仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
俺達を肩に乗せた白熊達が、ザックザックと雪の上を歩いている。
砂紗とエルサはそのふかふかの体毛に半分顔を埋めて、幸せそうな顔をしているな。白熊さん達は、何故か頬を赤らめてるし……。マナはマナで、「素敵」これしか言ってないし。綺羅に至っては、お姫様抱っこされながら寝てる始末。
「……グダグダじゃね?」
冷たく降りしきる雪の音のせいで、俺の声は誰にも聞こえる事はなかった。因みに俺は、砂紗と同じ白熊さんの頭の上に乗っかってる。
「ねえ。何処に向かってるの?」
金髪が、吹雪のせいで白く見えてしまっているよ。
「ん? ああ。取り敢えず、野宿出来る洞窟とかを探して貰ってるんだ」
このまま吹雪の中を歩くのは、余り誉められた事ではないし……迷子になったら、凍死。なんて事になりかねない。
「皆さん! 熊吉さんが、洞窟を見つけたみたいですよ」
声の主は、マナだったよ。しかし、熊吉って……。変な名前を勝手に付けないで欲しいんだけどなぁ~。
ちょっとだけ呆れた俺を無視して、俺と砂紗の乗っている白熊は、洞窟目指して歩き出す。
◇◇◇
白熊達は洞窟に入った後、ゆっくりと俺達を下ろす。入り口から行き先が入ってご内密様にと、三匹の白熊は、入り口を塞いでくれていた。残りの一匹は、何処から見つけて来たのか分からない沢山集めた枝を床に置き、これまた器用に石と石をカチカチと擦り合わせ、火をおこす。
「な……なんて器用で尚且つ、気配り上手な白熊さん達なんだ……」
俺は、それを見てるしか出来なかった。いや! 邪魔をしては行けない。そんな気がしたからだ。
だって……かなり悦った表情してるんだもん。
「それで? これから本当にどうするの?」
エルサはメニュー画面に触っているのか、ピッピッという効果音が聞こえて来た。
「正直……俺にも分からん。当初の目的通り、【ミリオネリオン】に真っ直ぐ向かっても良かったんだけど……」
あの村のデータ化が、俺を【ミリオネリオン】へと急がせる心を立ち止まらせてしまった。
「当初の目的通り行きたくてもさ……ダメな気がするんだ。上手く言えないけど……。【ミリオネリオン】には、まだ行っちゃいけないんじゃないかって、思う」
根拠なんか何もなかった。でも、勘っていうやつかな? 俺は、このままあの町に進んじゃ行けない。そんな気がしてならなかった。
「……うーん。クリスがそう言うなら、そうする?」
砂紗が俺の事を思ってか、皆に聞いてくれた。
皆は、それで良いよって言ってくれた。
何か俺のワガママに付き合わせてる感じがして、ちょっと申し訳ないかな? って思う。
★★★
夜……なのか、雪が凄くて分からないけど、俺は眠くなったから眠る事にした。
バチバチという焚き火の音が、子守唄みたいに聞こえて来る。
俺達は深い眠りに入っていたであろうその時……ドカンという大きな音と共に、目が覚めた。
「な……何!?」
砂紗とエルサは起き上がり、キョロキョロと洞窟の中を見た。
「皆さん、あそこです!」
いち早くマナが気づいたらしく、洞窟の入り口を指差す。
「白熊さん!?」
洞窟の入り口を守っていた筈の白熊の一匹が、ズドンという音と共に倒れたのだ。
「ちょっ……!」
誰が驚いた声をあげたのか……大きな吹雪の音にかき消されて、それは分からない。
残りの白熊達が、愛くるしい表情のまま後ろを振り向いて、大きく振りかぶる。
グシャッという音が聞こえたと思って、俺達は入り口に近付いた。
「え!?」
「雪だるま?」
俺達が見た物は、白い雪をだるま状にした雪だるまだった。
何処かで見た事のある赤いバケツを頭にかぶり、鼻は人参で出来ていた。両手は木の枝で出来ていて、その先には赤い手袋をしていた。
「何て凶悪な……」
そう……この雪だるまは、何故か顔が凶悪な設定だった。
かなりつり目気味の目に、口には何かを加えていた。
「何をくわえて……っ!!」
俺は、瞬時にそれが何なのかを知った。
「マナ!! 綺羅には絶対に見せない様にしてくれ!」
「えっ? あっ、はい!」
さあ、奥へ行きましょう。マナに言われるがまま奥へと隠れる綺羅を見て、ホッとした。
「どうしたの?」
俺が何かに慌ててる様子に気づいた砂紗は、俺と雪だるまを交互に見ていた。
「……あいつの加えてる物……あれは、白熊さんの腕だ」
雪だるまの口から見えている物は、白い体毛に覆われていた白熊の片腕だった。
片腕を奪われた白熊は、暫くの間ピクピクと痙攣(けいれん)して、動きを止めた。
恐らく死んだのだろう……。
「嘘……!」
砂紗もエルサも真っ青になり、口を押さえて涙目になっている。
「……本当だ」
チラリと見た先には、先程まで頼もしかった白熊の一匹が、血まみれになって死んでいた。
にたぁ。そんな不気味な笑いをする雪だるまの口は、白熊の片腕と、そこから流れる血で染まっていた。
バキン。ボッキン。
雪の音が酷くて音や声が聞こえにくい筈なのに、骨が砕ける音が鮮明に聞こえて来た。
「冗談じゃねえよ……」
俺達は雪だるまと睨み合う形で、洞窟の中にいた。