仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
木々の良い匂いがする。心が落ち着くなぁ~。
俺は、何時の間にか眠っていた。
作戦会議みたいな事をしてたんだけど、おかっぱの少女――綺羅が眠たいと言い出したから、砂紗がその子の家で寝かし付けるとか言って、居なくなったし。エルサはまだこの村を見て回りたいらしく、ワクワク顔で掛けて行った。シスターのマナは、ちょっとの間だけ俺と一緒に居たけど、教会へ行くとか言って、俺の前から姿を消した。
残された俺は……会議をしていた机の上で、猫の様に丸くなって眠っていた。
雲っていた空もいつしか晴れていて、木々の隙間から降り注ぐ太陽の光が、絶好のお昼寝日和にさせてくれていた。
「すー。すー……」
静かで平穏な時が流れて行く……筈だった。
「急いで!! エルサ、マナは!?」
「薬草とかを詰め終わったから、もう村の入り口で待ってるよ! 綺羅は私に任せて。貴女はクリスを……!」
何やら突然、バタバタと慌ただしくなって来たな? 目も頭も、少しずつ覚めて来たよ。
「クリス大変よ! 早く起きて!」
俺は目を開けて、んーー! と、猫の様な体勢で背伸びをした。
「ごめんクリス。話してる暇はないの!」
ひょいと俺の身体を持ち上げ、急いで村の入り口へ向かう砂紗は、真っ青な顔をしていた。
どうしたんだろう? 村で何かあったのか?
砂紗に抱き抱えられながら、村を見ると――
「……なっ!!」
俺は驚愕した。
先程まで綺麗な木々や鳥のさえずり等が心地良かった場所なのに……。
その全てが、村の端から徐々に変化して行った。いや。変化ではない。
村の建物や自然……そして、NPCまでもが奇妙な数字列へと姿を変えていったのだ。
「これは……!?」
俺を抱えて走る砂紗を見る。ふるふる。何が起きたのか全く分からない状態で、取り敢えず村の入り口へと進む。
村の入り口には、大きなバッグを両手で持っていたマナと、この村の奇妙な光景を、ただボーと眺めるしか出来ないエルサ。そんなエルサに手を握られながら泣いている綺麗が居た。
それから数分もしない内に、村は完全に消えた。
正確には、数字列と化していたのだ。
砂紗は俺をゆっくりと地面に降ろし、泣き崩れる綺麗を、ギュッと抱き締めていた。
「ねえ……これ、何なの!? 聞いてないよ!!」
クールで冷静な筈のエルサは、何時もの様に落ち着きを失っていた。無理もない。こんなのを見せられて、落ち着けと言う方がおかしい。
「……これは……データだな」
俺は、自分の知る限りの知識を振り絞る。
「データ……ですか?」
小さな猫の俺の話し声がよく聞こえる様にと、誰もが俺と同じ目線に近付く様に膝を曲げる。
「ああ……専門家じゃないから、俺も詳しい事は知らない。けど、この0~9の文字列……これは、データを意味しているんだと思う」
ガシガシと、前足で喉をかきながら言う。
「元々この村全体がデータだったのは事実だろ? 何らかの異常……現実世界で、村全体を構成させるだけの機能が働かなくなったのかもしれない」
確証なんか、何処にもなかった。でも、それなら取り敢えずのつじつまは合うのだろう。
「え!? それじゃあ、現実世界でも何かが起きてるって事!?」
ふるふる。正しいのかさえ分からないから、首を振るしか出来ない。生憎と、砂紗の疑問に答えてあげれるだけの材料が揃っていなかった。
「ログアウト出来ない。運営とも繋がらない。召喚魔法などという、この世界では聞いた事のない魔法。そして……データ化。もしかしたら、俺達が思ってる以上の厄介な事が起きてるんじゃないか?」
想像以上に厄介な事になっている気がしてならない。
俺達は一刻も早く、目的地へと足を進ませた。
ジジ……ジジ……
俺達は気付かなかった。データと貸した村の片隅に、データの集合体の様な何かが、産まれていた事を。
背を向ける俺達を、その何かがジィーと見ていた事も、全く気づく事はなかった。