仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
川の中から現れた蛇は、暗い中でも俺達居場所をきっちりと把握していた。
「クリス。ウサギさん……」
「夜目が効く動物じゃないと厳しいよ!」
ウサギが夜目が効くとかは分からないけど、多分無理なんだろうな。
上手く言えないけど……。
多分、相性悪いだろう。
「エルサはその弓でやつの目を狙え。恐らくこの暗闇で俺達の居場所を正確に捉えてるのは、あの目のおかげだうからさ」
了解と言って、弓の玄を引く。見た所弓に必要な矢がないのだが、恐らくは魔法の弓なのだろう。
「ねえクリス。猫ちゃん達は? あの子達なら、夜目が効く筈でしょ?」
弓を引きながら魔法の矢を形成していく状態の最中エルサが提案したのだが、俺は直ぐ様却下した。
「駄目だ! 確かに夜目なら猫だろうけど……この場所だと分が悪すぎる。猫は、水を嫌う傾向にあるだろ?」
そう。俺達が今いる場所は、水場だった。
かなり効率が悪すぎる。
さて……どうしたものか……魔法に関しても、何が使えるのか分からない状態じゃあ、迂闊に呪文なんて唱えれないし。
「そうなると……やっぱり召還か?」
でも、何を召還すれば良いんだ?
「クリス危ない!」
そうこう考えてる内に、あの蛇の尻尾とおぼしき部分が、俺の方へ向かって来た。
「うお!」
俺は間一髪、全身を使って後ろへ飛んだ。そのまま着地した地面は石まみれだったから、肉球に当たって痛かったりもする。
「よし……行くよ」
エルサは精神を集中させ、魔法の矢を作り出した。左手で弓を持ち、右手で玄を強く後ろへと引いて行く。
そして……
ビューーゥ!
風を切る程に速いスピードで弓が放たれる。
そして、ドスンと蛇の右目に直撃する。
【〇★◇$@~!】
雄叫びにも似た何かを発した蛇は、川の中で暴れ始める。
暴れてるせいで、川の水しぶきがこっちにまで掛かって来てるんですけど!?
「ったく! この糞蛇……あっ」
俺は、ある事を思い付いた。
そのまま魔方陣を展開させて、呪文の様なものを唱える。
『川のほとり。鮭を取る君は、勇敢な姿をさらす。おいでませ……』
四本の足に力を入れてニッと笑う俺は、ある動物の姿を想像する。
黒や茶色い体毛に覆われ川で鮭を取る姿は、正しく勇者。冬になると冬眠してしまうのだが、それでも強いイメージはある。
魔方陣が強く光り出した時、徐々にその動物の姿が形成されて行く。
「あっ。あれって……」
エルフ特有の弓を両手で持ちながら、魔方陣から現れる動物の姿を確認するエルサの瞳は、大きく見開かれていた。
魔方陣の起こす風に煽られて銀の髪が少し鬱陶(うっとう)しいのか、弓を片手に持ち変えて、残りの片方の手で髪を押さえていた。
魔方陣から出て来たのは……大きな図体が黒い体毛に覆われ、鋭い爪を出して二本足で立っている――熊だった。
「く……熊!?」
驚いたのは、砂紗だった。
蛇の舌からの攻撃を剣で受け止めながら、熊を見ていた。
出て来た熊は、シュッシュッと両手を前後に動かしていた。
これは……あれだ。ボクシングの選手だな……。
……かなり、目付き悪いし。
「さあ熊君。君の実力を見せる時だよ? レッツゴー~♪」
まあいいや。これでアイツが倒せるのなら、何だって構わないよね?
「ガルルルー!! ガァーー!」
熊は地を蹴って、素早く蛇に飛び掛かる。
そのまま爪を上から下に向けて降り下ろす。
【★&@$★~!】
声にならない声が、川一帯に響き渡る。
そしてそのまま、バシャーーンと大きな水しぶきと共に川に倒れる。
ピクピクと痙攣(けいれん)させた後、ピタリと動きを止める。
「大丈夫ですか!?」
スカートの裾を両手で持ちながら走って来るマナは、前線で戦っていた砂紗の傷を手当てする。
「ありがとう」
「いいえ……戦う力を持たない私は、これ位しか出来ませんから」
ふるふると首をフリながら、ちょっとだけ悲しそうな顔をするマナを見て俺は、
「役割ってのは、大事だ。皆が皆同じ事を出来たら、芸がないだろ?」
マナの足元でスリスリと、本物の猫の様な行動を取ってみる。
ふふありがとう。そう言ったマナは、俺の頭を優しく撫でる。
何故か尻尾がフリフリと左右に揺れてしまっているよ。
そんな俺を見て砂紗とエルサの二人は、手をワキワキとさせていた。勿論何時もの「シャーー!」をお披露目した訳だが。
そんなこんなで、蛇退治は終了。
バナナボートをズルズルと引きずって来ながら、ペタペタと音を立ててペンギンが近づいて来る。
「さてと……川を下るか?」
再びバナナボートに乗って、出発を始める俺達。
そんな俺達に手を振って見送る熊が居たりするのは、ご愛敬だな。
新しい町では、どんな事が待っているのか……。
楽しみだよ。
俺達を乗せたボートは、ひたすら川を下って行くのだった。