仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
入り口近くで雪だるまが俺達を見て笑っていた。その笑い顔は可愛い……とは程遠い、残酷な笑顔だった。口の周りには白熊の腕から流れ出る血液を口紅の様に付けていた。
「あいつ……最悪の雪だるまじゃねーか!」
俺は、雪だるまについて改めて考えてしまいそうになる位だった。
いくらヴァーチャルだからって、これを雪だるまだよ。と、認めてしまっても良いのか……。
「あり得ねぇ~……」
雪だるまが俺達の方を見て、ニタァと笑う。
エルサも砂紗も、あれを雪だるまとして認めたくないのか、相当嫌そうな顔してるよ。
「どうするの?」
何時の間にか砂紗が、俺を抱っこしてた。何時もなら威嚇とかしてやるんだけど、この状況だとそんな事やってる場合じゃない。そう思ったから、あえてそこには触れずにいた。
「どうするの?」
「分かんねぇ……。でも、何かあの雪だるまと戦うのは、控えた方が良いって気がする。白熊の腕を引きちぎる位だしな……」
そんな奴を相手になんて、出来ない。しかも一匹ならまだしも、まだ沢山居るし……。
俺達が困り果てている時に、何かが砂紗の肩をポンっと叩く。
「え?」
振り替えると……焚き火を作ってくれた白熊だった。しかも親指をグッと立てて、ウィンクしてるし……。
「今更、俺の召還する動物が動物らしからぬ行動を取っても、驚きはしないけどさ……」
にっと笑う俺はそっと右手を出して、白熊とグーの形でコツンと合わせた。
白熊はそのままゆっくり歩き出し、入り口へと向かう。残りの入り口に居た二匹もその白熊と共に、洞窟の外へと出て行く。
俺達はその後ろ姿を見て、つい「格好いい」「素敵」なんて、言ってしまった。
俺達は、その戦いを見守るしか出来なかった。
「大丈夫かな? 私達も加戦した方が良いんじゃ?」
今まで黙って見守っていたエルサだったが、白熊に情でも沸いたのだろうか? 弓を取り出し、雪だるま目掛けて矢を放とうとした。
それに気付いた白熊の一匹が、両手でバッテン印を作る。
「邪魔するな。だってさ……」
なんとまあ、男らしい白熊達だろうか。
こうして、世にも奇妙な物がた……もとい。世にも奇妙な戦いのゴングが、切って落とされた。
洞窟の中から見ている俺達は、勿論白熊さん達を応援している。
白熊三匹と雪だるま数体は猛吹雪の中、睨み合っていた。そして、一匹の白熊さんが少し動いた時……戦いが始まった。
白熊さん達は己の牙をむき出しに、次々と雪だるまを踏みつけたり、頭をかち割ったりしていた。
一匹の白熊さんがピンチになると、残りの白熊さんが仲間を助ける為に、雪だるまにがぶり付く。その時に例のキーン(冷たいのを一気に食べたりすると来るあれだ)というあれが来るらしく、たまに頭を抑えたりトントンと叩いたりしていた。
それでも雪だるまへの攻撃は、止む事なく続けられた。死んでしまった一匹の白熊さんのともらい合戦とでも言うべきなのだろう。
一方雪だるまは、一匹の白熊さんを食って調子ずいていたのも束の間。仲間の敵討ちと言わんばかりに白熊さん達の攻撃が激しくなっていて、その白熊さん達の気迫が半端なかったらしく、怯え始めてしまう。
逃げ待とう雪だるまだったが、容赦たく叩きのめされていった。
何時の間にか吹雪が止んでいて、太陽の光りが雲の隙間から出ていた。
白熊VS雪だるまは、白熊さん達の圧勝で終わった。
「スッゲェ~……白熊さん達芸達者だけじゃなかったんだな?」
俺は、砂紗にもう降ろしてくれ。そう頼んだ。砂紗はゆっくりと俺を地面に降ろす。
「死んじゃった仲間の敵討ちだったのかしら?」
砂紗は、何故か少しだけ涙を流していた。
「男の友情……だね」
エルサも砂紗と同じく、涙を流していた。
「あ? いやいや……この白熊さん達全員女の子だぞ?」
俺の爆弾発言とも言える台詞に、砂紗とエルサの驚き声が洞窟に響いたのは、言うまでもない。
「ちょっとばかし聞いてみたんだ。女の子か? ってさ。そしたら、イエスって答えてくれた」
何時の時代も、どんな時でも、種族すら越える言葉【女は怖い】。このヴァーチャルの中でもそうなんだろうなぁ。俺は、少しばかり身を強ばらせた。だって……旅してる仲間は全員女の子なんだもん。
どんどん俺の地位が下がって行くだけなんだろうなぁ~。そう思うと、涙が出て来てしまった。
そんなこんなで雪だるま退治は、白熊さん達の圧勝だった。
これからどするか……それが一番の問題となる。
雪だるまがあんな化け物の様になっていては、他の何かも、そうなってると思った方が良いのかもしれない。
動物に関しては、俺が召還するやつだけなら何も問題ないらしいので、そこは心配する事はないだろう。
――さて。これからどうするか? 俺は、吹雪が止んだ空を眺めながら考えるのだった。