仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
マナの鈍器……もとい、ハンマーによる強力な攻撃で、ケルベロスは目を回してしまう。
「ふう。終わりましたぁ~」
ハンマーの丸くてトゲが付いた部分を地面に置くと、やはり身体がその衝撃で上下に揺れる。
「……私達、出番なかったね?」
マナの元へ集合した俺達は、伸びてしまっているケルベロスの目から、大粒の涙が流れていたのを見逃さなかった。
可哀想に……ついこの犬モドキを、哀れんでしまう自分が居たりする。
「さて。次の階段探すか」
一瞬だけしか哀れる事をしない俺だったが、犬嫌いの俺からすれば犬を哀れんだだけでも凄い事だったよ。
◇◇◇
階段を見つけては降りての繰り返しが何度目か分からなくなって来そうなって程に、降りてる気がする。
「何処まで続くんだ?」
俺は……今度はエルサに抱っこされた状態だった。たしか最初は、砂紗の肩じゃなかったか? これは……言い方は悪いが、たらい回しにされる可能性大だな。
そう思った俺は、ゲッソリなっちゃった。
「ん? どうしたの?」
俺を抱っこしながら心配する姿は、まさしく銀髪の美少女だね。
「いや……気にすんな。それよりも、もうどの位降りた?」
多分、俺と同じで答えれるやつはいないんだろうな。
案の定砂紗達は、考え込んでしまったよ。
「まあ、何階降りたかは、この際問題じゃないだろうさ」
じゃあ何が問題なの? エルサの顔がそう訴えてるよ。チキショー! 可愛い顔しやがって。
……俺を抱っこしてる事を怒れなくなってしまうよ。だんだん本当に片身狭くなってないかな?
「あっ、やべ。涙出てきたよ……」
物凄く小さな声だったから、誰にも聞こえる事はなかった。
◇◇◇
それから暫く歩いたら、立ち止まった。理由は簡単だ。
「魔物だね」
俺を抱き抱えながら、魔物の目に止まらない位置まで一斉に走り出す。その後ろには砂紗達がついて来ていて、ちょっとホッとした。
「どうしますか? またこの鈍器で……」
メニュー画面を操作し始めるマナを、俺は止めた。
「駄目だ。あの魔物に近付こうとすると、あの針で殺られるだけだ」
魔物の身体からは、無数の針が生えていた。
「ハリネズミみたいな感じかしら?」
砂紗が手探りでハリネズミをイメージしながら、空中に描いて行く。と言っても、何を描いてるのか分からないから、勝手な想像だけどね。
「猫のお兄ちゃん。動物さんは? マナお姉ちゃんが言ってたけど、筋肉ムキムキなペンギンさんとか出すんでしょ?」
どうやらこの子は、何でも良いから動物を見たいらしいな。目が輝いてるよ……。
「残念だけど無理だな。あの魔物は、砂紗の言葉を借りるなら、ハリネズミだ。動物使っても、針に刺されて終わりだ。針地獄ってやつさ」
そっかぁ。かなり落ち込んでしまったけど、こればかりは、聞き入れてあげる事は出来ない。召還で出て来た動物は、変わった奴らばかり。それでも、動物に変わりはない。
ぶっちゃけると、あの魔物に突っ込ませるのは可哀想。これだった。
「うーん。困ったわねぇ。身体……肉体がない動物なんて、居る訳ないし……」
「砂紗……肉体ないなら、動物とかいう以前の問だ……はっ!」
突然固まった俺を心配して、女の子達が俺を覗き込む。
「まてよ……ちょっと前に、一度だけ……」
ぶつぶつと言い始めた俺の頭を、何故かマナが触る。可哀想な者を見る目をしてるよ。
止めて! そんな目で見ないで(笑)
「こほん。実はさ、砂紗の言葉をヒントに、一匹だけ心当たりがある動物が居るんだ」
俺は、"あの時"の事を鮮明に覚えているよ。
「上手く召還出来るか、保証はしないよ。でも、それに掛けて見ようと思う」
足元に魔法陣を浮かび上がらせ、目を閉じる。
「あっ……!」
目を閉じているせいで、誰が言ったかは分からない。
ポンっという音と共に、俺の……いや。俺達の目の前に、ある物体が現れた。
白くて細い……変な言い方になってしまっているが、これしか思い付かなかった。
「よし! 成功だ」
俺は二本足で立って、ガッツポーズを取る。
誰もが、口を開けて呆けている。まあ、しょうがないよなぁ……だって召還したのは――
「宜しくな……スケルトンベアーさん」
そう。夢の中で見た、あの骨だけの熊だったのだから。