは、他でもない俺である。釣竿を用意して……ではなく、熊の様に水の中へ入り、爪でおりゃ~! ってね。取った時には、パチパチという拍手の音と、女の子二人の「おお!!」っていう声が聞こえてきて、その声に反応した俺は、エッヘンとかなってたりしてたけどさ。
「ん? 気になる事?」
何を気にする必要があるのだろ? 俺は、そう聞こうとしたのだが……
「ログアウト出来なくなったでしょ? だったら……ゲームオーバーになったら、どうなるのかしら?」
そんな砂紗の台詞は、俺とエルサの二人の動きを止める。
「えっと……教会に行くんじゃないの?」
エルサのこの一言の意味を、俺は考えた。
確かに今までなら、それで良かったのかもしれない。けれど今は……。
「多分だけどさ……ログアウト出来ない今は、それすら通じなくなってる可能性も、あるかもしれないしんじゃないか?」
確証なんて、ある訳がなかった。けれど今の状態を考えると、とても今までの様に普通にゲーム。って訳には行かないのかもしれない。
「エルサは居なかったから知らないだろうけど……この世界で一番弱いスライム。アイツを倒すのでさえ、相当苦労したんだ」
本来ならレベル一のプレイヤーでも、ソロで瞬殺出来る程に弱かったスライム。けれど、ログアウト出来なくなってからは、そうじゃなくなった。
「……そっか。私も、何となくだけどさ? 教会に行くだけじゃ終わらないんじゃないかな? って、思い始めてるの」
エルサもこの世界が異常な事になっているのには気付いているので、今までの常識という物が通じない。そう思っているのだろう。
「そうだ!! 教会行ってみましょうよ」
砂紗はスクッと立ち上がり、俺を見上げる形で提案する。
「教会? 誰も死んでないぞ?」
四歩足で座りながら首を傾げる俺を見た砂紗は、一瞬だけ手をワキワキとさせた。
けれどお触り禁止だったので、直ぐに教会の話題に切り替えた。
「死んでなくても、行けるわよ? それに……教会に行けば、今の世界でゲームオーバーになれば、どうなるのかが分かる筈でしょ?」
確かに、死んだ時しか行ってはいけない! 何てルールないしなぁ。
「よし! 善は急げだ。行くか!?」
俺は、尻尾をフリフリさせながら言う。
★★★
俺達は、近くにあった一軒家……教会に入って行った。
「すみませーん!」
砂紗の声が教会響く。
現実世界と同じで、教会にはステンドグラス。大きなパイプオルガン等々……かなり、リアルに再現させているなぁ。
そう思ったよ。
「どちら様でしょうか?」
俺は、尻尾をピンと立てた。
声の主は……
全身黒い服で、頭にも黒い帽子の様な物を被っていた。顔は……うん。文句なしに可愛い。美少女だ。体型は、ちょっと控えめな胸だが、それでも普通よりは大きいのかもしれない。
左目の下にある泣きホクロが、ちょっと色っぽく見えてしまう。
「君は……NPC?」
そう見た目がどうこうよりも一番大事なのが、これだった。今のこの状況では、NPCよりも俺達と同じでログアウト出来なくなった人の方が欲しい。
だから俺は、それを聞いた。
「私は、NPCではありません。貴方達と同じ、ログアウト出来なくて困ってる人間です」
そんなシスターの言葉を聞いて、俺だけでなく砂紗とエルサも、何故かホッとしてしまう。
「どうして、こんな場所に?」
エルサは、気になったのだろう。ログアウト出来ない状態で、シスターが一人でこんな場所にいるのが心配なのかもしれない。
この世界のシスターと神父……教会関係者の中には、NPCに紛れて過ごす人も少なくない。どの世界――ネットゲームには、PK(プレイヤーキラー)という者たちがいる。このPKは、プレイヤーをゲームオーバーにする事を生き甲斐にしている。闇討ちや毒殺等々……卑怯なやり方は当たり前。
そんな奴らから身を守る為に、こういった職業に紛れてゲームをする人は、少なくなかった。
「PKが怖いというのもありますが……。戦う力を持たない私では、外へ出ても、スライムに殺られてしまうだけです」
「スライムの件……知ってるんだな?」
俺はシスターに近付いて、そっとシスターの頬に肉球を当てる。
(少しでも怖さを消してあげれれば……。今の俺には、これ位しか出来ないからさ)
決して口には出さないよ。俺は、そんな人間じゃないからね。
そう自分に言い聞かせる。
「ふふ。猫さん、有り難う。優しいのね?」
ちょっとだけ元気になったのかな?
◇◇◇
「え? ゲームオーバー……ですか?」
ちょっと驚いた顔をして言うシスター。何をそんなに驚くのだろうか?
「……こちらへ来て下さい」
俺達は、シスターが何を教えたいのかが分からず、ただ付いて行くだけだった。
連れて来られた場所は……地下室だった。
その地下室には……
「あ……悪趣味だな」
何が悪趣味かって? そりゃ、この目の前の物を見たら、誰だってそう思うだろうさ。
だってここには――
「石像?」
そう。人間の石像が何体も置かれていたのだ。
これを悪趣味と言わなくて、何と言う!
「あの……私の趣味ではありませんよ? ここにある石像の全ては、ログアウト出来なくてなった人達。そして……体力が0になり、ゲームオーバーになった人達です」
「はあ!? いやいや! ネットだろ!? 普通、現実世界では意識不明とか……はっ! もしかして現実世界ではそうなってるかもだけど、この世界だと、石像なのか?」
俺はいつの間にか二本足になっていた。
「詳しくは私も知りません。ですが、ゲームオーバーになった人達は、死ぬのではなく、こうやって石像になります。……生きたまま石像になるんです」
何時終わるかも分からないこの状況。そんな中で、ずっと生きたまま石像になって過ごさなきゃならない。
俺も砂紗もエルサも、何も言えなかった。
かなり驚愕してしまっていたのだ。