仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
ハリネズミを倒して階段を降りた俺達は、もう開いた口が塞がらなくなっていた。
「……うん。おかしな場所だとは思ってたけどね?」
今の俺は、綺羅の頭の上に乗っかっている。何故かって? たらい回しだよ!!
まあそれは置いておいて、問題は目の前のある存在だ。
「おっきいねぇ~」
マナに手を握られながら呆けた顔で綺羅が見ているやつは、あり得ない程の大きさだった。
巨人が入りそうな程に大きな観覧車やコーヒーカップ。そんな感じの、遊園地にありそうなやつの通常サイズより、遥かにデカイサイズの遊具だった。
「もう遺跡じゃなくなってるな?」
人が小人みたいに小さく感じてしまう。それ程までに、この場所はおかしい。
「巨人居たりして……」
誰が言ったのか、俺は分からない。でも……。
「ケルベロスとか、永遠と続く下への階段とかあるからなぁー……。何が出て来ても不思議じゃないだろうさ」
綺羅の頭の上から、地面に綺麗に着地してやったよ。
「クリス。どうしたの?」
砂紗達が心配そうに俺の顔を覗き込む。
どの女の子も申し分ない程に美少女だから、俺の心臓は、内心ドキドキな訳なんだよ!
「……ええーい! 近い近い! 離れろーー!」
シャーーって威嚇する事で、俺の煩悩的な何かを押さえる事が出来るのかどうか……でも、これしかないから、仕方ないじゃん!
俺は、ホロリと一粒の涙を流したよ。
「何か動物召還して……ん?」
何気なくステータス画面を開いた俺は、おかしな事に気付く。
「……なあ皆。皆のステータスに、【デスフラワー】なんて新しいやつあるか?」
俺のその言葉を合図に、皆が一斉にステータス画面を動かすかの様に、空中に指を当てる。
「えっと……特に何も変わってないわよ?」
どうやら砂紗は、俺の言っている事を理解している様だった。
「クリス。その何とかって、何なの?」
残念な事に、俺はそれに答える事が出来ない。答えれるだけの材料が揃ってないからだ。
「あれ? 私のステータスちょっとおかしいかも」
銀の髪が鬱陶しいのか、耳に掛ける仕草を見ると、本当に美少女だなって、思える位可愛いよエルサ。
「ん? 何が?」
俺は気を取り直すために、力強く左右に首を振る。
「MPがプラスされてる。これ、前に見た時はなかった筈だよ?」
エルサ曰く、普通のRPGに存在してるMPとは、魔力その物だとか。魔法を使えばそれに応じて減って行く。そんな感じらしいんだけど……。
「このゲーム……それ自体、存在してませんでしたよね? あっ。私のにも付いてます」
マナも驚いていた。
「本当だ! 私も付いてる。ちょっと少ないかもだけど……。どうなってるの?」
砂紗も困惑してるな。無理もないか。
俺だって、同じなんだから。
「俺のステータスにはそれはないけど、さっき言った【デスフラワー】ってのが、追加されてるよ。その横に数字もあるから、多分MPと同じ分類なのかも知れない」
確証すらない。本当は、同じなんて考えてない。でも……全く分からないままだから、ここで余計な心配とかさせちゃうと、女の子達怖がっちゃうだろ? こんなバグまみれ。今までの常識が全く通じない状態で一人になるのは、ちょっと辛いものがあるしな。
「綺羅はどうなんだ?」
「同じだよ」笑顔で答える辺り、多分分かってないんだろなぁー……。しょうがないけどさ。
「取り敢えず、これについては置いておこう。今は、この目の前の遊園地みたいな場所を通過しないとさ」
四本足でゆっくり門へと向かう俺は、ふと、ある事に気付く。
「うげっ! この門、鍵掛かってるし。しかも、あんな高い位置じゃん!」
砂紗達は、俺の元に集まって来た。
「本当だ……どうするの? 流石に届かないわよ?」
俺の目線に合わせる様にしゃがみ込む砂紗は、俺を見た後高い位置にある鍵穴と、その直ぐ側にある鍵を見た。
「これは……困りましたね……どうしましょう?」
溜め息を付くマナは、本気で困った顔をしていた。
「ねえ猫のお兄ちゃん。キリンさんは? 長いお首なら、届くんじゃない?」
綺羅のこの発案は俺達の困ってしまった空気を、一気に明るくしてくれた。
子供の綺羅は、おそらく俺達よりも柔らか頭を持っているんだろう。純粋だからそ、迷いもなく答えが出せる。
「そうか……キリンか。確かにその動物なら。……よし!」
四本足に力を入れて、足元に魔法陣を浮かび上がらせる。
「お出でませ。首の長ぁーいキリン様ーー!!」
数秒後ボンッという音と、少し煙たいと感じる煙の中から、ある動物が姿を表した。
「よし! 成功……だよ……ね?」
だんだん自信がなくなった声に変わってしまうよ。
だって……全身黄色で所々黒い模様が付いてる。かなり長い首。一見すると、キリンの様にも見えるけど……。
「あれ? 私の知ってるキリンて違う気が……目がおかしいのかしら?」
目をゴシゴシと擦りながら、もう一度確認する砂紗を横目に俺は、
「……キリンなのは、変わらないだろうさ。でも……サングラス掛けて顔に大きな傷って、どこのヤクザの方ですかーー!?」
今更俺の召還する動物に対して、もう意義はない。でもさ?
「何か、不敵な笑み浮かべてるしー!」
キリンはニヤリと笑ってから、何処から出したのか分からない煙草を加えて、ふー。と、一息付いていた。