仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
俺達は、この村の近くの川に流れ着いていたらしい。気を失っていた所へ、魚釣りに来た大人が俺達を発見して、ここに連れて来てくれたとか。
「なあ皆。ここの連中……」
俺の予想が正しければこの村の人達は……
「うん。NPCみたいだね」
銀の髪をたなびかせて俺の肉球を触るのは、エルサだった。凄く気持ち良いのか、普段クールなイメージの表情が崩れていた。年相応に見えて、可愛いといえば可愛いんだけど……。
「何故触る?」
ちょっと睨む感じでエルサを見る。
「無事だったら、触っても良いんでしょ?」
エルサではなく、金髪が特徴のナイスバディな女……砂紗が答えた。
「はあ!? 何時そんな約束! ……あっ」
滝に落ちる時、そういえば言ってたような気が。俺は、自分の吐いたセリフに後悔しまくりだった。
少しだけ上下に振る尻尾で不機嫌さを表してみるのだが、今のエルサにはどうやら通じないらしい。ほっこりした顔で肉球触ってるし!!
少しだけ考えてから俺はスクッと立ち上がり、おかっぱ頭の少女の元へと行く。その時に、「あっ」という悲しそうな声を出したエルサが居たけど、取り敢えずは無視する事にしたよ。
「なあ。君は……NPC……なのか?」
この子は俺達と同じなのか、それともコンピューターが作り出した存在なのか……何故俺はそれが気になるのか、今の段階では分からなかった。何か聞かなければいけない! そう思えてしまった。これしか言えない。
「……えっと。N……? えっとね? 私、お外の世界に戻れなくなっちゃったの。小学校のお友達にも会いたいのに……」
"小学校"。この言葉で確信した。この子は、俺達と同じログアウト不可能者なんだ、と。
しかしそれだと、ちょっとおかしくなってしまう気がする。
この村の連中は、恐らくNPCなのだろう。だったら、この子だけ何故ログアウト不可能者なのだろうか?
「どうして君だけ?」
考えていた事が言葉になってしまって、俺は慌てて口を閉じようとした。
「この村ね……私のおじいちゃんが作った村なの。かいは……つきょく? とかいう場所だったらしいんだけど……。私はおじいちゃんに頼まれて、この村の子供として過ごしてたの。でも……おじいちゃん……」
ボロボロと泣き出してしまう。
「おじいちゃん病気で、寝たきりになっちゃったの。おじいちゃんが作った村だから、毎日おじいちゃんの代わりに来よう。そう思って来てたの……」
恐らく、その時にログアウト不可能になってしまったのだろう。
「帰りたい。おじいちゃんの所……お父さんとお母さんに会いたいよぉ~。うえぇーん!」
俺は……何も言えなかった、この子が現実世界に帰りたいって気持ちは痛い程分かる。でも、その方法すら見つからない。それどころか、運営との連絡すら取れない状態だった。
「なあ。俺達と一緒に来るか? この村をおじいちゃんの為に守らなきゃって思ってるのかもしれないけど……ログアウト出来なきゃ、それすら守れないだろ?」
俺は器用に二本足で立って、少女の頬に肉球を付けてみる。
「あは、やわらかぁーい」
泣きながら笑う少女を見て、ちょっとだけ元気になったのかな? って思った。
◇◇◇
しばらくしてから仲間の三人を集め、会議的な何かを始めた。
先程まで晴れていた筈の空が、何時の間にか雲っていた。
「さて。これからどうするか……だが」
俺達の居る場所は、遊具のあった場所から数歩歩いた場所にある木で出来た丸太の椅子と机に腰かけていた。ちょっと行儀が悪いかもだけど、丸太の椅子は四つしかなかったから、俺だけ机の上に登っていた。
「そう言えば砂紗。お前、NPCの娘は?」
少女を見て思い出した俺は、ちょっと気になったので聞いてみた。
「ああ……あの子は、今機能停止してもらってるわ」
有難い(?)事にこのゲームには、プレイヤーが持っているNPCの家族のみ、非常事態に備えての機能停止が付いている。
「そうゆう所には気を使うくせに、人間には気を使わないんだな」
尻尾をタシタシ!! と、机に叩き付ける。
「あっ、そうだった。なあ、君の名前……」
そう言えば、名前聞いてなかったよ。
「綺羅(きら)だよ。おじいちゃんが付けてくれたの」
ニコニコとおじいちゃんの事を話すこの少女は、余程おじいちゃんの事が大好きなんだろうなぁ~。
取り敢えずは、これからどうするか……。それを考えなきゃならないんだ。
この村にどれだけ滞在出来るかは分からないけど、何事もない事を祈ろう。