仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
俺達はあの洞窟で一晩明かした後、吹雪が止んだのを確認してから下山する事にした。
今は、雪山を下山している最中だ。
「次の目的地は、何処なの?」
エルサは、白熊さんの暖かい体毛を撫でながら言う。
「綺羅の言う通りなら、この山を降りた辺りに小さな町がある筈なんだ」
チラッと綺羅を見る。
「えっとね? おじいちゃんに聞いただけだから、私もよく分からないの。でもその町には、何か大きな壁画があって、その壁画のお陰で町は人気が出てるとか? うーん……ねえマナお姉ちゃん。壁画って何?」
それはですね……。綺羅とマナは、本当の姉妹の様に仲良く話してるな。
まあ、仲良くやって貰わないと、後々困るからこれで良いんだろうけどね。
「ねえクリス。これから、降りるって言ってたけど……」
砂紗は、俺に向かって何か言いたげな表情をしていた。
「ん? そうだけど……何かあるのか?」
白熊さんの毛をさすりながら、重たい口を開いた。
「あのね? 聞いた話しなんだけど、この山のふもとだかには、不思議な遺跡があるんですって」
砂紗のこの何かを含んだ言い方に、誰もが耳を傾ける。
「その遺跡がちょっと変わってるらしくて、何でもこのゲームが始まった直後に造られたらしんだけど……誰が作ったのかが分からないんだって」
ドロドロ~。という音楽が聞こえて来そうな程に迫力ある喋り方をする砂紗を見て、色んな意味での才能あるな。と、全く関係ない感想を思い浮かべてしまう。
「誰がって……開発者の誰かなんですよね?」
マナは誰かという部分が気になるらしい。
ふるふる。砂紗が、金の髪が揺れる程に強く首を振る。
「聞いた話しだから、確かな証拠はないわ。でも、開発者の人達は、その遺跡について誰も知らなかったらしいの。ユーザーの問い合わせで、発覚したらしいわ」
何とまあ……穴の抜けたゲームなんだろうか? 俺は、こんなのに必死になっていたなんて。オマケに、現実世界と連絡取れなくなるし、ログアウト出来なくなるしで。
「やってられないにゃぁ~」
ついつい、猫語になってしまった。尻尾も耳もションボリなってしまう。
そんな俺を見た砂紗達四人は、何故か目をキラキラさせていた。
「ん? 何だよ?」
いや、本当に何ですかね? 怖いよ……。
「か……可愛い!!」
「もふりたい! クリス可愛い過ぎ」
「猫さんって、どうしてこう庇護欲をそそるのでしょう?」
「猫ちゃん。私の所おいで。抱っこして、ギュゥーてしてあげる」
はい!! 久々の【シャァーー!】やりました。
白熊さんの肩の上でそんな漫才みたいな事やってたら、白熊さんがプッて吹き出したのを俺は、忘れない。
そんなこんなで、何時の間にか雪山を降りていた俺達は、白熊さんからそっと降りる。
白熊さん達は、ペコリとお辞儀をした後、バイバイ。という感じに手を振りながら、姿を消していった。
「……さて、これからどうするかだが……例の遺跡が近くにあるってんなら、行ってみるか?」
以外にも、誰も俺の意見に反対する者はいなかった。むしろ、その遺跡に行きたがっている。そう思った方が正しいのかもしれない。遺跡の話をした後だから、好奇心という物を押さえる事が出来ないのだろう。
まあ俺も、似たようなものだけどさ。
こうして俺達は次の目的地を例の遺跡にして、ゆっくりと歩き出した。
◇◇◇
白熊さん達と別れた場所は、大きな橋があってそれを渡ると、直ぐに森になっていた。
「うへぇ~。これは……うお! 毛虫!?」
残念な事に俺は、この森の中では身体が小さ過ぎるという事もあり、自分の足でら歩いていなかった。砂紗の肩に乗っかって進んでいる。
「クリス……耳元で五月蝿いわよ?」
「あれ? 砂紗さぁーーん?」
ちょっとだけ呆れた様な顔になってるみたいですけど……。
「ねえ……あれじゃない?」
エルサが片手で俺の尻尾を触りながら、もう片方の手でその場所を指す。ギロっと睨んだ俺に気付いたエルサは、パッと何事もなかったかの様に手を離す。
長く絡み付いたつたが、遺跡の雰囲気を醸し出していた。
大きく在り来たりの色――ネズミ色の遺跡。屋根だけは、雫をイラストで表した様な感じのやつ……。
「何か……アラビアンみたいなお城ですね?」
マナの言う通りかもしれない。現実世界のお話しに、【アラビアンナイト】だかっていう外国のお話しだかがあった気がする。
「かなり、年期の入った遺跡だなぁ……あの草のつたが、いかにも。って思うよ」
俺達の考えは、もう決まっていた。
そう。この遺跡に入る事。
何があるのかは、何が起きるのかは検討すら付かない。でも、ただのヴァーチャルとは言えない異常な世界になってしまったこのヴァーチャル世界。何があっても不思議ではない。
俺達は、ゲームオーバーにさえならなければそれで良いんだ。そう思って、遺跡の中へと入って行った。